潤みと翳り
ジェイン ハーパー(著)
,青木 創(訳)
/ハヤカワ・ミステリ文庫
作品情報
企業の研修キャンプで森に入った5人の女性。戻ってきたのはそのうち4人だけだった・・・・・・。連邦警察官フォークが辿り着く真相とは
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商品情報
- シリーズ
- 潤みと翳り
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ミステリ文庫
- 書籍発売日
- 2019.08.06
- Reader Store発売日
- 2019.08.06
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 480ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (13件のレビュー)
-
オーストラリアの連邦警察官フォークが主人公のシリーズ第二作。
前作「渇きと偽り」は、オーストラリア特有の干魃の季節の中で土地も心も渇ききったヒリヒリするようなサスペンスを描いてあったが、今回は逆に雨…が降り注ぐ森の中をさまよう女たちに何があったのかを描く。
前作ではフォークの警察官としてというよりは自分自身のプライベートな問題と向き合う話だったので忘れていたが、元々フォークは経済犯罪、資金洗浄とか企業の不正取引とかそういう犯罪を担当しているらしい。
今回、企業の合宿研修中に森で行方不明となった女性アリスはフォークが捜査をしている企業の内部協力者として、企業の様々な極秘文書やデータを渡してくれるように頼んでいたらしい。
ということは、それが会社にバレて消されてしまったのか。
だがここで別の説も。この森では過去に何人もの女性が殺されたり行方不明になった事件が起こったらしい。犯人とされる男は随分前に逮捕され刑務所内で獄死。しかし彼が本当に犯人なのかどうかは分からない。
ということは、真犯人が別にいてその犯人に連れ去られる、あるいは殺されてしまったのか。
だがさらにフォークが調べて行くと別のトラブルも見えてくる。
アリスは自ら行方を断ったのか、それとも誰かに連れ去られたのか、それとも遭難しているだけなのか、事故が起きたのか、それとも…。
フォークと彼の同僚カーメンとの捜査の合間合間に挟まれる合宿研修の様子は、まさに女同士のマウント争いという感じでドロドロしたドラマ。
面白いような、見たくないような。
行方不明のアリスは典型的な自己主張の激しい女性で、積極的には付き合いたくないタイプ。だが他の四人の女性もそれぞれクセがあってあまり好きにはなれない。
アリスが結局どうなったのか、何が起こったのかは、正直言っていろんなパターンの結末が考えられるし、どうとでも持って行けるので、そこに謎解きの余地は少ない。なのでミステリーではなくサスペンスなのだろう。
そもそも女性たちの森の中でのドラマが描かれている時点で殆どネタバレしている感もあるが、最後までどう来るかは分からないと思いつつ読んだ。
ちなみに女たちの醜い争いで終始するわけではないのでご安心を。
作中で他の仲間が言うように、アリスがどうなろうがあまり同情できないタイプなのでそこはどうでも良い。
ただ、都会の開かれた世界なら何とかやり過ごせることでも、こんな閉鎖された空間では普段ならやり過ごせることがやり過ごせなくなる、小さな引っかかりがたまらなく許せなくなることもあるのだろうと思うと興味深かった。
今回もフォークのプライベートな部分、亡き父が自分に寄せる思いを感じ取られるところが描かれていた。
しかしフォークの本来の仕事、経済犯罪の捜査についてはほとんど脇に置かれていたのが残念。といってもフォークはその点に置いても一番下っ端らしく、上司からの命令にしたがって動くだけということらしいが。
次こそフォークの警察官としての活躍が見られるのかどうか。
それとフォークの男性としての魅力がそこまであるのか疑問。よほど見た目が良いのだろうか。続きを読む投稿日:2020.02.04
イギリス出身でオーストラリア在住の作家「ジェイン・ハーパー」の長篇ミステリ作品『潤みと翳り(原題:Force of Nature)』を読みました。
イギリスの作家の作品が続いていますね。
-----…story-------------
CWA賞受賞『渇きと偽り』続篇!
企業の研修キャンプで森に入った同僚女性5人が遭難。
4日後にやっと森から出てきたとき、5人の中の一人、「アリス」が忽然と消えていた。
手がかりは、連邦警察官「アーロン・フォーク」の携帯電話に残された、「アリス」からの「あの子を苦しめて……」というボイスメッセージ。
遭難か、事件か。電波の届かない森の中で、何が起こったのか。
オーストラリアの豊かな森を舞台に繰り広げられる、衝撃のサスペンス。
解説/「若林踏」
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2017年(平成29年)に発表された、メルボルンで財務捜査を担当する連邦警察官である「アーロン・フォーク」を主人公とするシリーズの第2作です。
企業の合宿研修でジララン山脈の森に入ったベイリーテナンツに勤める5人の女性… ベイリーテナンツ会長の「ジル・ベイリー」、その社員「アリス・ラッセル」、「ローレン・ショー」、「ブリー(ブリアナ)・マッケンジー」、「ベス(ベサニー)・マッケンジー」は慣れないながらもテントを張り、食事を取り、なんとか初日を終えるが、翌日のキャンプ地への移動中道に迷ってしまう、、、
携帯電話も通じず、地図も役に立たず、雨と寒さが体力を奪い、焦りと不安が精神を蝕んでいくなか、徐々に亀裂の入り始めた5人のメンバーのうち一人「アリス」が忽然と消えていた… 道に迷った末の遭難なのか? あるいは何かの事件に巻き込まれたのか? 残りのメンバーはやがて救助さるが、「アリス」がいつ消えてしまったのか、どこへ行ったのかは誰も知らないと言う。
ある事件の捜査過程で、行方不明になった「アリス」と関わりのあった連邦警察官「アーロン・フォーク」は、「アリス」が行方不明になったと思われる時間帯に電話の着信を受けていた… 彼女に何が起こったのかを確認するため、「フォーク」と、パートナーの「カーメン・クーパー」はメルボルンからジララン山脈へと向かう、、、
手がかりは、「アリス」が「フォーク」の携帯電話に残した「あの子を苦しめて……」というボイスメッセージ… 遭難か、事件か!?
外界から隔絶された大自然は、女たちの虚飾を容赦なく剥ぎ取っていく… 連邦警察官「フォーク」が辿り着く真相とは……。
5人の女性たちがキャンプに入り、やがて遭難し、そのうち一人が姿を消してしまうまでの経緯が描かれるパートと、遭難から4人が救助され、「フォーク」たちが「アリス」を捜査する現在進行形のパート… 物話は二つの場面を交互に描くことで進んでいき、場面の転換を細かく繰り返しつつ、「アリス」の身に何が起こったのかが徐々に明らかになる展開、、、
遭難パートでは、女性たちの次第に蝕まれていく精神状態が、5人それぞれの視点から描かれ、一方現在のパートでは、キャンプ地近辺で25年前に起こった連続殺人事件のエピソードをちょっとずつ織り込み、サスペンス感を徐々に煽っていきつつ、「フォーク」たちの捜査の様子を描いていくのですが、あるきっかけを境に物語がサスペンスから謎解きへとシフトしていくところに読者を惹きつける魅力を感じましたね。
なかなか面白かったです… 前篇にあたる『渇きと偽り』も読んでみたいですね。
以下、主な登場人物です。
「アーロン・フォーク」
連邦警察官
「カーメン・クーパー」
連邦警察官。アーロンのパートナー
「ジル・ベイリー」
ベイリーテナンツ会長
「ダニエル」
ジルの弟。ベイリーテナンツ最高経営責任者
「ジョエル」
ダニエルの息子
「リーオ」
ジルとダニエルの父
「アリス・ラッセル」
ベイリーテナンツ社員
「ローレン・ショー」
ベイリーテナンツ社員
「ブリー(ブリアナ)・マッケンジー」
ベイリーテナンツ社員
「ベス(ベサニー)」
ブリーの双子の妹。ベイリーテナンツ社員
「イアン・チェイス」
エグゼクティブ・アドベンチャーズの企画運営者
「マーゴ」
アリスの妹
「レベッカ」
ローレンの娘
「マーティン・コヴァック」
連続殺人犯。故人
「サム(サミュエル)」
マーティンの息子
「キング」
上級巡査部長
「エリック」
アーロンの父。故人続きを読む投稿日:2023.06.25
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