思い出袋
鶴見俊輔(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.3 (32件のレビュー)
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著者、鶴見俊輔さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。
---引用開始
鶴見 俊輔(つるみ しゅんすけ、1922年〈大正11年〉6月25日 - 2015年〈平成…27年〉7月20日)は、日本の哲学者・評論家・政治運動家・大衆文化研究者。アメリカのプラグマティズムの日本への紹介者のひとりで、都留重人、丸山眞男らとともに戦後の進歩的文化人を代表する1人とされる。
---引用終了
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
戦後思想史に独自の軌跡をしるす著者が、戦中・戦後をとおして出会った多くの人や本、自らの決断などを縦横に語る。抜きん出た知性と独特の感性が光る多彩な回想のなかでも、その北米体験と戦争経験は、著者の原点を鮮やかに示している。著者八十歳から七年にわたり綴った『図書』連載「一月一話」の集成に、書き下ろしの終章を付す。
---引用終了
最後に、戦後の進歩的文化人を代表する方々の生年没年を見ておきます。
鶴見俊輔(1922~2015)
都留重人(1912~2006)
丸山眞男(1914~1996)
●2024年2月16日、追記。
著者は、ベ平連の結成時のメンバー。
ベ平連は、米軍の北爆開始を受け、鶴見俊輔、高畠通敏、小田実らによって1965年4月24日に結成された。続きを読む投稿日:2024.01.27
著者の本はお初。哲学者、思想家とのこと。
御齢80を超え、自身の戦中戦後の過去を通じて、知り得た知識や思索を重ねてきた思いなどを、自由闊達に語り尽くす。「一月一話」という連載ということは、月に1話…、年間12話。それを7年間にわたり綴った、ある意味「知」の結晶だ。
2015年に亡くなられているので、最晩年の著者の、遺志に近いものだろう。
「少しずつもとの軍国に近づいている今、時代にあらがって、ゆっくり歩くこと、ゆっくり食べることが、現代批判を確実に準備する。」
「ところが歴史のない国、正確には先住民の歴史の抹殺の上につくられた開拓民の国アメリカでは、「金儲けの楽しさ」は妨げるものをもたずに展開していくことになる。」
2010年の著作、連載時期はさらにその前ではあるが、まさに現代に対する警鐘のような言葉が綴られていることに驚く。
〈もうろく貼〉という備忘を付けているという話も興味深い。からだの衰え、忘却のかなたへ消えゆく記憶と、いかに折り合いをつけて老いてゆくかの感慨も綴られる。
教育への不安と期待は、後世に送る切なる思いであろうとも思う。
「大学とは、私の定義によれば、個人を時代のレヴェルになめす働きを担う機関である。」
と、横並びの、金太郎飴しか作らない日本の教育への懸念はそうとうなもの。
「もし大学まで進むとして、十八年、自分で問題をつくることなく過ぎると、問題とは与えられるもの、その答えは先生が知っているもの、という習慣が日本の知識人の性格となる。今は先生は米国。」
青年期に米国留学もした著者ではあるが、今のアメリカの存在にも、要注意と語りかける。続きを読む投稿日:2024.01.29
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