- 最新巻
君は月夜に光り輝く +Fragments
佐野徹夜(著者)
/メディアワークス文庫
作品情報
不治の病「発光病」で入院したままの少女・渡良瀬まみず。余命ゼロの彼女が、クラスメイトの僕・岡田卓也に託したのは「最期の願い」の代行だった。限られた時間を懸命に生きた、まみずと卓也の物語の「その後」とは――。「僕は今でも君が好きだよ」少しだけ大人になった卓也と、卓也の友人・香山のそれぞれが描かれていく。他、本編では語り尽くせなかった二人のエピソードも収録。 生と死、愛と命の輝きを描き、日本中を感動に包み込んだ『君月』ワールドが再び。
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商品情報
- シリーズ
- 君は月夜に光り輝く
- 著者
- 佐野徹夜
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- メディアワークス文庫
- 書籍発売日
- 2019.02.23
- Reader Store発売日
- 2019.02.23
- ファイルサイズ
- 2.3MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 3.5 (26件のレビュー)
-
この『+Fragments』は、本編『君は月夜に光り輝く』のヒロインの渡良瀬まみずが主人公の岡田卓也に出会う前の内容や、ヒロインの視点から本編を描いたもの、そして岡田卓也のその後など中短編6編からなる…一冊です。ちなみに「fragment」とは、「破片、断片、かけら、断章、未完遺稿」という意味ですね。
どの収録作品も本編『君は月夜に光り輝く』を読んだ人には楽しめるんだけど、ここで一番言いたいのは
香山彰を主人公にした本編のその後を描いた書き下ろし中編『ユーリと声』が傑作すぎる!!!
ということです。
香山彰は岡田卓也の友人で元クラスメート。ヒロインの渡良瀬まみずが初恋の相手で岡田とは恋のライバルでした。
しかし、勇気を持って入院中のまみずに告白するも、まみずに暗に「岡田君が好き」と言われ、あえなく玉砕。それから、まみずの死を消化できないまま時間を過ごし、今は大学生となっています。
香山はまみずを失ってから無気力で自堕落な学生生活を続けていたのですが、大学の音楽室で謎の女性・侑李と出会い、彼女の不思議な雰囲気に惹かれます。
実は、侑李はまみずと同じ「発光病」で夫を失っており、かなり精神を病んでいる女性でした。そして侑李の小学生の娘「声」(『声』っていうのが娘の名前です。もう、作者のセンス半端ないって!)は、父親を失い、精神の均衡を無くした侑李という母親を持ちながらも、健気に生きています。
実の兄を交通事故で失い、さらに初恋の女性まみずを「発光病」で失っている香山ですが、自分より精神が壊れているこの母娘を前にして非常に動揺します。
香山、侑李、声の三者三様の3人がそれぞれ複雑な人間模様を繰り広げるのですが、なぜか香山は侑李から娘の声の面倒をみることを押しつけられ、香山と声の不思議な関係が始まるのです。
と、あらすじはこんな感じなのですが、とにかく兄の死、そしてまみずの死を全く消化できていない香山の心理描写が秀逸なのです。
香山は、渡良瀬まみずの親兄弟でもなく、岡田君のようにまみずの彼氏でもない。
香山は
「自分は、まみずのことを悲しむ資格のある人間ではない」
と思い込んでおり、まみずへの想いを今でも引きずりまくっています。
侑李や声と出会ったことによって少しずつ変化していく香山の病んだ心の描写がきめ細やかに描かれており、この人間の心の機微の表現は、恋愛エンターテイメント・ライトノベルではなく、完全に『純文学』の域に達しています。
極論を言えば、この『ユーリと声』を読むためだけに本編『君は月夜に光り輝く』と『+Fragments』を読んでも良いくらいだと僕は思っています。
ただひとつ気になるのは、この書き下ろし中編『ユーリと声』は本編の本来の読者層であるヤングアダルト層にとってはちょっと難易度が高いのじゃないだろうかということですね。
本編の『君は月夜に光り輝く』やこの『+Fragments』を手に取っている読者って、美しく、キラキラしたラブストーリーを期待しているから、この香山や侑李や声の、どちらかというと陰鬱な精神状態の微妙な変化を味わう物語を読まされても、
「なにこれ~?まず、香山って誰だっけ?香山が侑李と恋愛するって話でもないし、意味分かんない。ていうか~、香山のクズ男っぷり最低~」
というのが多くのヤングアダルトの素直な感想なのじゃないだろうかと思います。
まあ、こういう感想が出てくるのは致し方ないのかなぁ。
特に未来に『夢』と『希望』しかないヤングアダルトからはね・・・。
彼らも10年後にもう一度この作品を読んでみたら、たぶん違う感想を抱くようになると思います・・・きっと(遠い目)。
この作品は作者がそれなりの大人の読者の為に、
【・・・そなた達、いい歳してよく恥ずかしげもなく、ここまで読み進めてこられたな。褒めて進ぜよう。では、ここまで来たそなた達のような勇者な読書人の為にこのストーリーを授けよう・・・】
といって、この『+Fragments』に特別に入れてくれた物語なのだから(真顔)。
・・・なんだか、勝手に一人で盛り上がってしまいましたが、実際、この中編小説『ユーリと声』の完成度は、是枝裕和監督に映画を撮ってもらって、カンヌ映画祭に出品したら『ある視点作品賞』を受賞できるレベルです(「パルム・ドール」って言わないところがちょっと本当っぽいでしょ?)。
という訳なので、もし、このレビューを見ているその方面の先生方がいれば、ぜひ是枝裕和監督へのオファーをよろしくお願いしますね!なんちゃって。続きを読む投稿日:2019.06.20
『君月』というのを読みたくて借りた。どうやら、間違えて借りたらしい。
本編の方の知識なしで読んだけど、楽しめた。
投稿日:2024.02.17
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