地球星人
この作品のレビュー
平均 3.4 (155件のレビュー)
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村田沙耶香作品をこよなく愛する僕にとってこの本を読了してしまうといことはある種の寂しさを感じてしまうのだ。
というのも、この『地球星人』を読了してしまったことで、僕は現時点で単行本としての形で出版され…ている村田紗耶香作品(小説)を全て読了してしまったことになるからだ。
今の時点、つまり令和2年8月の段階では、単行本としての最新作は『丸の内魔法少女ミラクリーナ』だが、単独長編としては本作『地球星人』が最新作である。
本書『地球星人』であるが、村田紗耶香ファンにとっては、納得できるキレっぷりの出来栄えである。
村田紗耶香ワールドを愉しめる人ならば、本書に直ちにのめり込めるだろう。
ただ、もしこの本から村田紗耶香作品に入ろうという方には、本書はいささか強烈すぎるかもしれない。
例えるならば小学生の野球チーム相手にメジャーリーグのピッチャーをいきなり登板させるようなものなので、僕としてはおすすめはできない。
村田紗耶香作品の初心者ならば芥川賞受賞作の『コンビニ人間』やスクールカーストや自分の生き方に悩む女性の細かな心理を描いた秀作『マウス』などから入るのがよいだろう。
本書『地球星人』は、主人公の小学5年生の女の子が成長していく過程で感じていく「ある違和感」を極限まで突き詰めていくという壮大な物語であるが、まさに村田紗耶香ファンの期待を裏切らない『クレイジー沙耶香』要素満載の小説となっている。
本作『地球星人』は、今までの村田紗耶香がテーマとしているものを全て網羅している小説だと言っても良いだろう。
言い方を変えれば、本書は『コンビニ人間』の続編であり、『消滅世界』の続編でもあり、短編の『生命式』や『殺人出産』『トリプル』のパラレルワールドで起こった出来事であるとも言えるかもしれない。
村田紗耶香作品の普遍的なテーマといえば、
○『普通』とは何か?
○『性』や『家族』の在り方とは?
○『生』と『死』とは何か?
ということになるかと思う。
コンビニで働くことでしか自分の存在意義を見つけることができない女性の姿を描き、芥川賞を受賞した『コンビニ人間』では、読者に『普通』とは何か?ということを鋭く突きつけた。
また「セックス」がなくなり、女性でも男性でも妊娠が可能となった世界を描いた『消滅世界』では、『性』とは?『生殖』とは何か?ということについて深く考えさせられた。
男女2人の「カップル」ではなく、男女3人で行う性行為がごく普通となった世界を描いた短編作品『トリプル』では、人間社会の性の在り方の新しい方向性を見せつけられた。
そして「亡くなった身内の肉体を料理し、その肉を食べることによってその人を弔う」という風習が当たり前となった生活を描いた『生命式』や「10人子供を出産すれば、誰でも1人殺すことができる権利を得られる」という社会を描いた『殺人出産』などの作品では、我々に「生と死」とは何か?という素朴すぎる疑問を思い起こさせた。
本作『地球星人』の主人公は、小学5年生の女の子・奈月とその幼馴染である由宇、そして大人になった奈月が結婚する相手の智臣の3人だ。
彼ら3人の生き方を通じて僕たちの世界観がいかに偏った固定観念の基に成り立っているかをまざまざとみせつけられる。
この本書の世界観を最も端的に表した文章が、奈月の以下の二つのセリフに凝縮されている。
『ここは巣の羅列であり、人間を作る工場でもある。
私はこの街で、二種類の意味で道具だ。
一つは、お勉強を頑張って、働く道具になること。
一つは、女の子を頑張ってこの街のための生殖器になること。
私は多分、どちらの意味でも落ちこぼれなのだと思う。』
『世界は恋をするシステムになっている。
恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。
システムが先なのか、恋が先なのか、私にはわからなかった。
地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作り上げたのだろう、
ということだけは理解できた。』
本書を読むと、現在僕たちが生きるこの社会とは「全く別の世界」があるのかもしれないということを容易に想像させてくれる。
村田紗耶香という女性は、僕らとは違う価値観を持っているというよりも、この世界とは「異なる価値観を有する」と「こちら側の世界」とを自由に行き来できる能力を持っているのではないだろうか。
いや、むしろ
「こちら側の世界」に誤って迷い込んでしまったパラレルワールドの住民なのだ」
と言われたほうが僕たちには理解しやすいかもしれない。
そんな彼女の描く世界を堪能する愉悦は何ものにも換えることはできない。
だからこそ、僕は、こんなにも彼女の作品の魅力に取り憑かれてしまうのだ。続きを読む投稿日:2020.08.08
こりゃまた、、、。大変な本ですね。筆致は面白くてノンストップだったけど、最終コーナー回ったら置いてきぼりになった。笑笑
投稿日:2021.02.12
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