この作品のレビュー
平均 3.6 (5件のレビュー)
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日本戦後史論 内田樹×白井聡
白井氏の提唱する永続敗戦レジームなどの新しい概念があり、面白かった。日本は、歪な戦後史を辿っているという認識のもと、現代の諸問題を読み解いていく。戦後、アメリカの冷戦対…応に伴い、日本は戦前の官僚体制を温存したまま、戦後を迎えた。そして、東条英機をはじめとする戦犯の首を挿げ替えただけで統治機構を温存させたまま戦後レジームが形成される。その際、白井氏が「敗戦の否認」と呼ぶような、敗戦へのごまかしを進めてきた。ごまかしとは何かと言えば、日本は米国に負けたという感覚を少しずつ減らしていくというもの。これはなるほどなとも思ったのであるが、普通、戦争に負ければ臥薪嘗胆として次は必ず米国に勝つと、日本独自の国家の在り方を考えるはずである。しかしながら、日本は米国に歯向かうというオプションを最初の段階からなくしていた。これは主権国家の敗戦後の姿ではなく、属国化の過程で起こるべき現象である。戦後、日本は米国との歴史的な同化を通じて、アジアへの戦争責任もまた否認した。戦前の日本は軍部という悪玉に支配されており、戦後の日本は米国との同化を通じて浄化されたという認識は、戦前と戦後日本のシームレスなつながりを無くしてしまった。永続敗戦レジームは、この敗戦に否認を通じて敗戦の戦略的な無反省を招き、本来の主権国家としての戦後の在り方を模索しなかったことに起因する歪な精神構造を指していると思われる。ただ、内田老師も補足していたが、この敗戦の否認を行わず、対米経済戦争勝利を信条とした世代が、1920年代後半~1930年代前半生まれの世代であると。彼らの世代は、大日本帝国と運命を共にすることを心の中で誓いながらも戦争時は13歳~16歳程度と、若すぎて徴兵されなかった面々である。私の祖父は1931年生まれで、まさにこの世代であるが、戦後、学制改革直後に旧東京商大・現一橋大学に入学し、卒業後は出光興産で定年まで勤め上げた。祖父は私が7歳の時に亡くなってしまったため、詳しいことは聞くことができなかったが、出光興産が対米戦争の敗因を資源の調達とするという反省から出光佐三に興された企業であることを踏まえると、敗戦の否認ではなく、臥薪嘗胆として次回は米国に勝つとする心持があったのではないかと邪推してしまう。しかし、その後の世代においては、このような心持はないのではなかろうか。以前、私が好きなDJの小林克也氏の自伝を読んだが、1941年生まれの彼の青年期には、既にアメリカ文化は根付いており、親から家訓の如く教えてもらわなければ臥薪嘗胆とした心持があるはずもなく、米国文化をニュートラルに好んでいたのかと思う。このように、1940年以降に生まれた世代は、敗戦の否認というある種のプロパガンダの中で育ってきているため、1996年生まれの私にしてみれば、全く実感がわかないものである。しかしながら、我々が日本という国により一種のアイデンティティを与えられ、パスポートをはじめとする多くのベネフィットを得ている以上、日本が嘗て犯した過ちには無反省であることはあってはならないし、頭を下げることに違和感はない。話がそれたが、現代における諸問題を永続敗戦レジームという術語をもって説明している本書は非常に興味深い書のひとつであった。続きを読む投稿日:2021.08.29
単行本で読んだのが 2015年
あれから もう七年経った
哀しいことに
ここで 言い募られた
「こんな国になってしまった」は
まだ そのまま
いや
ますます 悪く加速している気がする投稿日:2022.12.02
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