歴史とは何か
E・H・カー(著)
,清水幾太郎(訳)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.0 (106件のレビュー)
-
初めて手に取ったのは、大学生時代(1990年代)での最初の概論でのテキストにて、
確か、1961年のカー氏の、ケンブリッジ大学での講演録を基調にしていて、
日本での初版が1962年ですから、訳語とし…ての言い回しはやや古めで、
正直とっつきにくい部分もありますが、内容としてはよくまとまっているかと。
- 歴史家の機能は、(中略)現在を理解する鍵として過去を征服し理解すること
その上で、、
- 歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、
現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話
との点は、私にとって非常に肚落ちのする内容で、今でも(2020年代)、
各種の物事に対しての考え方とか、立ち位置への基礎になっていると思います。
自分なりに解釈すると、歴史とは、一つの「事実」と、その「事実」に対する解析や、
議論の積み重ねの結果としての、様々な「真実」の集合体、であって、
その事実とは人の行為の積み重ねで、真実とはその行為への、
「真の動機(原因)」に直結するもので、多様性が前提となる、くらいでしょうか。
そういった意味では、とある寄稿のなかで塩野七生さんが述べられていた、、
- 歴史とは学ぶだけの対象ではない。知識を得るだけならば、歴史をあつかった書物を読めば済みます。
そうではなくて歴史には、現代社会で直面する諸問題に判断を下す指針があるのです。
なんてことも思い出しながら、、「知識」を集約しただけでは生きていく上ではさして役に立たない、
「生きた学問」として活用していくためには、今現在への「社会的有用性」の模索も必要、なんて風にも。
そしてこれは何も「歴史学」に限った話ではなく、
科学するを前提とする学問すべてに求められていくのかな、とも思います。
そう思うと「歴史的な事実(事象)を今の価値観で裁断する」のには懐疑的で、
- 今日、カール大帝やナポレオンの罪を糾弾したら、
誰かがどんな利益を受けるというのでしょうか
との感覚も非常に納得できます、、法治でいう「法の不遡及」とも通じるかと、、
日本であれば織田信長による比叡山焼き討ちとかが、一例になりますかね。
(個人的には、信長時代の価値観でいえば、焼き討ちも妥当、と思っています)。
なんてことを、ここ最近のANTIFA(アンティファ)なる無政府主義のテロ集団が、
銅像破壊、言論統制などで過去の歴史を“無かったこと”にしようとしてるな、と見ながら、
これは「人の営みとしての歴史に対する冒とくであり、挑戦である」と、怒りを禁じえません。
たびたびに、歴史学とは私にとっての基礎学問だなと、
そんなことを思い出させてくれる一冊です。続きを読む投稿日:2020.06.15
現代史の扱いは難しい。何故なら出来事に利害や未練を有する人たちがまだいるからである。
歴史を決定論として捉える説、偶然の連鎖として捉える説がある。いずれにせよ歴史家康とは因果経過を選択し価値観に基づき…体系化する。
過去に対する建設的意見を持たぬ者は、神秘主義かニヒリズムに陥いる。
進歩史観は幻想である。唯一の絶対者は変化である。優れた歴史家は狭い視野を乗り越え、未来から過去を深く洞察する。
歴史家は勝利を占めた諸力を前面に押し出し、これに敗れた諸力を背後に押し退けることによって、現存の秩序に不可避性という外観を与えるものである。続きを読む投稿日:2023.12.18
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