危機の世界史
ダン・カーリン(著)
,渡会圭子(訳)
/文春e-book
この作品のレビュー
平均 3.3 (5件のレビュー)
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パンデミックを生き抜く歴史的視座
人気Podcasterによる初著書。
専門家ではなく、"歴史オタク"と自認する素人だが、"ベスト歴史Podcast"を受賞するなど、評価は高い。
本書の核となる視点は次の2点。
「人類は千年…以上、自分たちの能力が失われたり、後退したりするなどと真剣に考えることはなかった」。
テクノロジーが後戻りすることなんてないし、一時的な退潮や停滞はあっても、社会・経済・文明が崩壊することはないと信じきって生きているが、間違いだ。
ローマの勢力が退潮した百年後のブリテン人たちのように、祖先よりもむしろ後進的な時代を生きることもありうる。
現代人の我々も、前にもっと素晴らしい時代があったと回顧する暗黒時代を生きる人々になるかもしれないのだ。
凋落はゆっくりと長い時間をかけて起こるとは限らない。
青銅器時代の終焉はローマ帝国の消滅よりも悲惨かつ唐突で、これによりミケーネ・ギリシャ文明は消え失せ、エジプトではファラオの偉業も忘れられた。
人類史上初めて、暗黒時代に一気に引き戻す最終兵器をつくりあげた現代は、世界戦争によって、人類の文明はものの数時間で後退するだろう。
もう一つの視点は、我々がこれからも理性的かつ人道的な行動をとり続けられるかというもの。
暗黒時代に引き戻すのは戦争ばかりではなく、天変地異や自然災害もあれば、パンデミックもある。
致死率90%で次々と都市が壊滅していった黒死病の流行のように、無差別に命を奪う病気への恐怖によって、社会は容易にめちゃくちゃになる。
パンデミックで死亡率が高まれば、前の信念体型は捨てられ、マイノリティは迫害され、乱交・強姦・強盗・殺人と何でもありの修羅の時代に逆戻りだ。
疾病に限らず、善良で倫理的な人びとがいつのまにか大惨事に与してしまう例は他にもある。どんな非道なことでも、よい考えに思えてしまうのだろう。
ダイナマイトを発明したノーベルも、この兵器の威力を見れば、恐怖にたじろぎ、軍隊は解散するだろうと考えていた。
第二次世界大戦で都市空爆を指揮し大惨事を引き起こす作戦を立案した軍人たちも根っからのサディストではなかった。
むしろ自分は命を救っていると思っていたのだ。
長く泥沼化し、死者の数が増え続けると、何より悪いのは戦争が長引くことで、戦いを短くし、多くの命を救えるなら、非道な空爆や原爆も許されると考える。
それが限りなく戦争犯罪に近いとは考えない。
我々の命も、つまるところそのような非道な決定や悲惨な事件の延長線上に生まれているのだと気づいた時、どう感じるだろうか?
著者自身の歴史に対するスタンスは、以下の通り。
歴史の変化も、ただの違いを、進歩だ退歩だと決めつけるのはバイアスによっている。
この先、もしも読むことが重要でなくなったために、識字率が低下したら前より暗黒時代に生きているとはならないだろうし、個人の幸福レベルも結局は環境に合わせて順応するものだ。
現在の基準なら児童虐待同然の環境で育った多くの昔の子供たちを考えてみればいい。
進歩という考えのバイアスに囚われたまま歴史を学ぶのはもったいないことだ。
歴史は遠い惑星への旅に似ていて、同じ人種であっても、文化的にはエイリアンと考えてよく、謙虚に振り返りながら、現代の危機に対処するしかないのだろう。続きを読む投稿日:2021.09.05
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コロナ禍を予見したかのようだが、出版はコロナ前。冒頭にあるように、歴史を振り返れば、現代の状況がより広い視野で見えてくるかも、という思いで読む。超大国の崩壊、数々のパンデミック、集団移動、そして、戦争…。世の中は数々の危機を経験してきたことを改めて思う。歴史を学ぶ意義はここにあるのかもしれない。
第1章 厳しい時代が強い人間を作るのか第2章 子どもたちの受難(最近まで児童虐待同然の中で環境で子どもが育ってきたこと)第3章 青銅器文明の崩壊の謎(社会は必ず進歩する?発展と凋落を繰り返す?今は、世界がつながっている為、局地的な暗黒時代でなく、全体的かもという指摘は響く。)第4章 アッシリアの罪と罰(超大国の滅亡。内戦と軍事力の過剰のせいでは?)第5章 ローマの蛮族をめぐる因果第6章 パンデミックの序章 第7章 生きるか死ぬかの核時代
物理学者アーサーホリーコンプトン「人間は大急ぎで徳を高めねばならない。」第8章 地獄への道続きを読む投稿日:2022.11.11
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