ウディ・アレン追放
猿渡由紀(著)
/文春e-book
作品情報
突然降ってわいたように起こったスキャンダルは、まるでギリシャ神話のような家族の悲劇だった――。
かつては「ウディの映画に出演すればオスカーを獲れる」とまで言われ、ニューヨークを象徴する文化人のアイコンとして名声をほしいままにしたウディ・アレン。
ハーベイ・ワインスタインのセクハラ暴露をきっかけに世界中に広がる#MeToo運動で、またもやハリウッドを干されている。
四半世紀前に勃発した、元交際相手ミア・ファローの養女への性的虐待のスキャンダルは、法廷闘争にまで発展し、いまもなおミア側との間で泥沼の様相を呈している。
ミア・ファローや養女のディラン、ウデイの実の息子であるローナン・ファロー、当時のベビーシッター、ミアの養女でウディの現在の妻スンニたちの証言や記録をもとに、
在米20年、ハリウッドを見続けた著者が公正な視点で虐待があったのかどうかその謎に迫る。
永遠に本人にしか分からない謎に、当時の記録をもとに公正に迫る。
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商品情報
- シリーズ
- ウディ・アレン追放
- 著者
- 猿渡由紀
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2021.06.10
- Reader Store発売日
- 2021.06.10
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
ウディ・アレンと言えば、というかちょっと前までウッディ・アレンと言われてたが(「トイストーリー」の主人公はまだウッディだよね)、70年代後半から90年代にかけて日本でも大変高く評価されていて、軽妙洒脱で知的でちょっとセンチメンタルな作風はインテリ中心に非常に人気があった。ニューヨークで暮らしたことのある知人も「(日本に帰国してからも)彼の映画は必ず見る」と言っていたが、ニューヨークを愛する人にとってのニューヨークそのものだったんだと思う。
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例のスキャンダルが起こったが、結局ミアの言い分は信憑性に欠けると裁判所は判断した。映画作家としての彼の地位は変わらず高かった。
それがこの数年で再び蒸し返されたうえ槍玉に上がり、多数の映画関係者が「もう彼とは仕事をしない」と公言し、撮影済みの作品が上映できなくなっているのを知り、「今頃なぜ?」と不思議に思っていたが、この本を読んでやっと納得できた。
ミアのたくさんの養子の中で、ウディが養子縁組をした3人のうち二人が、成人後攻撃を始めたのだ。
ディランが「性的虐待はあった」と改めて「実体験」を語り、唯一ウディと血がつながっているローナンが、ワインスタイン事件を暴いたことでジャーナリストとしてセクハラ、性的虐待・暴行を告発する第一人者としての確固たる地位を得た後、Me Too運動に乗って父であるウディを激しく告発したことが大きな痛手になったようだ。
この本は本人たちに取材したわけではなく(著者はウディに会ったことはある)、報道や裁判の内容を読み込んで書いてあるが、ウディの人生、人となり、作品、そして何よりスキャンダルについてきちんと書いてあると思う。
実際「性的虐待」があったかどうかはわからないし、確認をすることは不可能である。しかしもう一人の養子モーゼスが言うように「幼児性愛者は同様の犯行を繰り返す」ことを考えると、ウディは若い女が好きではあっても、彼の数多くの恋愛経験では10代後半以上が相手であり、幼児のディランに性的な興味を抱くとは考え難いように思う。だいたい彼は「子ども」自体が嫌いである。
しかし、彼もミアも子どもたちをきちんと育てたとは到底言えず、彼らの自分勝手な振る舞いが子どもたちの人生を滅茶苦茶にしたことは事実であり、その報いを受けていると思えば因果応報とも言える。早世した養子3人は完全な犠牲者である。
横溝正史の小説でも思うのだが、この人たちが「結婚しているのに別の人と肉体関係を結ぶべきではない」とか「だって彼女とは親子ほど年がちがうじゃないか」とか「恋人の娘に手を出すのはまずい」とかごく普通の倫理観を持って、自己の性衝動を抑えていればこんな泥沼にはならなかったのである。
お金があっても14人も(実子4人、養子10人)子どもを持たないし、養子を育てるなら実子と平等に扱う覚悟をして引き取るのがまともな感覚だと思うが、ミアも毒親育ちでそもそもまともな子育てを全く知らなかった。
だから一番の被害者はやっぱり子どもたちなんだなと思う。
小説でも作品と作者は別という考え方があり、歴史に残る作品の作者の振る舞いが立派だったとは言えないし、ウディの作品は今見ても結構いいものが多いんだからいいじゃない、と言えなくもない。
しかしこの本を読むと彼の全盛期の作品のほとんどが実生活に基づいていることを知ってしまった。するとやっぱりそれを完全に頭から追い出して鑑賞することは難しい。
井上ひさしが妻に激しいDVをしていたと知ってから、彼の作品のどこか冷たいところ、女を軽く扱うところがひっかるようになってしまった。
あとは時代にお任せするしかないのかなと思う。
彼が死んで数十年経って、彼のことを全く知らない人が見ても胸を打つ作品なのか、そうでないのか。
しかし、どんなに有名な俳優にもギャラは少ししか出さず(それでもウディの映画に出ればオスカーが取れると、皆喜んで出演した。)自身は高額のギャラを手にし、出資者には一切の口出しを許さず、高い評価を受け、自分のこだわりに一切妥協せず作品を30年以上作ってこれたのだから、ウディ・アレンの人生はいいものだったと言えるだろう。最晩年が残念だったけれども。投稿日:2022.01.16
これほど「泥仕合」という言葉が似合う長期間騒動も滅多にお目にかかれない。ウディ・アレン作品を最初に知ったのは、多分深夜枠のテレビ放送で観た「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにく…いSEXのすべてについて教えましょう」だったはず。大学で東京に出てきてから過去作も同時代作も観れるものは片っ端から観てきた。真にユダヤジョークが理解できるわけではないが、粒ぞろいの作品群は本当にワクワクできた。作品が好きなのでプライベート云々はあまり興味もないし、それで作品評価がかわるわけでもないが、こんなにプライベートで問題を抱えていても、クオリティの高い作品を変わらぬ頻度で出してくる作家精神はスゴイと思う。この本はウディ側にもミア側にも立たず、かなり中立的立場で書かれていて興味深いが、全体感想としてはミア・ファローの尋常じゃない精神面が浮き彫りになっていると感じる(男性視点だからかもしれん)。いずれにしろ、ウディ映画ファンとしては、クオリティの高い面白い作品が1本でも多く、世に出ることを願うばかりだ。続きを読む
投稿日:2023.10.06
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