悲しみとともにどう生きるか
柳田邦男(著)
,若松英輔(著)
,星野智幸(著)
,東畑開人(著)
,平野啓一郎(著)
,島薗進(著)
,入江杏(編著)
/集英社新書
作品情報
悲しみから目を背けようとする社会は、実は生きることを大切にしていない社会なのではないか。共感と支え合いの中で、「悲しみの物語」は「希望の物語」へと変容していく。「グリーフケア」に希望の灯を見出した入江杏の呼びかけに、ノンフィクション作家・柳田邦男、批評家・若松英輔、小説家・星野智幸、臨床心理学者・東畑開人、小説家・平野啓一郎、宗教学者・島薗進が応え、自身の喪失体験や悲しみとの向き合い方などについて語る。悲しみを生きる力に変えていくための珠玉のメッセージ集。
【まえがき――入江杏 より】(抜粋)「世田谷事件」を覚えておられる方はどれほどいらっしゃるだろうか? 未だ解決を見ていないこの事件で、私の二歳年下の妹、宮澤泰子とそのお連れ合いのみきおさん、姪のにいなちゃんと甥の礼くんを含む妹一家四人を喪った。事件解決を願わない日はない。あの事件は私たち家族の運命を変えた。
妹一家が逝ってしまってから6年経った2006年の年末。私は「悲しみ」について思いを馳せる会を「ミシュカの森」と題して開催するようになった。(中略)犯罪や事件と直接関係のない人たちにも、それぞれに意味のある催しにしたい。そしてその思いが、共感と共生に満ちた社会につながっていけばと願ったからだ。それ以来、毎年、事件のあった12月にゲストをお招きして、集いの場を設けている。この活動を継続することができたのは、たくさんの方々との出逢いと支えのおかげだ。本書はこれまでに「ミシュカの森」にご登壇くださった方々の中から、6人の方の講演や寄稿を収録したものである。
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商品情報
- シリーズ
- 悲しみとともにどう生きるか
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2020.11.22
- Reader Store発売日
- 2020.12.18
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (9件のレビュー)
-
【まとめ】
0 まえがき
グリーフワークとは、「悲嘆を癒やす営み」のこと。
悲しみから目をそむけようとする社会は、実は生きることを大切にしていない社会なのではないか。
喪失に向き合い、支え合う中で、…「悲しみの物語」は「希望の物語」へと変容していった。悲しむことは愛すること。
全国犯罪被害者の会の活動は、単に凶悪犯罪の時効の撤廃を実現して、逃亡加害者に許しは絶対ないという社会をつくる目的だけでなく、遺族が平穏な人生を取り戻せるような温もりのある社会環境の構築を目指している。
1 柳田邦男
脳死状態の息子を「死」と認められない柳田邦男と、「脳死は人の死」と言い切る医学者との違い。それは、誰のいのちの死なのかという、「死の人称性」の問題だ。一人称は自分の死、二人称は家族の死、三人称は友人や他人の死である。当然、三人称と二人称では、悲しみの度合いも異なってくる。
被害者に寄り添いながら、かつ感情移入をしすぎない、「ニ・五人称の視点」というものを、これからの時代のキーワードにしなければいけない。
2 若松英輔
あることが起こらなければ変われない、ということはない。人間というのは今にしか生きることができない。今の瞬間、瞬間の持続の中にしか生はない。何かが起こるというのは常に一瞬の出来事であり、みんな、いつでも幸せになれる。
悲しみこそ光なのではないか。悲しみを感じたことがあるということは、朽ちることのない光を宿しているということにほかならない。この光の証人になること、そして、それを伝えていくこと、それが人間の「人生の仕事」なのではないかと思う。
3 星野智幸
震災以降、世の中の言葉の大きな流れが、いつも二項対立に行き着いてしまっている。どんな問題も、賛成か反対か、白か黒かに二分され、この中間の曖昧な領域は許されず、自分の発言もその文脈で処理されてしまう。
今の社会では、こういうことを言ったら馬鹿にされるかもとか、やばい人だと思われるかもしれない、という不安や怯えが日常化している。誰もが口にして大丈夫な認証済みの意見を、自分も口にすることで、社会のマジョリティの一員だという安心感がもたらされる。
だから逆に、誰かが己に正直な発言をすると、その人にイラつき、軽蔑して、攻撃したくなってしまう。その軽蔑と攻撃は、本当は正直な発言をできない抑圧された自分に対して向けられているはずなのに。
これが、今の社会の「沈黙を強いるメカニズム」の正体だ。自分の言葉で自分の物語を語れず、己のその空虚さが、「他人の充実を許さない」という態度で現れている。
今や、為政者など大きな権限を持つ人たちが、自分たちに都合の悪い者たちを黙らせるために、「自分勝手に意思表示する人間を野放しにしておいていいのか?」と、その暴力を利用している。
そんな今だからこそ、文学が必要だ。他人の言葉に深く耳を傾けられることができる人こそ、自分の言葉を見つけられる。
4 東畑開人
ケアとは「傷つけないこと」である。それは別の言葉で言えば「相手のニーズを満たすこと」でもある。僕らはニーズを満たされないときに傷ついてしまうのだ。
またそれを別の言葉で言うと、「依存を引き受けること」というふうにも言える。ケアというのは、特別に心を深く掘り下げてやっていくということではなく、その時、必要としているものを、その場で提供することなのだ。
僕たちはアジール(不可侵、避難所、シェルターのような意味)を作り出し続けながら暮らしている。ここはアジールですとは書いていないけれど、普段の生活から免責される、庇護される、隠れることができる、そういうところを、おそらく僕たちは「居場所」と呼んでいる。
アジールがアサイラム(監獄)になるのは、誰がやったんだ、と責任の所在を明確にしていったり、コスパを求め始めたりしたときである。また、予定や会計など、コミュニティを縛る要因が増えていくことによっても、アジールはアサイラム化する。
居場所は、ちょっといい加減で不透明なぐらいがちょうどいいのかもしれない。
5 平野啓一郎
私が死刑に反対する理由の一つは、死刑は最終的に、事件を起こした原因を本人の責任に収れんさせるからだ。だが、実際には犯罪は個人の素質だけに帰することができるものではなく、犯人の生育環境が荒れていたり、貧困状態にあったりと、社会が原因となっている場合が多い。
社会の中にいる不利な人たちに、何らかのかたちで救いの手が差し伸べられなければならないのに、国家がそれを放置し、実際に事件が起きたら、司法が死刑を宣告して、その人を社会から排除し、何もなかったかのような顔をする。それは欺瞞なのではないか。
日本では被害者へのケアが非常に弱いから、「死刑廃止に反対」という声が強いのではないか。「被害者がここまで強い悲しみを覚えているのに、どうして加害者の命は守らなければならないのか」という復讐的な精神が裏にあるからではないのか。
日本は人権教育が弱い。人権の問題として弱者の生存を考えているのではなく、かわいそうかどうかという「共感の次元」で捉えてしまっている。だから、貧困者や生活保護者が少し豊かな暮らしをしたぐらいで、「自己責任だ」「同情に値しない」という声があがる。
心情的な教育というのをやりながら、一方で、すべての人は、社会の役に立とうが立つまいが、生まれてきたからには、自分の命は誰からも侵害されない権利がある、という原則を子どもたちに教えることが非常に重要である。続きを読む投稿日:2021.08.07
第1章 「ゆるやかなつながり」が生き直す力を与える(柳田邦男)
2.5人称の視点
第2章 光は、ときに悲しみを伴う(若松英輔)
読むと書くと同時にはできない
悲しみは、愛しみとの出逢いである
第3章 …沈黙を強いるメカニズムに抗して(星野智幸)
沈黙を強いるものへの抗い
第4章 限りなく透明に近い居場所(東畑開人)
第5章 悲しみとともにどう生きるか(平野啓一郎)
分人主義
犯罪被害者へのケアが不十分
第6章 悲しみをともに分かち合う(島薗進)
グリー不ケア
豊かに深く生きるヒント
悲しみの物語→希望の物語続きを読む投稿日:2022.06.29
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