押井守の映画50年50本
押井 守(著)
/立東舎
作品情報
押井守が高校生だった1968年から始まる、極私的映画史50年。「1年に1本のみ」という縛りで選ばれた、50本の映画解析。キューブリック、タランティーノ、ポン・ジュノからデル・トロまで押井守の映画半世紀!「前書き」よりそんな映画まみれの男にその映画人生を回顧させつつ、昔はものを思はざりけり(権中納言敦忠)の高校時代から現在に至るまで、その年ごとに公開された映画の中から1本の映画を選ばせて(思い出させて)語らせたら、映画マニアあるいはシネフィルと呼ばれる読者になにがしか益するところがあるのではないか。あわよくば高度経済成長からバブルを経て昨今のヘタレた日本の戦後史の一部を、映画を通じてフレームアップできるのではないか—と、企画者および編集者は考えたのでしょう(確信的推論)。【CONTENTS】1968年『2001年宇宙の旅』宇宙という存在を初めて映画で表現した作品1968年『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』繰り返し見るならレオーネだ1969年『ワイルドバンチ』こんなカッコいい映画を見たことない1970年『ライアンの娘』映画のなかに伏在するもう1つの映画を初めて垣間見た1971年『わらの犬』誰1人として本質を見抜けていない異端の映画1972年『ラストタンゴ・イン・パリ』固有のテーマを必要としなかったベルトルッチ1973年『映画に愛をこめて アメリカの夜』映画好きは見ないと損だけど、一生を台無しにするかも?1974年『田園に死す』寺山修司の引用で作られた寺山修司の映画1975年『新幹線大爆破』日本映画が日本の戦後にケンカを売った最後の映画1976年『タクシードライバー』トラヴィスと同じように「拳銃が欲しい」と自分も思った1977年『戦争のはらわた』ペキンパーはけっきょく「暴力の本質」だけを描いた1978年『SF/ボディ・スナッチャー』アメリカが初めて体験したイデオロギー闘争の恐怖1979年『ウォリアーズ』ウォルター・ヒルの情熱と賢さ1980年『戦争の犬たち』オススメの戦争映画1981年『劇場版 あしたのジョー2』出崎さんは乗り越えなければならない壁だった1982年『ブレードランナー』映画だけに流れる特権的な時間1983年『ブルーサンダー』ヘリコプター映画の最高傑作1984年『パリ、テキサス』快感に満ちた映画的な時間1985年『ドレミファ娘の血は騒ぐ』映画監督の資質と時代感覚1986年『ブルーベルベット』デヴィッド・リンチには勝てない1987年『ニア・ダーク/月夜の出来事』メタファーとしてのヴァンパイア1988年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ロボットアニメが到達したひとつの極点1989年『その男、凶暴につき』既存の映画の表現に囚われない北野武の自在感1990年『トレマーズ』とにかくハッピーな映画1991年『ヨーロッパ』僕の理想に近い映画監督1992年『レザボア・ドッグス』ツーショットのダイアローグ劇を書く天才1993年『アサシン 暗・殺・者』バダムについて語りながら、ベッソンについても語る1994年『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』等身大のヴァンパイア1995年『セブン』デヴィッド・フィンチャーならこの1本に尽きる1996年『バウンド』マイノリティへの想い1997年『L.A.コンフィデンシャル』アメリカ映画の底力1998年『ベイブ/都会へ行く』動物がしゃべることの違和感を克服してみせた1999年『DEAD OR ALIVE 犯罪者』平然とデタラメをやって、カタルシスもある2000年『スナッチ』いまの映画にはまだ開拓すべき余地があると気づかせてくれた2001年『ブラックホーク・ダウン』ラストのカタルシスが見事2002年『戦場のピアニスト』言いわけ映画の典型2003年『殺人の追憶』ポン・ジュノは人間をこってり描く2004年『ボーン・スプレマシー』監督の顔が見えてこない不思議さ2005年『宇宙戦争』スピルバーグでも破綻することがあるんだ2006年『トゥモロー・ワールド』アクションシーンがなければ立派な文芸映画になる2007年『ノーカントリー』人間は不気味な存在だ2008年『ぼくのエリ 200歳の少女』北欧映画の独特の雰囲気2009年『ウォッチメン』世間はザック・スナイダーに厳しすぎる!?2010年『ザ・ウォーカー』キリスト教とアメリカの歴史をもう1回やり直す2011年『ドライヴ』すんなり見るだけでは済まないなにかが隠れている2012年『ゼロ・ダーク・サーティ』相当な自信か信念がないと、こんな映画は作れない他
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商品情報
- シリーズ
- 押井守の映画50年50本
- 著者
- 押井 守
- 出版社
- リットーミュージック
- 掲載誌・レーベル
- 立東舎
- 書籍発売日
- 2020.08.12
- Reader Store発売日
- 2020.08.12
- ファイルサイズ
- 10.9MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (9件のレビュー)
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【メモ】
「映画を見ること」と「見た映画について語ること」は別の経験に見えて、その実は全く同一の経験である。いや、より正確に言うなら「映画を見ること」は「見た映画について語ること」によってしか成就しな…い、「映画は語られることによってしか存在し得ない」のだとして、しかし振り返ってみればその「語られた映画」と「見られた映画」は、実は依然として全く別に存在するものなのだ、という不可思識さこそが「映画を見る」という行為の真相なのです。
「2001年宇宙の旅」の最大の功績はあの音楽を用いて宇宙の時間を描いたこと。あの滑るように動く宇宙船。巨大宇宙船をゆっくり動かすことで、宇宙そのものの壮大な時間を演出してみせた。これをエポックメイキングと呼ぶんだよ。エポックメイキングの定義って、自分に言わせればそれだけだから。エポックメイキングと化した作品のゲートを通らないと、その世界に入れない。その部分を変更すると、もはやそのジャンルではなくなってしまう。圧倒的な影響力を確立してしまった作品をエポックメイキングと呼ぶんだよ。
当時の自分が基準なら 『2001年宇宙の旅」を選ぶけど、いまの自分が基準なら別の映画を選ぶ。この本の主旨に関わる部分だから、あえて最初はもう1本選んで、並べて語ってみたい。両作品というか両監督を比較することで、キューブリックに愛想が尽きた理由も明確に見えてくると思う。
いまの自分を基準にして1968年の映画を選ぶのなら、セルジオ・レオーネの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」をセレクトしたい。公開当時は 『ウエスタン」という邦題だったのだけど。
――押井監督が「2001年宇宙の旅」を選ばないとは、意外ですね。
意外でもなんでもないよ。「2001年宇宙の旅』を選びたがる気持ちは分かるし、こういう映画ははずしづらい。でもそれは映画を教養で語りたがる人間の悪癖だと思っている。教養で映画を選ぶのではなく、「もっと自分の欲望に忠実になろうぜ」ってことだよ。キューブリックとレオーネ。いま繰り返し見たい映画はどっちだ?となったら、そりゃあレオーネに決まっているんだよ。
――おお。それはなぜですか?
映画の本質が分かってきたから。別の言いかたをするならば、「映画としての語り口の面白さ」かな。けっきょく映画ってそれしかないんだなって、最近つくづく思うようになったんだよ。
ストーリーとは別物。映画としての豊かさ。僕の言葉で言うと艶っぽさかな。当然、レオーネのほうが艶っぽさがある。スケール感で言えば、両方ともスケール感を撮った映画ではあるんだよ。レオーネのテーマは常に歴史だったから、必ずスケール感をともなっている。
「愚作駄作を回避するな」と。傑作だの名作だの言われているものだけ見て、映画を分かった気になるなってことだよね。なくとも、ジャンル映画と言われるものには快感原則と言われるモノの秘密が必ずある。それでいて、ヤクザ映画と実録映画の快感原則は明確に異なるんだよ。そして観客は無意識にそれを嗅ぎ分けてしまう。だからこそブームになる。だから色々探る。いろいろバリエーションを試す。
自分1人で、ものを作って、それを繰り返すなかで本質が掴めるとは到底思えない。他人の体験も自分の体験にすることで本質が見えてくる。映画はそのために見るんだよ。
映画なんて基本的にアウトローの仕事で、世の中にケンカを売るのが筋だったけど、日本の戦後社会が、すなわち高度に管理された資本主義社会が「アウトローの居場所」を認めなくなった。だから消えていった。ヤクザ映画に限らず、かつての日本映画は社会にケンカを売っていた。
庵野が『新世紀エヴァンゲリオン 』を作る際に聖書を貸した。「聖書「外典偽典」という全集があるんだけど、それを。かなりマニアックな濃い本なんだけどね。イブがもう1人いるよう聖書の外伝のお話。それが「エヴァ」の元ネタになったんだよね。
富野さんは屈折した人なんだよ。つくづく屈折していると思う。富野さんは「アニメ屋ごときが」とか「自分は作家になれなかった人間ですから」「所詮はおもちゃ屋の宣伝映像を作っているだけですから」とよく言うでしょ?アニメーションという業界自体が社会の吹き溜まりではあったんだよ。挫折した人間が寄り集まって、傷口を舐め合っている感じというのかな。そういう意識が横行していた時代ではあったんだけど、富野さんはその意識をいまだに引きずっている人。僕がアニメ業界入りしたときもそうだったんだけど、僕はその自嘲的な意識がイヤでイヤで耐えられなかった。「なんでそんなコンプレックスを持たなきゃいけないんだろう?」と僕は思っていたし、いまもそう思っている。自分の仕事にもっと自信を持っていいはずだよ。だけど、富野さんはそういうふうに屈折していて、本音を隠しながらアニメを作ってきた人なんだよね。その富野さんの本音が「逆襲のシャア」でいきなり炸裂した。続きを読む投稿日:2022.09.17
富野さんのホンネが人類粛正なのは、最初から変わっていない。
問題は、ガイゾックやイデのような圧倒的な暴力に「粛正される」ことはあっても、テンパった人間による粛正は絶対に成就しないこと。
要するに、ご当…人同様に腑抜けなのであって、だから、ザブングル以降、全てナンダコリャにしかならない。
一方、押井先生の方は、なんでそんなに「スカイ・クロラ」の自己評価が高いの、ということが全く理解不能。続きを読む投稿日:2022.11.23
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