悪声
いしいしんじ(著)
/文春文庫
作品情報
「ええ声」を持つ「なにか」はいかにして「悪声」となったのか――。
ほとばしるイメージ、疾走する物語。著者入魂の長編小説。
「なにか」は、ある重みをもって、廃寺のコケの上にそっと置かれた――。
京都のはずれの廃寺に捨てられたみどりごは、コケに守られながら生をつなぎ、やがて犬のブリーディングと桜の剪定を生業とする花崎さんに引き取られる。
「なにか」の声は、居合わせた誰もがはっと振り返るような特別なものだった。
長じて歌うことを覚えた「なにか」は、アムステルダムからやってきたサックス・プレイヤーの「タマ」と「あお」の父娘といっしょに、生駒の方舟教会でライブを行う。
奔放な想像力が魅力の、現代を代表する物語作家いしいしんじが、筋立ても分量も、あらかじめ何も決めずに想像の赴くままに書き進めた、少年の一代記。
第4回河合隼雄物語賞受賞作。
解説・養老孟司
※この電子書籍は2015年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 悪声
- 著者
- いしいしんじ
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2019.08.06
- Reader Store発売日
- 2019.08.06
- ファイルサイズ
- 1.9MB
- ページ数
- 496ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.7 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
すごく密度が濃い。きちんと、読んだ、とは到底思えない。
レビューの続きを読む
この小説自体がうたみたいなもので、読むというより原始的な、もっと感覚的な体験という気がする。
自分の中に感応するところが出てくるたびにかちんかちんとスイッチが入って、からだの中にぶわっと感情と記憶の波がまき起こる。タマさんのサックスみたいに。電車の中でぽろぽろ泣いてちょっと恥ずかしかった。
「全身にひびきわたる鐘みたいな」歌、音楽にそういう領域は確かにある、と思う。音楽のなすがまま意図しない心の奥の奥まで揺さぶられて、しまっていた記憶も思いも溢れてしまううた。
その深いところで、自分の現実と夢を行きつ戻りつしながら、みんながつながっていく。太古の昔より長い間、時間も距離も越えて、奇縁に引き寄せられて、わたしたちは触れたり離れたりして、大きな波に揺られていく。別にそれって不思議やファンタジーじゃない。これがわたしたちのありようなのだ、きっと。
昔部活で吹奏楽をやっていた頃、とても楽しかった合奏の後につい友達に「さっき私、あんまり楽しくて音に包まれて浮きあがってる感じがしてた」って言ったら「私も!すごかった!」と何人もに返されて、とてつもなく嬉しかったことを思い出した。うたの浅瀬だったのだろう、と今にして思う。投稿日:2019.12.19
これは、唯一無二の物語。
時間、空間を自在に行き来して語られる。
なかなかストーリーをまとめることが難しいタイプの物語ではある。
主人公の「なにか」は、仏声寺に捨てられた赤ん坊。
普通の人間のよう…に十六歳まで育っていくのに、寺の庭のコケの声が聞こえ、音が目に見え、美しい歌声を持つ、普通の人間ではない存在だ。
彼は流れ者の僧侶「お寺さん」の唱える経の中で、無数の生き物の生死を体験する。
そして、奇縁で結ばれた少女「あお」(お寺さんのふたごの弟、タマの娘)を救うため、固有の姿・形を失い、仏声寺に封じられた「悪声」、音そのものとなっていく。
たぶん、十代の頃とか、いや、十年前に読んでいたとしたら、この本を受け入れられなかった気がする。
でも、最近、思う。
自分もあと数十年もすれば、この世から消える。
今の姿は仮のもので、いずれ元素に戻って世界に散らばっていくのだろう。
その中で、また、いずれ別の何かの形をひょっととることもあるのかもしれない。
歳をとっていくと、自分の中にたくさんの年齢の自分がいることにも気づく。
そんな風になっていくと、一見カオスのようなこの作品の世界も、なぜかすんなり受け入れられるのだ。
悪声となった「なにか」は、「かなし、かなし、かなし」と歌う。
命は生まれ落ちた時からすでに死を内包している。
どういう形であれ、この世界に置かれた状態で生きていかなければいけない。
そのような命のありかたが「かなし」と表現されるのだ。
仏教的ともいえる生命観だが、この作品では命は「歌」でもある。
そのためか、非常にイメージ豊かに、融通無碍の形をとるいのちの在り方を美しく描いている、と感じる。
読み返すなら、どのページから読み返してもいい。
自分の感覚が解き放たれるような気がする。
でも、この作品を知人が読むとしたら、何度中断しても、最後のページまで読むことを勧めたい。続きを読む投稿日:2022.01.16
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。