出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」
室月淳(著)
/集英社新書
作品情報
「胎児の異常がわかったら、あなたはどうする?」晩婚化にともない出産の高齢化が進む中、「出生前診断」を希望する妊婦が増えている。流産リスクがある羊水検査とは異なり、採血だけでダウン症等の染色体異常がわかる「新型出生前診断」(NIPT)が二〇一三年に開始されたが、そもそもNIPTとはどういう検査で、妊婦は何を判断し結果に備えればよいのか。そして医療テクノロジーの最前線はどうなっているのか。出生前診断の「現場」に長年関わり最先端研究者でもある著者が、出生前診断を受けるかどうか迷う妊婦に正しい情報を伝え、同時に「命の選択」の本質を考える。大宅壮一ノンフィクション賞『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』著者、河合香織氏推薦! 【目次より】○いわゆる「高齢妊娠」について ○上の子が染色体疾患の病気だったとき ○超音波検査で異常を指摘されたとき ○検査の原理と精度 ○遺伝カウンセリングとはなにか ○リスクの客観的評価 ○産む・産まないという選択と検査を受けないという選択 ○出生前診断の倫理的問題 ○胎児遺伝子診断の現在と未来
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商品情報
- 著者
- 室月淳
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2020.02.22
- Reader Store発売日
- 2020.02.28
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
図書館で、「書評に載った本」という目立つコーナーに置いてあり、つい手にとってしまった。私自身もやや、高齢出産で、妊娠期に少しは気にした経験もあるし、万が一、40代半ばの今妊娠したら(!)という恐怖心す…らあるので人ごとではない。仕事でもプライベートでも、ダウン症の方と触れ合うことは大いにある。偏見はないつもりだが、十分に理解しているかと問われれば、自信をもってはいとは言えない。
出生前診断というものについて、非常にくわしく書いてあり、わかりやすかった。メディアが発信する情報の曖昧さや、受け取る側が誤解しやすい面もよくわかった。
母体血による出生前診断が可能になったことを”危惧する”という報道を、すればするほど、その診断を希望する女性が増える、というような。(自殺報道が自殺をあおる側面があるのに似ている)。
最初の方は、出生前診断というものが何か詳しく説明してある。中盤は、著者自身の考えを織り交ぜながら、診断を受けようとするカップルが、どういう覚悟でいるべきなのかが述べられている。結論から言うと、しっかりと二人で話し合い、胎児が染色体の病気であるという確定診断が下った場合に赤ちゃんをあきらめる、という決断をしたカップルが、診断を受けるべきであって、「染色体の病気である可能性は低い」という診断を得て安心したいとか、「もし染色体の病気の可能性があるという診断が出たらそのときに考える」と言った甘い考えで検査にのぞむのは間違っている(その通りだと思う)。
ちなみに私は妊娠初期に病院で、希望の有無を聞かれたとき、希望しないことを伝えた。どんな赤ちゃんでも産むつもりだという気持ち(もし胎児に何らかの異常が見つかったからといって堕胎したりはしないという気持ち)がはっきりとしていたからだ。しかし「きっと元気な赤ちゃんに違いない」という思いがあったことは確かだ。もし(あまり可能性はないが)45歳の今万が一妊娠したとしたら、あのときと同じように「希望しません。どんな赤ちゃんでも産むつもりです」と言えるかどうか、わからない。最終的にはそういう答を出したいが、悩むだろうと思う。
また、夫の親などがカップルに介入し、(例えばお嫁さんが高齢だという理由で結婚に反対し)、健康な赤ちゃんを産むことが親に認められる条件、みたいになっている場合は悲惨だ…実際にそういう例があったらしい。私には全く関係ないことなのに、本気で腹が立つ。
最後の最後、「あとがきにかえて」で、著者の結論(?)として、ある詩人の「見る前に跳べ」という言葉を引用し、「見る前に産め」という言葉で締めくくられている。
情報化の進む現在、情報量が非常に多く、情報格差なども問題になりつつあるが、情報が多ければ多い方が良いとは限らない。大量の情報を浴び、その都度悩み、多くの情報から自分で選んだ(と思っている)から幸せになれるとは限らない。情報が少なくても幸福な人だってたくさんいるはずだ。(この考え方に感動!)人生は選択の連続だ。こっちの選択の方が正解だった、なんてことはあり得ない。選ぶ度に人は、もう一つの選択肢の方が良かったのかもしれない、と後悔し続けるものなのだ。
ちょうど、女性の人生にいろんな選択肢があり、あっちを選んだらこんな人生だった…的なパラレルワールドを描いた小説、「森へ行きましょう」を読み終えたところでもあり、どハマりしました。読んで良かったです。続きを読む投稿日:2020.12.22
分かりやすくて読みやすかったけど、人工妊娠中絶後の患者の心理状態に対する、「わたしたち産科医療従事者がかならず真正面から向き合って理解してあげなければならない現実」という表現は…。理解しなければならな…い、では駄目だったのかな。続きを読む
投稿日:2022.07.17
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