原発事故10年目の真実 始動した再エネ水素社会
菅直人(著)
/幻冬舎単行本
作品情報
原発ゼロは達成できる
その論拠、全廃炉へのすべて
3.11で総理大臣だった私がいま言えること
急成長する自然エネルギー、
原発40年ルールと規制委員会の抑止力、
民間企業が原発事業から次々撤退した意味・・・・・・
全廃炉しかない――180度方針転換して、分かったこと、してきたこと。
「原発推進派は、安全面でもコスト的にも使用済み核燃料の処理でも八方ふさがりで、勝ち目はなくなっている。明らかに投了すべきなのに、しようとしない。往生際が悪いのだ。
将棋では、投了した時点の局面を「投了図」と呼ぶ。プロ同士のハイレベルな闘いの投了図は、素人目にはどうして負けが決まったのか分からないことが多い。原発の現状も、それと似ている。専門用語も多いし、政治的にもデリケートな問題が多いので、明快に言い切ることが難しいのは事実だ。
しかし私はこの本で、「原発ゼロ」が実質上、すでに実現しており、避けられない道だということを解説したい。将棋で言う投了図の解説を試みたい」
◯原発ゼロでもCO2を削減し、全電力をまかなえる
◯営農しながら発電するソーラーシェアリングの威力
◯事故後に決めた3つの政策(「エネルギー基本計画の白紙」「保安院の廃止」「FIT制度の創設」)がいま効いている
◯発送電分離・独立がなぜ重要なのか
◯廃炉へ促す「原発一時国有化」のメリット
◯フィンランドのオンカロ視察——使用済み核燃料の地層処分——
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商品情報
- 著者
- 菅直人
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎単行本
- 書籍発売日
- 2021.02.23
- Reader Store発売日
- 2021.02.23
- ファイルサイズ
- 14.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
たまには政治家が書いたものも。っていうか今まであんまり読んだことないけど。エネルギー政策や、原発の今後に非常に興味があるので読みました。
レビューの続きを読む
私自身は旧民主党や立憲民主党を支持したことはないけど、原発推進の政策に反対という点では菅直人氏に賛同する。しかし菅直人元首相が、反原発の活動にこんなに熱心に取り組んでいることは、この本を読むまで知らなかった。本書では、講演や著作、ブログ、インタビューに答えるなどして熱心に発信していると書いていたが、マスメディアではあまり取り上げられていないように思う。それも政治圧力なのかなぁ。だとしたら怖いなー。
とにかく、この後に及んで原発を推進すること(廃炉にする、原発ゼロを目指すと決断しないこと)のおかしさ、矛盾を訴える内容。理論上は、原発ゼロは実現しうるということを、多角的に検証している。チェルノブイリや廃炉作業の現場を訪れ、原発が事故を起こした際にどれほどのリスクがあるのかを具体的に示し、絶対の安全はあり得ないし、もしそれを目指して原発を運用し続けるならとんでもないコストがかかるということも訴えている。
私自身は、25年ほど前に九州の玄海原子力発電所を見学したことがある。原発で働く社員の家族を安心させるためのツアーで、安全性をものすごく強調されたのだが、安全性を強調されればされるほど、「おかしい」と思った。どんなに安全性を強調しても、それは「今現在こんなに厳重に管理しているから」という前提であり、それが100年後も200年後も絶対安全とは言い切れないことくらい、当時学生の私でもわかった。しかも放射性廃棄物が完全に無害化するまでには何万年もかかる。
大人ってばかなのかな、と当時から思っていた。
そして実際に、震災で事故が起こった後でも、責任ある大人が(特に、原発を推進してきた人達が)間違いを改めることをせずに今にいたる。
本当に、ばかなのかな。
我が家は15年前に自宅を新築した際、太陽光発電とエネファームという発電システムを導入し、電力を42円(だったっけ?)で売ることで電気料金を実質0円にすることに成功していた。それでも料金が差し引きでゼロになっただけの話なので、昨年、電力の買取価格が4分の1程度になってしまうことを受けて、蓄電池も導入した。蓄電池はまだあまり普及しておらず、価格が高いので迷ったが、原子力で発電された電力を買わないための方法として選択した。
我が家はごく一般的な勤め人の家庭だ。特に年収が高いわけでもない。そういう家でも、工夫すれば自家発電だけで電力をまかなえる。原発が必要ないことは実感としてわかる。
ちょっと本のレビューではなく自分の考えになってしまったのでレビューに戻ろう。
菅直人氏が、どのように原発ゼロに向けて取り組んできたか、というアピールや、原子力ムラや族議員の批判の側面もあるが、一時期は政権を担って原子力を推進する立場だったことを「間違いだった」と真摯に反省し、「早く間違いを正さなければ」という考えで行動していることが伝わってくる。本書の最後の方で訴えている通り、この意志を継ぐ次の世代の(しがらみのない)議員や経産省・農林水産省などの官僚がまとまって、原発ゼロに向かって動いてもらいたいものだ、と思った。
ただ、菅氏が「この方法がある!」と具体例としてあげている”ソーラーシェアリング”に興味を持って私なりに調べてみたのだが、そんなに簡単ではなさそうだ。原発ゼロへの道は遠い・・・。投稿日:2021.03.22
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