ふたりぐらし(新潮文庫)
桜木紫乃(著)
/新潮文庫
作品情報
元映写技師の夫・信好は、看護師の妻・紗弓と二人暮らし。映画脚本家の夢を追い続けて定職はなく、ほぼ妻の稼ぎで食べている。当の妻は、余裕のない生活で子供を望むこと、義母との距離、実母との確執など、家族の形に悩む日々だ。幸せになるために生涯を誓ったはずなのに、夫婦とは、結婚とは、一体何だろう。夫婦が夫婦になっていく“家族のはじまり”を、夫と妻交互の視点で描く連作短編集。(解説・友近)
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商品情報
- シリーズ
- ふたりぐらし(新潮文庫)
- 著者
- 桜木紫乃
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2021.02.27
- Reader Store発売日
- 2021.02.27
- ファイルサイズ
- 0.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.2 (34件のレビュー)
-
最近、考え事をしているとどんどんネガティブになってしまっていて、たぶんこのまま1人で老後を迎えて死ぬんだなって思ってる。
自分の中でそれは怖いことなのに、誰かと一緒にいることで、その関係が壊れてしまう…ことも怖い。その生活が壊れてしまうことも怖い。
それでどうすることもできなくて、地団駄を踏んでいる間に、みんなとっくに先の方へ進んでしまって、わたしだけがずっと同じ場所にいる。
こんなことばっかり考えてるうちに、なんかお盆休みで太っちゃったなぁ、なんて思ってトレーニングを始めた。
きついトレーニングはしんどくて、今やっていることに集中できるからなんにも考えなくてよくなるし、身体を鍛えると心も強くなるってことらしいので続けていきたい。
この、死を考える一方で存在する、たぶん強烈に生きたい気持ちが、今のわたしの全部なんだろう。
40歳で夢追い人、元映写技師の夫・信好と、35歳で看護師、家計を支える妻・紗弓の、これといって大きな出来事があるわけではない日常、けれどだからこそより二人の関係性が際立って描かれている印象を残す本作品。二人が交互に主人公となって進む連作短編集。
信好は定職についておらず、生活費は紗弓に頼るところが大きいが、わたしはこんなにお金のことで気を遣われるくらいなら、なんも考えずにお金使ってくれた方が気分がいい。ヒモならヒモらしく、ということなんだろうけど、わたしはなんだか、こんなヒモは気詰まりだなぁ。何かにつけ、責められていると感じたり、他人からの目ばかりを気にしたり。周りはそんなふうに思ってないのに本音を隠してかっこつける。だったら働いてほしい。
わたしはもっと、「今日も家事、やったよ!キラキラ」「今日も君可愛い!キラキラ」みたいなヒモの方が好きだなぁ。「そんなこと言われるなら今日もあなたのために働きます!」とか思っちゃう。(ヤバイですか?)
でも、現実的な生活ってきっと気詰まりだ。
一方で、信好が女性だったら、こんな風に卑屈に思わないんだろうな、とか思ったり。
傍から見ると、なんで一緒にいるのかなー、と思えなくもない、のだけれど、それは信好が、「気遣いの方向を間違わない男」であることと、紗弓が「ひとりではうまく流れてゆけないから」「どうしても(信好を)好き」だからなんだろう。
かっこつけても、相手にはちゃんと伝わってる。お金の悩みも、泣くのを我慢することも、本音を言えないことも。それをお互いわかっているからこそ、大きくぶつかることなく、配慮し合えるんだろう。もう一度言う。わたしには気詰まりである。
しかし、一方でこんな言葉もあった。
P234「事情はそうでも、出来ればそこは隠しておいて欲しいかなと思ったわけだ。本音ってのは一つの暴力だしね。そこまで言わずともいいところを、言わなきゃわからない男だと思われてるのかなと」
わたしは本音を言えるって大事なことだと思うのだけれども、相手によってはそれが逆に暴力と感じられることもある。本音を出すタイミング、伝え方、本当に言うべきことなのか否か。わたしは、言うべきことと言わなくてもいいことは分かっているつもりだけれど。でもいつかは伝えたいと思っている。それがわたしにとっての本音。
妻・紗弓の父の言葉は、バシンと言い当てるものが多く、それがこの二人の緩やかな日常の中に突然現れるのでハッとさせられる。
P63「お母さんは義理を欠いたと言うけれどね、それは彼女の価値観だから、家庭を持った娘と考え方が食い違うのは仕方ないことだと思うんだ。常識と感受性の間で悩むことも、大人として生きていく上で大切だからね。お母さんの言葉に、お前があれこれと思い煩う必要はないんだよ」「思い煩う時間があったら、もっと自分の喜べる方向へ頭を使いなさい」
P65(紗弓「わたし、お母さんのことがたぶん嫌いなの」に対して)「いいんだよ、女の子はそれで。母親が大好きだなんて、女として次の一歩を踏み出せていない証拠でしょう」
一人になる老後に脅えつつこの作品を読んで、わたしはどうなることを期待していたんだろう。「やっぱり一人は寂しいから誰かと生きたい」なのか、「やっぱり誰かと生きるって大変じゃん、一人って最高じゃん」なのか。たぶん求めていたのはその中間「それでもやっぱり、この人と一緒にいたい」的なやつ。
わたしは結局、求めていたところへは行けてなくて、「やっぱり誰かと生きるって大変じゃん、でも一人って寂しいじゃん」てとこから動けてない上に、なんならこの二人の「配慮」に気詰まりを感じてしまって、やっぱり一人って楽!っていうのをさらに実感してしまったのであるorz
方向性といえば、過去に、音楽の方向性の違いで別れたことがある。
彼はあまりにも、J-POPに心酔しすぎていたのである。続きを読む投稿日:2021.08.29
「岡田さんとおつきあいさせていただいているのは、母を一緒に看取って欲しいのではなくて、母に忘れられてゆくわたしを、誰かに見守って欲しかったからなんです。同性じゃだめなのね。どこかに憐れみが混じるから、…お互いによくない。ふと見回してみたときに、職場にも職場以外にも知人はたくさんいたけれど、異性と思えるような相手はいなかったの」
「お見合いというかたちを選んだのは、なぜですか」
「知り合う時間を待てなかったの。本当は時間をかけてお互いが理想のひとに育ってゆくのがいいのだけど、自分にはもうそこにかける時間がないんだなって気づいちゃった。……」続きを読む投稿日:2024.03.18
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