ブランディング・ファースト―広告費をかける前に「ブランド」をつくる―
宮村岳志(著)
/クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
作品情報
本書は、これからの企業に必要な「経営戦略」としてのブランディングとデザインについて、わかりやすく解きほぐす一冊です。
▼ブランディングは「イメージ戦略」ではなく「経営戦略」
モノがあふれ、人の嗜好が目まぐるしく変わる現代、経営に「ブランディング」の視点は欠かせません。
「ブランディング」はいろんな媒体で広告を打つことや、良いデザインのロゴやウェブサイト、会社案内をつくる「イメージ戦略」ではなく、「経営戦略」です。
つまり、企業の指針となるものを考え、決めることにほかなりません。
それは、多くの人がイメージする、社外への訴えかけ「アウターブランディング」だけでは不十分で、社内に向けての「インナーブランディング」と両輪がそろって初めてブランディングは機能し、「効率化」「人材の確保」「利益の向上」に大きく貢献します。
また、ブランディングは資本の豊かな大企業だけではなく、中小企業にも必要な視点です。
そしてブランディングにおいて「デザイン」が占める要素は近年、特に大きくなってきています。
本書では、多様な業種・業界を手掛けてきたデザイン・コンサルティング会社の代表を務める著者によるブランディングの考え方を、主に3つのステップで解説。
ブランディングの「本質」をわかりやすく伝えます。
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平均 3.5 (12件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
■ブランディングは経営戦略である
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ブランディングは、柱の確立
ブランドは、柱である
企業の中にある柱にしたいもの、柱になるべきものを誰もが納得してブランドとして確立させるための施策=ブランディング
ブランディングの対象は、企業において一番大切な宝もの。その宝物をブランドに育て上げるのが目的。
知名度が上がればブランドになるは、間違い。
ブランディングとは、知らせるという狭義の意味ではなく、企業の柱を見つけ、育て、強くする一連の過程を指す。
なぜブランディングが必要なのか?
規模の経済の時代から、品質の経済の時代へ
少量生産、カスタマイズ
高いけどこだわり
個性・ダイバーシティ
体験重視
安くて高品質が当たり前になる
目を引く品質があればユーザーに選ばれる時代に
事例
BOTANIST
コトパクシ→ストーリーを売る
ブランディングは、企業の理想像を明確にすること
どうなりたいのか?どう見られたいのか?自社の使命とは?社会に何をもたらすのか?
そのために必要なのは、強い思い
今売り上げを上げているなら、ブランドの芽は出ている
パラダイムシフトに対応するために、中小企業に必要なのは「差別化」「スピード」「インナー」
差別化には
差を埋めて「追いつく」POP(Points of Parity)
他社にないものを伸ばす「追い越す」POD(Points of Difference)
がある
自分たちの強み=柱として、一点突破を狙う
ブランディングには、企業の意思決定のスピードを上げることができる
時代に伴って、マーケティングよりトライアルが大事になっている
とにかくリリースしてみることがマーケティング
ブランディングが社員に浸透すれば、社内の活性につながる。インナーコミュニケーション
身内に愛されないプロダクトが社外に愛されるわけがない
インナーブランディングとアウターブランディングどちらも両輪で動いていく
ブランディングは経営戦略
ブランディングをやりたいと思ったことない経営者はいるかもしれないが、他社と差別化し、社内の様々な局面におけるスピードを上げ、組織の力を強くしたいというのは誰しもが思う
ユーザーが価値を感じるのは、ブランドのマークを見ることで頭の中で再生される"さまざまな要素の集積"たるイメージが商品と一致するから。そして、そのイメージを作ってきたのは、企業であり、働く人々。
ブランディングは経営戦略
経営者自らが指針と姿勢を示す
ブランディングの利点は、投資したお金が単なる経費ではなく投資になること
自社のファンを増やすことになる
ブランド評価 インターブランド
宣伝広告費のようにP/Lに計上されるのではなく、B/Sに残るような資産になる
ラベルデザインの意図
・商品開発背景
・ターゲットの整理
・ネーミング
・デザイン意図
ブランドとは、プロダクトから最前線の従業員の振る舞いまで一気通貫ですべて貫かなければならない
インナー→プロダクト→デザイン
プロダクトに作用する効果
①保証効果
②差別化効果
③付加価値効果
ブランディングは時間がかかる
中小企業は早急に取り組む必要がある
ブランド開発の3つのフェーズ
ネクストブランディング
①情報収集フェーズ
②開発フェーズ
③具体化フェーズ
■情報収集フェーズ
① 社内横断のプロジェクトチームを組成する
② 徹底的に考え抜く
③ 経営者目線と現場目線を交える
④ ビジュアルを交えて定義を明確にする
⑤ 議論のポイント──共通項と異質項
徹底的に考え抜くことが大事
ポストイットで描いたあと4C分析に当てはめる
現場のチームの意見を聞くときに第三者の力を借りるのもあり
画像でイメージを統一
細かい言葉についても追求して議論
質より量
否定しない
連想と結合
KJ法
共通項:ブランドの土台
異質項:差別化要因
■開発フェーズ
情報収集フェーズで吟味した情報を整理して、どんなブランドを確立していくのかを明確にし方向性を導き出していきます。
4つのポイント
①情報を5つに分類し、具体化する
②機能価値とブランドパーソナリティから考える
③感覚的な要素にはビジュアルを用いる
④ブランドビジョンを決める
1、ターゲットペルソナ:ブランドのターゲットとなる顧客層
2、機能的価値:ブランドから得られる具体的な効用
3、情緒的価値:ブランドそのものや、プロダクトから感じられる空気感や気持ち
4、ブランドパーソナリティ:ブランドを人に喩えたときの性格や個性
実在する有名時に喩えるとわかりやすい
5、ブランドプロミス:ブランドが顧客に提供する価値の約束
※機能的価値とブランドパーソナリティは決めやすい
イメージを統一するためには、ビジュアルを用いることも大事
ブランドビジョンとは、現時点ではまだできていない「今後こうなりたい」という目標
大切なのは「小さくまとまらないこと」
特徴は、掛け算で尖らせる
共通項をベースに、社内にある異質項の芽を掛け算にする
■具体化フェーズ
ブランドの価値を具体化し、広めるフェーズ
①ブランドアイデンティティ(BI)の開発
②ブランド世界観の規定
③ブランドの広がり
具体化フェーズの目的は、機能的価値と情緒的価値をつくり、その価値を広めること
ブランドを体現する(感じることができる)プロダクトがなければ始まらない
BIは、ブランドイメージを伝えるためのロゴやカラー、メッセージなどの総称。CIのブランド版ともいえる
BIは、ロゴマークやシンボルマークなどのビジュアルアイデンティティ、ブランドイメージを直感的に伝えるブランドスローガンなどがある
ブランドを中長期的に育て、用いていくうえで求められる「世界観」をより明確にするため「ブランドガイドライン」を作成する
→「するべきこと」「するべきではないこと」を規定する
①で作ったBIと、②で決めた使用法をもとに、ブランドを知ってもらうための施策を考え、実行していく
社外に知ってもらうだけではなく、社内に知ってもらう施策も必要
◇ブランディングにおけるデザインの重要性
ブランド戦略は右脳で考える
左脳と右脳のバランスが大事
ブランディングが理論構築が重視される理由
①デザインの定義が間違っている
②最終的に仕上がったデザインでいいと思っている
大きな問題は「ブランドについての知識量」
自社のメンバーはブランドについての情報・大切さを「知りすぎている」
でも、触れるのは情報を持っていない人。真に求められるデザインは、消費者インサイト(95%の無意識)に訴えること。
目的は「このブランドはよさそうだ」と”なんの情報も持っていない人に”思ってもらうこと
社内にはそれをチェックできる人はいない。芯を喰っていないデザインでも、頭の中で「そのブランドらしさ」を補うような「錯視」をしてしまう可能性がある
”芯を喰う”とは「ブランドの魅力を過不足なく伝えている」という意味。
リレー式ではなく、スクラム式(最初からデザインチームも一緒に議論する)
リレー式
戦略→デザイン→社内→プロモーション
スクラム式
戦略×デザイン×社内×プロモーション
◇デザインとは何か?
クリエイティブの中に、デザインとアートがある
クリエイティブ:創造性をベースにつくられた制作物
アート:問題提起
デザイン:問題解決
デザインは、カッコいい/かっこよくない、かわいい/かわいくないといった基準ではなく、問題解決をできている/できていないが善し悪しの基準となる。
design=設計 装飾ではない
ビジュアルにおける「正解」はブランドによって大きく異なる
ユーザーが得られる体験の質もデザインする必要がある
真のデザインとは、プロダクトのビジュアルの前に、人間の心理を考えることで生まれる。どんな行動をするのか、どんな気持ちなのか、どんな反応をするのか、ビジュアルはその考察から導き出された人間の行動や反応を誘導するためにある。
デザイン=問題解決のクリエイティブ
ブランディングが成功しない理由は、「論理の質」ではなく「デザインの不在」であることがほとんど。つまり、「問題解決の手段であるデザインがないために問題が発生する」という禅問答のような状況になる。
企業がブランディングに取り組むときの作業フロー
悩み→整理する→デザイン(社会に正しく発信する)
真のデザインを生む3つのポイント
①戦略を理解し、デザインを行う
②「体験」を作るという発想
③ブランドコンセプトを全タッチポイントに置く
デザインは、ユーザーの問題を解決する「機能」と、見る人に「問題を解決してくれそうだ」と思わせる(またそのうえでできれば見た目としても)優れたビジュアルの両輪をカタチにする作業です。
経営陣はデザインの知識がなく、デザイナーは経営の知識がない
→だから第三者の力が必要
モノを作るだけでなく、「コト」=体験を作る視点・手法が大切
リアル店舗の生き残りには、「ブランドの世界観を体験できる場所」であることが必須条件となる。
ブランドとは、五感で受け取るイメージや知識の集合体。統一感やストーリーの重要性が高くなる。
◇優れたデザイナーの見分け方
「デザイナーに自作デザインの意図を説明してもらう」
「審美眼の確かさ」
■ブランディングの本質は「インナー」にある
インナーへの効果
①ブランド力の強化
②優れた人材の獲得
③働き方改革
経営者やボードメンバーは、大切なインナーの一員であることを忘れない
「ブランディングをする前に、社長の言動から変えていきましょう」
働き方の改革
1、スピード向上による労働時間削減
2、利益体質の強化
差別化を実現し、価格競争に巻き込まれなければ粗利は高くなる
ブランディングとは、企業の指針や姿勢を明確にする施策であり、本質的には「余計な部分を削ること」。社内のムダにも気づきやすくなる。
どうやって浸透させるか?
→クレドやブランドブック(文字だけでなくビジュアルも)
フェーズ① フラッグを立てる
フェーズ② メンバーへの浸透
フェーズ③ 効果測定
従業員目線でわかりやすい、シンプルかつ本質的なものにする意識が大切
現状の理念の再定義が必要な場合、パーパスデザインが有効
起業やブランドが存在する理由をわかりやすい言葉で定義する
浸透のためには「ツールに触れることで得られる学びを深める機会」と「リマインドの機会」を定期的に用意する
インナーブランディングの目的は「従業員を豊かにすること」
豊かさ=人生の充実度
従業員を豊かにできなければ「成功」はない
「インナーブランディングなくして、ブランディングの成功はない」
大切なのは、トップの強い意志
とにかく進める。効果測定を忘れない。
「何ができていればブランド浸透が進んでいると言えるのか?」を決めておく
社員から「よい取り組み」を集める
→Uniposで実現できるのでは?
強く経営層に伝えたいことは「ブランドを生むための芽」は「いまの社内」にあるということ
特許庁 デザイン経営
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html
■リーダーのマインドセット
事例①:シェイクシャック
事例②:ホールフーズ・マーケット
ブランディング成功のポイント
①クリエイティブ/テクノロジー/ソーシャルグッドの視点
②CCOを設置する(Chief Creative Officer)
③ブランディングは継続してこそ
ブランド戦略を同じパートナーとともに推進するAE制
1つのクライアントに専任となる担当責任者がつくやり方
→ブランド担当が辞めてしまっても「絶対に変えてはならない重要な部分」を守ることができる
ブランディングに最も必要なものはデザイン
デザインでPODの差別化を実現する
デザインは国籍・国境を超える投稿日:2021.04.18
・ブランディングファースト
「規模の経済」から「品質の経済」へ
ブランディングは攻めの姿勢でもあり、守りの姿勢でもある。
「追いつく」POPと、競合他社にないものを伸ばして新たな要素を付加すること…で「追い越す」PODという2つの方向性がある。
大企業と同じ土俵で戦うことが困難な中小企業は、PODの差別化を実現できる何かを探し、それで一点突破するためのブランディングを目指すべき。続きを読む投稿日:2023.11.10
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