誰かが私をきらいでも
及川眠子(著)
/ワニの本
作品情報
はじめに たとえ今が生きづらくてもいろんなところで目にする、生きづらいって言葉を。迷ったり悩んだり足掻いたりする以前の、もっと曖昧な「ここは自分のいる場所ではないんじゃないか」という思い。そして「生きていてもいいのか」という疑問。何かが足りなくて、何かがはみ出して、世の中をうまく泳げないでいる。そんな人たちが多い。私もかつて生きづらさを抱えた人間のひとりだった。それこそ息をするのも苦しかった時期がある。人を傷つけ、同時に自分も傷つき、そして血を流している身をほじくるみたいに私は詞を綴り続けた。少しずつ傷が癒えても、そのかさぶたをまた爪で剥がし、とことんまで自分を抉えぐり出す。そんなことばかり繰り返してきたような気がする。それが生きづらさと闘う自分で、かつ生きていることの証しだった。いつからだろう、ちゃんと息ができるようになったのは。ガラスのように繊細で、ナイフのように尖っていた少女は、時が経つうちに、生きにくいも生きやすいもクソもねえ、とにかく自分を生きていくだけなんだよと腹をくくったおばさんに進化した。おばさんになればなるほど楽になる。増加する体脂肪と反比例して、心はどんどん軽くなるのだ。そして、ふと立ち止まって考えたあるときに、そのしんどさはたぶん「人にきらわれるのが怖い」という気持ちから来ているのではないかと気づいた。誰だって人に好かれたいし評価されたい。それ以上にきらわれるのはイヤだ。かと言って、きらわれずに済むように適当に人に媚びて、嘘でもいいから口当たりのいい言葉を言って、うまく付き合っていくなんてなかなか難しい。どんな人にでも「自我」があるから。でもね。これもまたあるときに気づいた。自分が100人の人(学校に例えると3クラス分くらい)を全員同じように好きになることができないように、100人全員に好かれることはできない。もし誰にもきらわれない人がいるなら、それはみんなに好かれているということではなくて「興味を持たれていない」ことなんじゃないだろうか、と。100人の中には敵がいる。でもきっと味方もいる。きらわれることの恐怖感から抜け出せたら、何となくだろうけど、世界は変わり始めると思う。そのきっかけがどこにあるのか、私自身も具体的にこうだったということを思い出せない。ただ、いくつものさりげない出来事を重ねて今に至っているのだろう。人生は決して楽ばかりではない。だけど言い換えれば、そのしんどさ自体が生きている証拠でもある。悲しみがあるから喜びの値打ちがわかるように。人生はいつだってプラスとマイナスの両方でできている。おばさんになった私は、そう実感している。大丈夫だよ、生きていていいんだよ。あの頃の自分にそう言ってあげたいがために、私はこれを記したのかもしれない。そして、誰かの心の小さなトゲを、たとえひとつでもいい、抜いてあげることができたなら、それもまた私にとって今まで生きてきた意味だとも思える。
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商品情報
- シリーズ
- 誰かが私をきらいでも
- 著者
- 及川眠子
- 出版社
- ベストセラーズ
- 掲載誌・レーベル
- ワニの本
- 書籍発売日
- 2019.01.16
- Reader Store発売日
- 2019.01.16
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
人にきらわれることの恐怖感から抜け出せたら、世界は一気に変わり始める。たとえ誰かにきらわれていたとしても、世界でたったひとりのあなたを愛してあげて-。生きづらさを抱える大人女子に、自分を信じる方法を伝…える。
そうなれればいいんだけど。続きを読む投稿日:2019.07.15
このレビューはネタバレを含みます
個人的には少し方向性が違うと感じる考え方もあったけど、物事に対して、真正面から向き合って受け止めて認める、ということをもっとじぶんごとに考えなきゃと思った
レビューの続きを読む
わたしは老いていくことを、自分がおばさんに…なったって表現したくない
自分をおばさんっていうのも嫌
でももうこの歳になるとおばさんだし、逆におばさんって避け続けてることがおばさんを意識しすぎているようだと言われると確かに、、と思う
生きていくことは、理想の自分を本来の自分に軌道修していくこと
わたしは、それができてないから自分がすごく子供に感じるのかな
だから一人でもがいていつまでも高い理想にがんじがらめなのかな
わたしは昔はよく人に嫌われると思ってた
今はそんなことないけど
でも嫌われることもひとつのアイデンティティに感じていたのかも
そういう友だちにシンパシー感じたりしてたし
また少し時間が経ったら感じ方も変わるかな?
子供生まれたりしたら
続きを読む投稿日:2024.01.20
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