ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1
駒月雅子(翻訳)
,ミシェル・バークビイ(著者)
/角川文庫
作品情報
ロンドンの街で秘かに起きている、既婚の女性を狙った薄汚い恐喝事件。名探偵ホームズに依頼を断られ、意気消沈した女性を救うべく、ハドスン夫人とメアリーはホームズとワトスンに内緒で調査に乗り出す!
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商品情報
- 著者
- 駒月雅子, ミシェル・バークビイ
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2020.05.22
- Reader Store発売日
- 2020.05.22
- ファイルサイズ
- 3MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 2.8 (11件のレビュー)
-
「評価が難しい作品」というのは、私には珍しい。
これはその珍しい一品だ。
「ベイカー街」という名でお察しのとおり、これはコナン・ドイル著、シャーロック・ホームズ作品のパスティーシュである。
主人公…は、ハドスン夫人。
ホームズが住まいするベイカー街221Bの家主にして、彼の家政を引き受ける夫人だ。
この作品で、彼女は探偵役にして語り部役も勤めている。
相棒となるのは、メアリー・ワトスン。
ホームズの相棒たるワトスンの夫人である。
ある婦人が、ベイカー街221Bを訪ねてきた。
ホームズに依頼しにきたのだが、ろくに口もきけず、引き下がるしかない。
帰ろうとする姿を見かねて、ハドスン夫人は彼女を台所でのお茶に誘った。
女性同士で気安かったのだろう、婦人は涙ながらに事情を語り出す。
いたく同情し、また怒りを覚えたハドスン夫人と、メアリー・ワトスンは、この事件を解決することを決意する。
決意をしたはいいが、さて、調査には人手がいる。女性には難しい仕事もある。
そこで登場するのがベイカー・ストリート・イレギュラーズ、しばしばホームズの手伝いをしている、ストリートチルドレンたちである。
ウィギンズをリーダーとする彼らの活躍は、魅力的に描かれていた。
強く、しぶとく、頼もしい。けれども寄る辺ない子供ではあるので、読んでいるこちらはハラハラさせられもする。
彼らは、そんな同情もお断りとするだろうが。
そうしたウィギンズらを筆頭に、原作の登場人物が色々と出てくるのが嬉しい。
あの話のあの人、この話のこの人、そしてもちろん、有名どころのあの人。
ホームズから見たその人物像と、ハドスン夫人から見る人物像が、違っていることもある。これもまた興味深い。
さらに、そんな原作あれこれの出し方もよいのだ。
ホームズパスティーシュには、原典のあれやこれやを詰め込みすぎて、重苦しく読みにくいものが少なくない。
鼻についたり、胃もたれを覚えたりするものさえ存在する。
ところが、この作品はそれがない。さじ加減がうまいのだろう。
ハドスン夫人の来歴もさらりと描かれて、あの人にこんな過去がと感じ入る。
メアリ・ワトソンが語る生い立ちは、色といい、香りといい、五感に鮮やかに響く。
描きぶりが見事なものでありながら、一方、私の目には難も映るのである。
まず、ハドスン夫人の日常だが、これにまったく生活感がない。
彼女は家主で、家政婦役も担っている。
探偵役をやるにしても、日々の職務は務めなければならない。
自身と下宿人と雇い人の、食事を作り、掃除をし、衣類やリネンの管理をし、そのための食糧調達、燃料準備、買い物やなにやら、様々な業務をこなさなければならない。
ケーキやスコーンを作ってはいたけれど、しかし、加熱の描写がない。
当時の台所は、スイッチひとつでできることは一つもない。
お茶を飲むにせよ、なにを調理するにせよ、火をおこすところからしなければならない。
オーブンが火加減を自動で見てくれることもない。
電気掃除機はなく、電気洗濯機もない。アイロンも炭をいれて使う。
日々の家政は、現代とは比べものにならない、時間と労力を要するものなのだ。
しかし、それらの描写がない。
名探偵シャーロック・ホームズが、ぱりっとした服に身を固め、隙のない姿でいられるのは、ハドスン夫人の手腕に一任されているというのに!
私にはそれが物足りない。現実味に欠くように感じる。
けれども、そういった生活感を好まないむきもあるだろう。これは好みによると思う。
そしてまた、女性の意識が現代的と言おうか、思考が女権論者的なのも、私には引っかかるところだ。
ハドスン夫人がワトスン博士を「ジョン」と呼ぶのに違和感を覚える。
メアリー・ワトスンが「シャーロック」と呼ぶのも得心がいかない。
その理由が述べられ、その上、夫たるワトスン博士が賛成しているということも、大いに違和感をおぼえる。
たしかに、当時ならばなお「女だから」とひとくくりに制限されたことがあっただろう。不足や不満をおぼえることもあっただろう。
だからといって、そういった点で「自立した精神」をあらわされても困惑する。
「女だから」とひとくくりにされるのは、誰も好まない。
ならば、「男性だから」とひとくくりにするのは改めるべきだ。
あからさまにそういう文言があったわけではない。
けれども、文中にそんな意識が垣間見えるのだ。
作者が女権論者であろうとも、自分の社会観に照らしすぎて、物語を損なっているような作品は、私は好まない。
しかし、これもまた、好みの問題かもしれない。
難しいことはさておいて、とにかく「ヒロインが活躍して、すかっとする話」を好むむきだってあるのだ。
などと述べてしまったが、これはシリーズ1巻目なのである。
人物を紹介し、背景を説明しながら、話を進めていかなければならない。
であるから、世に存在する色々なシリーズ作品で、その1巻目には、ぎこちないところがあるものだ。
ましてや、これは作者のデビュー作なのである。
デビュー作ならば、もっとつたない点があって当然なのに、この物語はそれにしてはこなれている。
というわけで、私は評価しづらいのだ。
あとがきによれば、シリーズ2巻目もあるという。
1巻目はパイロット版でしたと言わんばかりに、2巻目で調整を加えるシリーズもある。
これもその類いで、ひっかかった点が払拭されていればいいなあと、私は望んでいる。続きを読む投稿日:2020.08.29
いわゆるホームズのパスティーシュ物。色々こういう物は読んだけど、まあまあ、ホームズの描写が良かったと思います。
でもツッコミどころが…
まずそもそも下宿のおかみさんであるハドスン夫人がこんな活発に探偵…やるかなと。まぁそれがなければ話が進まないんですけどf^_^;ワトスン夫人はまだしも。
わたしの心理的な関係かも知れませんが、話が冗長だった気も。
但し、時代背景や当時の世相等をうまく表現していてそこは楽しく読めました☆
期待が大きかったからなぁ…続きを読む投稿日:2023.10.29
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