不老虫（ふろうちゅう）

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  　石持浅海さんの新刊に、本格の要素はない。サスペンスと言うべきか、パニックものと言うべきか、こういう作品も書けるのかとちょっと驚いた。
  
  　東南アジアの一部地域にのみ生息しており、真偽不明な伝説のみが流布している「不老虫」。その未知の寄生虫が、日本に持ち込まれた可能性があるという。農水省で防疫に従事する恭平は、この寄生虫の処分を命じられたのだが…。
  
  　恭平のパートナーとして、米国からやって来たのは、スタンフォード大の学生であるジャカランダと、猫のビオ。この若い女性と猫には、特殊な能力があり、日本に招かれた。そして、英語ができるという理由で恭平が補佐役に指名されたのだ。
  
  　あくまで架空の存在である「不老虫」だが、まず首謀者がそれを持ち込んだ手段に注目したい。こりゃ人権侵害どころではない。常識的な感性の持ち主ならば、こんな仕事はできまい。下手をすると、日本中を危険に晒すかもしれない。
  
  　ジャカランダとビオの驚異の能力で、早速1匹目は処理した。察知した敵方（？）も手を打ってくる。東京は広い。ジャカランダとビオだけで、残りを探し出すことができるのか？　時間の猶予がないだけに、展開は極めてスピーディーだ。
  
  　架空の寄生虫だけに、何でもあり。もはやSFかもしれない。このシーンは映像で見たくない。危機一髪で駆けつけた2人と1匹。よくもまあそんな手段を…。警察がその場の処理はするというが、こんな事件をSNS時代に封じ込めることができるのか？
  
  　敵方の最後の奥の手は、あまりにもおぞましい。なるほど、そんなところが伏線だったとは。伏線の張り方も回収も見事で、この点に関しては本格ミステリ作家らしい。トカゲの尻尾にされてしまった彼は、少々気の毒な気はするが…。
  
  　それにしても、麻薬を扱うヤクザの方が、まだ人道的ではなかろうかと思ってしまった。実用化されたら福音だろうけども…。最後の一文が意味するものとは。締め方まで石持さんらしくなく、うまい（失礼）。

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  投稿日：2019.04.26

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  youkeypp

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  いつもの彼の作るストーリーではないけど,途中途中に「論理」は用いられている。でも、もうちょっと理屈っぽいのが好き。

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  投稿日：2020.06.01

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