女性に知ってもらいたい　０歳から100歳までの“歯”の教室

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  鈴木敬(すずき・けい)
  すずき歯科クリニック院長。1983年生まれ。岩手医科大学歯学部卒業。岩手医科大学付属病院歯科医療センター歯科医師卒後臨床研修終了後、東京都内の医療法人(杉並区・港区…)に勤務、仙台市内の医療法人分院長を経て、すずき歯科クリニックを開業。
  
  
  残念ながら、日本はまだまだ「むし歯大国」と呼ばれるほどむし歯に悩む人が多く、また、歯への意識は海外に比べるとずっと低いと言われている。
  
  私たちが家族や友人と食事を楽しむことができるのは、健康な歯があってこそ。成人の歯は親知らずの4本を除くと28本で、一般的には20本以上あるとおいしく食べることができると言われています。
  
  　入れ歯などでご自身の歯ではない場合、咀嚼のとき歯から脳への刺激が伝わりづらく、「歯が少ない人は要介護の割合が高い」というデータ もあります。 　また歯が減ってしまうと食べる感覚も変わってしまいます。そのため物を飲み込む感覚も変わり、食道と肺の管がうまく切り替わらず、 誤嚥性肺炎 のリスク が高まります。
  
  口内には、500～700種類の口腔細菌が生息していると言われており、歯をよく磨く人には1000～2000億個、あまり磨かない人には4000～6000億個、ほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が住み着いています。 　ちなみに、菌と言っても、腸内のようにからだに害のない善玉菌と悪玉菌がおり、すべてが悪さをするわけではありません。そのバランスをコントロールすることが大切です。
  
  　むし歯菌は歯の周りについた食べカス（歯垢）の中で増え、糖分を栄養源に歯を溶かす酸をつくります。これにより歯が溶けてむし歯になるのです。子どもの頃にむし歯になってしまうと、大人になってもむし歯になるリスクが高まり、一度治療したところでも二度、三度とむし歯になり、中にはどんどん歯を失っていく人です。
  
  
  驚いてしまうかもしれませんが、2020年現在、日本国内では、コンビニエンスストアが約5万5000店、歯科クリニックが約6万8000院と、コンビニよりも歯医者さんの方が多く存在します。
  
  　歯磨き粉は フッ素配合のもの を選びましょう。最近では歯科医専門の歯磨き粉と同じくらいの高濃度フッ素配合（1450PPM）の商品も一般で売られるようになりました。
  
  　歯は表面のエナメル質、その中の象牙質、根元のセメント質の3つの組織で構成されています。
  
  　エナメル質は人間のからだの中で最も硬い組織です。その硬度は水晶と同じくらいと言われ、酸にとても弱いです。 　次に象牙質は、エナメル質とセメント質の内側にあり、歯冠部から歯根部までを形づくる組織です。象牙質はエナメル質に比べると柔らかく酸にも弱いため、むし歯が象牙質まで達すると急速に進行してしまいます。 　最後は根元の部分セメント質です。歯根部と呼ばれる歯の根元の表面を覆っている組織で歯槽骨（歯がはまるあごの部分）と繋がっています。
  
  唾液は歯の汚れや口の中の酸を中和し歯を守ってくる働きがあります。わかめや昆布、海苔、梅干しなどのアルカリ性の食品も歯が溶けにくいと言われています。
  
  　歯周病菌の中には、出産に備えた女性のからだに欠かすことのできない女性ホルモンである、「エストロゲン」や「プロゲステロン」を栄養源に増えるものがあります。
  
  ちなみに、現在「歯周病」と呼ばれている疾患は、昭和42年以前には「歯槽膿漏症」と呼ばれていました。それまで「日本歯槽膿漏学会」と呼ばれていた学会の名称が昭和43年に「日本歯周病学会」に改名したことで、現在では「歯周病」という言葉が一般化したと考えられます。つまり、「歯槽膿漏」は「歯周病」の以前の呼び方であり、意味合いは同じです。
  
  　歯周病がダメージを与える場所は、口腔内にとどまりません。さまざまな全身疾患に関連があります。代表的なのが、「糖尿病」 です。歯周病菌が増えることで、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するため、糖尿病のリスクが上がってしまうのです。 　また、血管内壁が厚くなり血流が悪くなる「動脈硬化」 や、血栓によって血管がつまる「脳梗塞」、女性の場合は低体重児や早産との関連も指摘されています。
  
  　歯周病がやっかいなのは、軽度のうちは腫れや痛みなどの自覚症状がないこと。そのため、知らないうちに進行してしまうことがあります。ここでは、自分でできる歯周病チェックをご紹介します。歯周病の進行レベルとあわせて確認してみましょう。
  
  　年齢を重ねるにつれて口腔内で起こる変化のひとつが、「渇き」です。唾液の分泌機能が低下して口が渇くことを「ドライマウス」 と言います。 　唾液には食事の食べかすを洗い流したり、歯の修復作用を担うなどさまざまな働きがあり、口腔内の健康を保つのに必要不可欠です。唾液の分泌量が減るとむし歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、口臭が強くなったり、食べ物が飲み込みづらくなるなどの弊害も生じます。高齢者の場合は、唾液の分泌が少ないことで入れ歯が外れやすくなってしまうこともあります。 　健康な成人の場合、1日に約1.5リットルの唾液が分泌されますが、 ストレスが多い現代人は、分泌量が低下しやすい環境 であると言えます。唾液は、リラックスしていて副交感神経が優位に働いているときに分泌されやすいため、ストレスや緊張が高まり交感神経が優位になると、分泌が止まってしまうのです。
  
  20代～60代の男女を調べた調査によると、実は若い女性ほど口臭が強かったというデータ もあります。女性ホルモンの分泌が多い人ほど歯周病菌が繁殖しやすく、口臭が強い人は歯周病にかかっている疑いがあるので、クリニックを受診しましょう。
  
  　厚生労働省や日本医師会は、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」 と「8020（ハチマルニイマル）運動」 を推進し、平成元年では1割未満だった達成率が現在では5割を超えました。
  
  歯科治療においてもできるだけ「削らない・抜かない」 という治療法を行う歯科医もいます。 　たとえば、むし歯が進行している場合、これまでは歯を大きく削ったり歯を抜いたりするケースが一般的でしたが、むし歯の部分をプラズマレーザーで殺菌したうえに特殊なセメントを塗ることで、 歯を削らずにすむうえに神経を残せるような治療法 もあります。続きを読む

  投稿日：2023.09.14

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