湖の男
アーナルデュル・インドリダソン(著)
,柳沢由実子(訳)
/創元推理文庫
作品情報
その白骨は干上がった湖底で発見された。頭蓋骨には殴られたらしい穴があり、壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられている。30年以上前の事件らしいことから、エーレンデュル捜査官の手に捜査が委ねられた。丹念な調査の末、ある失踪事件が浮かび上がる。アイスランド全土をまわっていた農業機具のセールスマンが、婚約者を残し消息を絶っていたのだ。男の名は偽名で、彼の身分証明記録は一切なかった。男は何者で、何故消されたのか? 捜査が浮かびあがらせたのは、時代に翻弄された哀しい人々の真実だった。北欧ミステリの巨人渾身の大作。ヨーロッパミステリ大賞、バリー賞受賞!
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商品情報
- シリーズ
- エーレンデュル捜査官シリーズ
- 著者
- アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元推理文庫
- 書籍発売日
- 2020.03.19
- Reader Store発売日
- 2020.03.19
- ファイルサイズ
- 0.9MB
- ページ数
- 492ページ
- シリーズ情報
- 既刊7巻
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この作品のレビュー
平均 3.5 (13件のレビュー)
-
ヘニング・マンケルに似た雰囲気を感じるのは、翻訳者がどちらも柳沢由美子さんの名訳だからということだけではあるまい。マンケル同様、北欧を代表する作品に与えられるガラスの鍵賞を、しかも立て続けに二度受賞…しているインドリダソン。そのエーレンデュル警部シリーズも、マンケルのヴァランダー・シリーズ同様に、主人公を捜査官として描くのみならず、生活を持ち、家族を持つ人間であり、その中で私的な懊悩や迷いや希望を抱え込んでいるのである。そこに単作としての事件の上をカバーする連続性持ったシリーズ小説としての魅力が感じられるのだ。
シリーズ探偵が、誰かとつきあったとか、別れたとか、子供ができたとか、飼い犬が家族に加わった、とか、そういった悩まぬ不動の強き探偵ではなく、読者に近い側の人間であり、読者同様の様々な家族や人間関係に関する悩み、体の不調、心の荒れる様と、それを悔やむ様子、等々。そうしたものをメイン・ストーリーに重ねることによって得られるリアルな重さ、物語の厚さ、体温のようなものが感じられ、作品は活き活きと我々の下に手繰り寄せられる、そんな気がする。
もちろん、読者と離れたところで、非現実的であれ、快適な小説を求めたい読者もいると思う。マンケルもインドリダソンも、どちらかと言えば、私生活では試練を与えられる警察官であり、個人の試練を解決できなくても事件を解決することはできる、という、少し不完全さを持ったキャラクターである。
さて本書を読むのが、わけあって先にハードカバーで読んだ『厳寒の街』の後になってしまった。本書は、アイスランドの過去の歴史のなかから現れた古い死体の発見がスタートラインとなる。枯渇した湖の底から、古い無線機を錘として使われた白骨死体が発見されたのだ。エーレンデュル警部の捜査が始まる。
一方で、米ソ冷戦時代のアイスランド、共産主義に憧れ東ドイツを訪れる若者たちの一団の物語がある人物によって挿入される。彼が誰なのかは読み進むまでわからない。しかし、冷戦の時代には、地理的に重要な情報戦略の要衝的にあった上、自国に戦力を一切持たないアイスランドの国には各国の出先機関が押し寄せ、軍事的にも重要な国とされていたのだそうである。
その時代、ソ連のコミュニズムに希望を求めた若き活動家たちの行動に本書は焦点を当てる。一方の現代では、エーレンデュル、シグルデュル=オーリ、エレンボルクという三人のレギュラー捜査陣が、それぞれにプライベートな悩みを抱えながらも、彼らなりの才気を発揮して湖で発見された白骨の正体に迫る。
アイスランドと東ドイツのライプツィヒの両舞台、両時代を往来しつつ物語は白骨死体の正体に近づいてゆく。ミステリ要素をしっかりと差し出しながら、進んでゆく過去の物語とカタストロフ、そして冷戦後の現代の捜査のコントラストを楽しみながら、超一級のストーリーテリングを楽しめる。極上の美酒と言ってよい、これは相当にハイ・クオリティな作品である。続きを読む投稿日:2020.11.02
このレビューはネタバレを含みます
エーレンデュル捜査官シリーズの第四弾。
レビューの続きを読む
水位の下がった湖から遺体が発見される。
ロシア製の機械にくくりつけられていた遺体は、
婚約者の前から姿を消した農業機械のセールスマンなのか。
冷戦時代に東ドイ…ツに留学した男のモノローグが重ねられていく。
国土は日本の三分の一ぐらい、人口は約35万人
日本のはるか北に位置するアイスランドがどういう国なのか
今一つ掴めていないが、
スパイ活動がありましたか、と聞いて回るとはどういうことなのだろうか。
みんながみんなを知っている国、と解説にあったが、
知り合いばかりの小さな国では、
裏切り者はいないということなのか。
ライプツィヒへの留学生たちに起こった出来事、
さらにそのあとにアイスランドで起こった事件は、
あまりにも予想通りで、逆にびっくりしたぐらい。
エーレンデュルの娘は、彼の同僚にけがを負わせ麻薬中毒治療施設に入っており、
今度は息子が登場した。
前作で知り合った検査技師の女性は、夫と離婚することにしたらしく、
エーレンデュルとの関係は進展した。
女性の同僚は料理本を出版し、男性の同僚はパートナーが流産したらしい。
元上司は病気ながらまだ生きているし、
男性の同僚にまとわりついている、妻子を車の事故で亡くした男も謎。続きを読む投稿日:2022.12.16
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