死者の百科事典
ダニロ・キシュ(著)
,山崎佳代子(訳)
/創元ライブラリ
作品情報
旅先で訪れた図書館で、世界中の無名の死者の生涯だけを記録した書物に出会い、父親の項を読みふけるという表題作をはじめ、音楽的手法、絵画的手法、映画的手法と、自在に変化するスタイルで描かれた死と愛をテーマとする、幻想的で美しい、しかも皮肉な味わいをもそなえた九つの物語。アンドリッチ賞受賞作。【収録作】「魔術師シモン」/「死後の栄誉」/「死者の百科事典」/「眠れる者たちの伝説」/「未知を映す鏡」/「師匠と弟子の話」/「祖国のために死ぬことは名誉」/「王と愚者の書」/「赤いレーニン切手」/「ポスト・スクリプトゥム」/訳者あとがき=山崎佳代子/解説=松山巖
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商品情報
- シリーズ
- 死者の百科事典
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元ライブラリ
- 書籍発売日
- 2018.12.21
- Reader Store発売日
- 2019.06.20
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 280ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
ユーゴスラビアの作家の短編集。母がユーゴスラビア系民族、父はユダヤ人でアウシュビッツから帰ってこなかった。
短編全部が寓話的、哲学思想的。実際の人物やエピソードから哲学的思考を加えたり、実際には無い書…物をあるもとして話を巡らせたり。
ナザレ人イエスの死と不思議な甦りから十七年の後。
村から村へ巡る伝道者たち、大道芸人たち。
魔術師シモンは、イエスの奇跡を伝える伝道者ヨハネやパウロたちの前で「それはこのような、誰でもできる奇跡か」と、天に昇ってみせる。ペテロが神の言葉を唱えると魔術師シモンは失墜する。そしてまた別の話もある。
魔術師シモンの弟子の女は叫ぶ。「これもあの人の教えの真実の証なのさ。人の人生は転落と地獄、この世は暴君の手の内にある。暴君の中の暴君、ヒエロムに呪いあれ!」
/「魔術師シモン」
==新約聖書のエピソードより。
あんなに惜しまれて死んだ娼婦はいないぜ。
船員であり革命家であったウクライナ人のバンドゥラは、肺炎で死んだ娼婦マリエッタの思い出を語る。
彼女の墓に備えられた花。
そしてその日に民衆蜂起の地方革命が起こっていた。
/「死後の栄誉」
私は図書館でその本を見つけました、有名な「死者の百科事典」を。そこには死んだ人の人生が記されています。私は、亡くなった父の一冊を探してページを開きました。そこには父の全てがありました。
全てです。村を出た日に咲いていた花、母と出会った日の風、夕日の色、歩いた道、出会った人…
「人間の生命は繰り返すことができない。あらゆる出来事は一度限りである」(P73)
/「死者の百科事典」
仰向けに横たわっていた、ザラザラして湿った駱駝の皮の上に。
三人と一匹の死者のうち、一番若いディオニシウスは一番先に見を覚ました。昔見た群衆は、ナザレ人イエスを讃える歌と、皇帝からの迫害は、ああ、あれも夢だったのか。
/「眠れる者たちの伝説」
==キリスト教を信仰したために皇帝から迫害を受け、洞窟に逃げ込み、約二百年眠った”エフィソスの七人の眠れる者”というコーラン由来の伝説を下敷きにしているということ。
市場でジプシーから買った鏡。ベルタが鏡を覗くと、父と二人の姉が暴漢に襲われる場面が写される…。
/「未来を写す鏡」
==新聞三面記事のような話だが、実際に起きたことと信じる人たちはいるようだ。
師匠の書を虚栄心により追い越そうとする弟子。
/「師匠と弟子の話」
民衆蜂起に味方したとして死刑宣告を受けた貴族の青年。
青年の母は息子に告げる。あなたはこのような死に方はしない、私が皇帝に話をして、うまく行ったらあなたに合図を送ります。
自分が不名誉には死なないと分かった青年は、恐れを持たずに絞首台に登る。
彼が最期まで持った立派な態度は、自分が死なないと思い怖れなかったのだろうか?または死ぬと分かっていても恥じることなく死ねたのだろうか?
/「祖国のために死ぬことは栄誉」
架空の書物を題材にし、それが時代を越えてヨーロッパの歴史を変えた話。
/「王と愚者の書」
先生はイデッシュ作家のメンデル・オシポビッチの往復書簡を探していらっしゃいますね。先生のおっしゃるとおりに、確かにそれは存在します。
いまでは孤独のうちに生きているこの私ですが、かつて数多くの手紙をしたためたことがありました。そしてその手紙のほとんどは、たった一人の人に宛てられたものでした―メンデル・オシポビッチに。
/「赤いレーニン切手」
作者による、収録作品の解説。
「本書に収められていた話はいずれも、多かれ少なかれ形而上的と呼ぶべきひとつのテーマを扱っている」
ここに書かれていることは、その一部を実際に起きたことをであったり、実在の人物だということで、元ネタ解説など。
/「ポスト・スクリプトゥム」続きを読む投稿日:2019.11.22
ユーゴスラビアの作家、ダニロ・キシュの短編集。
『庭、灰』『若き日の哀しみ』に続いて3冊目を読んだ。
既読の2冊がぽつりぽつりと語られるような自伝的小説であるのに対し、この9編は凝った技法の詰まった…文章で、まるで全く異なった作者のようだ。
三島由紀夫的な耽美も感じるが、キシュの場合は美のための美しさにとどまらない。
どこかおどけたような冷めた書き方が、逆に哀しみを強調してくる。
タイトルとなっている「死者の百科事典」は、日本語にするとまるでホラー小説だが、そうではない。
主人公が父親の死後、その人生を尊び、百科事典を開くかのように一つ一つ詳しく振り返る、という内容だ。
ここで「死者」は、恐ろしいホラーなどではない。
命が尽きる直前までそこにいた、知人であり、家族である。
あるドキュメンタリーを思い出した。
それは、事故で息子を亡くした母親が、「私達が今あの子にしてあげられるのは、思い出してあげることくらい」と語った場面。
それがこの百科事典だと感じる。
「眠れる者たちの伝説」の臨死体験、「祖国のために死ぬことは名誉」の真綿で締めるような心理戦、「王と愚者の書」はこれから深く学びたいことの宝庫だった。
これほど多様の小説が詰め込まれた短編集は類を見ず、何度でも読みたい1冊。続きを読む投稿日:2023.04.05
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