ギンイロノウタ(新潮文庫)
作品情報
極端に臆病な幼い有里の初恋の相手は、文房具屋で買った銀のステッキだった。アニメの魔法使いみたいに杖をひと振り、押入れの暗闇に銀の星がきらめき、無数の目玉が少女を秘密の快楽へ誘う。クラスメイトにステッキが汚され、有里が憎しみの化け物と化すまでは・・・・・・。少女の孤独に巣くう怪物を描く表題作と、殺意と恋愛でつむぐ女子大生の物語「ひかりのあしおと」。衝撃の2編。
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商品情報
- シリーズ
- ギンイロノウタ(新潮文庫)
- 著者
- 村田沙耶香
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2014.01.01
- Reader Store発売日
- 2019.03.01
- ファイルサイズ
- 0.6MB
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この作品のレビュー
平均 3.5 (37件のレビュー)
-
村田沙耶香氏の『授乳』『マウス』と続く3作目の中長編小説。本書『ギンイロノウタ』で村田沙耶香氏は2009年、野間文芸新人賞を受賞している。
本書は『ひかりのあしおと』『ギンイロノウタ』といずれも思春期…特有の不安定な少女の心情を綴った珠玉の中編作品2篇で構成されている。
僕は『コンビニ人間』『消滅世界』で村田沙耶香の虜になり、そして処女作『授乳』から時系列順に本書まで読みすすめてきた。
村田沙耶香作品の割には読みやすかった前作『マウス』とは打って変わって、本書はまさに「クレイジー沙耶香」節が炸裂している2篇が収録されている。
僕にとって本作は5作目の村田沙耶香作品となり、だいぶ「クレイジー沙耶香」への耐性が付いてきたので、この作品にも何とか、かろうじてついていくことができるようになったのだが、全く村田沙耶香について知識のない読者がいきなりこの『ギンイロノウタ』を読んだら、普通に
「・・・この作者、頭おかしいね・・・」
と一言で終わらせてしまうくらい本書は狂気に満ちている。
そういう意味においては、本作品はかなり『難易度の高い』村田沙耶香作品であることは間違い無い。
この二つの物語のあらすじだが、
一作目の『ひかりのあしおと』は、小学生のころに女子トイレに閉じ込められた経験がトラウマとなり、周囲の人たちと馴染めずに自らの価値観で生きている女子大生・誉とその前に現れた同じ大学に通う男子大学生の蛍との奇妙な交流を描いている。
二作目の『ギンイロノウタ』は、幼稚園児の頃に手に入れた金属製の指示棒(学校の先生が授業などで使う伸縮するアンテナみないなヤツね)を魔法少女が使うステッキに見立てて、中学生になってもそれを大事にしている有里。そんな彼女が中学生の担任の先生を殺すことに興味を持ち始めるまでの狂気の過程を描いている。
という感じだ。
どちら小説も『若者のさわやかさ』や『若者の特有のはち切れるような元気さ』とは全くかけ離れた、思春期の少女の狂気の内面をドロドロと、そしてデロデロと、はっきり言ってビチョビチョと描く、あまりにも気持ち悪い作品である。
村田沙耶香作品の特徴でもあるのだが、この作品でも女性の『性』の部分が極めて異質かつ特異に描かれている。もう僕たち男にはちょっと理解できない範疇にまで達している。
ここまで描写されると「男性だから興奮するだろう」とか「女性の内面を見れて嬉しいでしょう」とか・・・・・・はっきり言って全くない。できれば知りたくなかったという気持ちの方が強いかもしれない。
特に表題作の『ギンイロノウタ』の主人公・有里が「初潮」を心待ちにし「初潮」を迎えることによって、少女を脱却し「大人の女」になることをごく当たり前に期待しているのだが、それが自分の期待通りでなかった時の彼女の落胆を描いている描写は、僕たち男にはちょっと想像が出来ない女性心理である。
そして『娘と母親』との関係のいびつさが描かれるのも村田沙耶香作品の特徴である。
一作目の『ひかりのあしおと』で描かれる主人公の誉とその母親「愛菜ちゃん」の関係は典型的であろう。
娘からも夫からも『愛菜ちゃん』と呼ばれる母親。
この『愛菜ちゃん』を形容する言葉はもはや「可愛い」という言葉しかなく、この『愛菜ちゃん』に勝てる可愛らしさを持ったものといえば、ふわふわの毛皮をまとった小動物くらいしか見当たらないというその異常性。
誉が「初潮」を迎えたとき、母親の『愛菜ちゃん』が娘に向かって「誉ちゃんは大人になったんだね~。私はまだなんだ~」というセリフが当然のことのように思えてしまうくらいの存在である母親。あまりにも倒錯的な世界である。
村田沙耶香作品を読んでいると、もはや同じ人間の営みを見ているというよりも、読者である自分たちが、まるで異星人か地底人かなにかで「地球に住んでいるという『人間』と名付けられた生物」の生態を高性能カメラで撮影したドキュメンタリー作品を見せられているような気分になるのである。
では・・・、毎度同じことを自分に問うのだが、
じゃあ、村田沙耶香作品は嫌いなのか?
と問われれば、
・・・嫌いじゃない。むしろ大好きである
と自信を持って答えられる。
それほど、村田沙耶香作品の魅力はある特定の人間の心をドラッグのように蝕んでいくのだ。
そう、まさに当てはまる言葉は『中毒』だ。
この美しい村田沙耶香の文章によって紡ぎ出される、この異常な世界。
この倒錯した世界観に丸ごと取り込まれる、この快感・・・。
・・・・・・そして僕はもう後戻りのできないところまで進んでしまったに違いないのである。続きを読む投稿日:2019.10.17
極端に臆病な幼い有里の初恋の相手は、文房具屋で買った銀のステッキだった。アニメの魔法使いみたいに杖をひと振り、押入れの暗闇に銀の星がきらめき、無数の目玉が少女を秘密の快楽へ誘う。クラスメイトにステッキ…が汚され、有里が憎しみの化け物と化すまでは…。少女の孤独に巣くう怪物を描く表題作と、殺意と恋愛でつむぐ女子大生の物語「ひかりのあしおと」。衝撃の2編。続きを読む
投稿日:2021.01.30
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