有島武郎 地人論の最果てへ
荒木優太(著)
/岩波新書
作品情報
土地や血統の宿命からは決して逃れられないと知りつつも,普遍的な個性や愛を信じようとした有島武郎(一八七八―一九二三).二つの力学が絡み合うなか,『或る女』『カインの末裔』『生れ出づる悩み』などの有島文学は産み落とされた.矛盾に満ちた葛藤の果てに有島が夢見た地平をめざして,その作品と生涯を読み解いていく.
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商品情報
- シリーズ
- 有島武郎 地人論の最果てへ
- 著者
- 荒木優太
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波新書
- 書籍発売日
- 2020.09.18
- Reader Store発売日
- 2021.01.28
- ファイルサイズ
- 8.2MB
- ページ数
- 278ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (4件のレビュー)
-
著者は在野の研究者(cf.『在野研究ビギナーズ』)。有島武郎研究を専門とする。
副題は「地人論の最果て」。地人論とは、地理的な場所と人の生み出す文明に関係を見出すものである。有島は、美術鑑賞において、…作品はその生まれ育った風土にあってこそ真に理解されると説く。
だが、有島自身、果たしてどうだったのか。
ある地に根差して、その地を代表し、それを描き切るような作品を果たして生み出せたのか。
実のところ、
ある地に生まれたことの宿命を重く受けとりながら、かといってちゃんとしてナショナリストになれるわけでもない
それが有島であり、そしてつまりは有島の作品群は(内なる矛盾を抱えて)「地人論の最果て」にあり、むしろそうであることこそが価値なのではないかというのが(いささかトリッキーな)著者の主張であるようである。
著者の言う意味とは少し違うかもしれないが、有島が私にとってどこか引っかかるのは、やはり純粋に作品そのもののみというよりもその生涯に依るところが大きいように思う。どこかちぐはぐな、どこか目指すところに行きつけなかったような、いや、そもそも目指すところが絞り切れなかったような、何だかそんな印象を受けるのだ。
育ちの良さゆえに純粋な理想を抱き、才能があるがゆえに自身の限界が見えてしまったのか。
「赤い鳥」で発表された『一房の葡萄』は、教科書にも採られたお話である。意地悪な言い方をすれば泰西名画の複製のように思えなくもないが、美しい先生の白い手が印象的な「よい」話である。
『小さき者へ』は妻が結核で亡くなった後、子供らに向けて書いたもの。若干熱に浮かされたような雰囲気を感じないでもないが、父である自らの弱さにも率直に触れ、なおかつ母を失った子供たちの背を力強く押す名文である。
『カインの末裔』は北の大地に生きる荒くれ男の物語。カインは旧約聖書の登場人物で、兄アベルを殺したため、楽園から追放され、耕作を行っても作物はできないという罰を受ける。男はいわばその子孫である。厳しい北の自然と、運命に咆哮するような男の荒みぶりが衝撃的ですらある。
裕福な家に生まれ、当時としては珍しくインターナショナルスクールに通い、長じて留学もする。キリスト教に入信するが、後、信仰からは離れる。札幌農学校に学び、農場を入手するも、後年これを小作人らに開放する。ジグザグとした道のりは、最後には夫ある女性編集者との情死に終わる。2人の遺体は死後、1ケ月を経て腐乱状態で発見されたという。
才もあり、理想もあり、しかしそれらすべてを以てしても、筆を折り、最終的には非業の死を遂げるという結末を迎えたのか。
何だかそのことに愕然とするのだ。続きを読む投稿日:2020.11.18
辞書を引かなければ意味を知ることができない、それでもこの世に確かに存在している未知の言葉が、不意にあらわれて文章の一部分を硬く緊密に形象する。すべての語を消尽しようとする衝動と、すべての語に使役されん…とする切迫とが、この本のなかで同居している。続きを読む
投稿日:2022.05.05
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