アメリカ経済 成長の終焉 下
ロバート・J・ゴードン(著)
,高遠 裕子(訳)
,山岡 由美(訳)
/日経BP
作品情報
「私が本書でもっとも衝撃を受けた章は、翻訳で「1920年代から50年代の大躍進:何が奇跡を起こしたのか?」と題された第16章である。1920年代までの技術革新がマクロ経済レベルで生産性を飛躍的に高める契機となったのが、何と1929年より始まった大恐慌と1940年代前半の大戦だったというのである。ゴードン教授は、こうした大恐慌と大戦の影響は、戦後の1970年まで米国の生産性を持続的に向上させてきたと主張している。ここで衝撃というのは、私を含めて多くの経済学者が、大恐慌や戦時経済を大きな負の供給ショックと捉えて、生産性向上の深刻な阻害要因と解釈してきたからである。確かに、大恐慌を契機に実施されたニューディール政策や莫大な戦争支出は、ケインズ経済学的な意味で経済刺激効果を生み出してきたが、それは、供給面ではなく、需要面を通じた効果とされてきた。それが、ゴードン教授によると大恐慌と大戦によって米国経済の供給サイドが飛躍的に改善されたというのであるから、私たちが持っていた常識を根底から覆す主張ということになる。」ーー齊藤誠一橋大学教授の解説からアメリカの生産性と経済成長に関する議論を一変させる傑作である。ロバート・ゴードンは、1870年以降、驚異的なペースでアメリカ人の生活が向上したことを時系列で描きつつ、それを可能にした大発明の恩恵は一回限りのもので、繰り返すことができないのではないか、という根本的な疑問を提起する。具体的で詳細な記述と効果的で明晰な経済分析を組み合わせることで、ゴードンは説得力ある主張を展開している。経済史の金字塔である。――ケネス・ロゴフ、『国家は破綻する』の共著者
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商品情報
- シリーズ
- アメリカ経済 成長の終焉 下
- 著者
- ロバート・J・ゴードン, 高遠 裕子, 山岡 由美
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2018.07.21
- Reader Store発売日
- 2018.11.27
- ファイルサイズ
- 10.8MB
- ページ数
- 592ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
【アメリカ経済 成長の終焉】
まず最初に、めちゃくちゃ面白かった。150年の経済を俯瞰すると見えてくる物語。以下、ただのまとめになっちゃったけど、そのコンセプトが一番面白い。
生活水準を測る上で取り…込みやすい一人あたり実質GDPは、イノベーションとそれに続く改善の影響を捉えられていない。なざなら、それは市場で取引される財産だから。生活の質の向上、例えば白熱電球が灯ること、内燃機関で移動が可能になることの変化は、実質GDPでは説明できない。
一方で、経済史を俯瞰する上で、同じレベルで示せる指標はない。そこで、イノベーションの影響を生産性の上昇も含めて考慮した成長は、どのような結果になるのか。
エジソンの白熱電球とベンツの内燃機関に代表される第二次産業革命とそれに続く改善が第一次(蒸気)、第三次(ICT)と比較して特異なのは、その影響先が人間の衣食住あらゆるものに波及したこと。電気を扱えるようになり、移動によりネットワークが形成されたことで、生活水準が大きく向上した。
この観点からすると、第三次産業革命の波及範囲は通信・娯楽分野に集中しているため、生活水準向上への影響は相対的に小さくなる。今後も生活水準を今以上に向上させるイノベーションは見込めないことから、過去のような高い成長は見込めないため「Fall of growth」となる。
これからの先端技術では革命的に生活水準が向上することは起こんないんだなと、冷静に見る事ができるようになったように思う。続きを読む投稿日:2019.03.06
アメリカ経済 成長の終焉
第2部 1940年から2015年 黄金時代と成長鈍化の気配
第10章 ファストフード、合成繊維、分譲住宅 食料、衣服、住宅分野の変化の減速
はじめに
家庭内…での食事 1940年代にはすでに現代化
戦後アメリカの食品 緩慢な変化
食品販売業の歩み A&Pからホールフーズ・マーケット、トレーダー・ジョーズまで
レストランとファストフード
食べ物の問題 格差と肥満
第二の必需品、衣服の進化の減速
レヴィットタウンからマックマンションまで 戦後の住宅に起きた変化
住宅設備 量と質
郊外化とスプロール化
まとめ 狭まる進歩の範囲
第11章 シボレー、あるいは飛行機の窓からアメリカを眺める
はじめに
戦後の交通の変遷
品質と利便性が向上して影響力を増した自動車
自動車の燃費、安全性、信頼性
州間高速道路が実現した移動時間の短縮と安全
商用航空の歩み 小型複葉機スワローから777-300型機まで
航空運賃と規制緩和
消費者にとって、空の旅の質は低下した
まとめ
第12章 娯楽と通信 ミルトン・バールからiPhoneまで
はじめに
テレビの草創期
第二次世界大戦と、晩節をまっとうした旧メディア
テレビの黄金時代
テレビ時代の旧メディア
総天然色放送 テレビの質的変化
音楽に起きた変化
聞こえますか? 通信の拡大と機動性
ニュース
デジタルメディア 娯楽のカスタマイズ化と細分化
まとめ
第13章 コンピュータとインターネット メインフレームからフェイスブックまで
はじめに
技術の革命とムーアの法則の死
大きいことはいいことだ メインフレームと初期のネットワーク
まず職場に、つぎに家庭に広がったコンピュータ革命
インターネット革命から社会革命まで
eコマース アマゾン革命
まとめ
第14章 抗生物質、CTスキャン、そして保健と医療の発達
はじめに
余命と死亡率の変化
戦争からの治癒 戦後初期のイノベーション
関心の変化 慢性疾患の撲滅運動
人々の健康意識の変革
事故と暴力
医療専門家の変化
医療分野におけるエレクトロニクス、テクノロジー、最新イノベーション
病院 科学と無駄を象徴するピカピカの宮殿
長くなった余命の価値をはかる
余命の伸長率を上回るほどの生活水準の向上
医療費
まとめ
第15章 職場と家庭の労働環境、若者、退職後の暮らし
はじめに
農場や工場からオフィスのデスクへ 賃金の上昇と労働環境の改善
女性の革命 リベット工のロージーからベビーブーム期の主婦、そしてホワイトカラーの専門職へ
大学へ 大学教育の普及と恩恵、授業料の高騰
年金天国 退職と高齢者のライフスタイル
まとめ
第3部に向けて 成長の減速をどう理解するか
1970年以降のまちまちの成長
1970年以降、小さくなったGDPの計測誤差
成長の加速と減速の要因
第3部 成長の加速要因と減速要因
第16章 1920年代から50年代の大躍進 何が奇跡を起こしたのか?
はじめに
どれだけ躍進したのか。生産量、労働生産性、労働時間
何が実質賃金を押し上げたのか?ニューディールと労働組合の役割
労働の質の役割 教育水準の向上
資本と全要素生産性 20世紀半ばの生産性の急上昇
大躍進の要因 大恐慌と第二次世界大戦による経済混乱
実質賃金の上昇
第二次世界大戦時の高圧経済
戦時施設
大躍進の長期的な要因 都市化、閉鎖経済、資本の質の向上
都市化と農業の衰退
移民と輸入
1920年代から30年代のイノベーションで、大躍進が説明できるか
まとめ 何が大躍進を可能にしたのか
第17章 イノベーション 将来の発明は過去の大発明に匹敵するのか
はじめに
歴史的に見たイノベーション 究極のリスクテーカー
長期的な推移 全要素生産性(TFP)の伸び率
第三次産業革命のこれまでの成果
第三次産業革命はほぼ終わったのか
ビジネス慣行の変化のスピード鈍化
小売業界の停滞
頭打ちの金融・銀行業務
家電
経済の活力の低下
経済成長の鈍化の客観的指標
製造業の生産能力
純投資
コンピュータの性能
ムーアの法則
将来のイノベーションは予測できるのか?
いま予想できる発明
医療と医薬品の進歩
小型ロボットと3D印刷
ビッグデータと人工知能
自動運転
まとめ
第18章 格差とその他の逆風 長期的なアメリカの経済成長の伸び悩み
はじめに
第一の逆風 格差拡大の諸相
下位90パーセントの所得層の賃金にかかる下落圧力
上位層での格差の拡大
格差拡大の要因としての教育
第二の逆風としての教育
第三の逆風 人口
第四の逆風 債務返済
所得分布の最下層での社会的変化
その他の逆風
まとめ 将来の生活水準向上のペースを予想する
あとがき アメリカの成長の到達点と今後の展望
成長率の低下 イノベーションと逆風
アメリカ経済の実力の概観
政策の変更により生産性を押し上げ、逆風に立ち向かう可能性
結果のさらなる平等に向けて
税体系の累進性
最低賃金
所得税免除
受刑率
薬物の合法化
機会の平等を高めるために
幼児教育
中等・高等教育
既得権を優遇する規制
人口と財政の逆風
移民
税制改革
財政課題
最後に
Princeton University Press「The Rise and Fall of American Growth: The U.S. Standard of Living Since the Civil War」 2016年1月
解説 齊藤誠
ゴードン教授の大著を読んで
万延元年の米国経済
GDP統計から漏れ落ちた技術革新の果実
恐慌、戦争、そして経済成長
これからの経済成長続きを読む投稿日:2023.12.18
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