センスメイキング――本当に重要なものを見極める力
クリスチャン・マスビアウ(著)
,斎藤栄一郎(翻訳)
/プレジデント社
作品情報
【内容紹介】
本書のテーマは「人」である。もっと具体的に言えば、文化に光を当てたものであり、我々の時代の揺り戻しを描いた書籍である。アルゴリズム全盛の今、我々の感性は麻痺しがちだ。
だが、目の前の課題を本気で読み解きたいのであれば、 こんな時代だからこそ、昔からある時代遅れと思えるようなやり方に回帰すべきなのである。それは、あらゆる組織で、あらゆる日々のやり取りの中で甚だしく失われてしまったもの、つまりクリティカル・シンキング(批判的思考)である。だが、そのやり方自体は、決して革命的でも最先端でもないのだ。
【著者紹介】
[著者]クリスチャン・マスビアウ(Christian Madsbjerg)
ReDアソシエーツ創業者、同社ニューヨーク支社ディレクター。
ReDは人間科学を基盤とした戦略コンサルティング会社として、文化人類学、社会学、歴史学、哲学の専門家を揃えている。マスビアウはコペンハーゲンとロンドンで哲学、政治学を専攻。ロンドン大学で修士号取得。現在、ニューヨークシティ在住。
[翻訳者]
斎藤栄一郎(さいとう・えいいちろう)
翻訳家・ライター。山梨県生まれ。早稲田大学卒。
主な訳書に『1日1つ、なしとげる』、『イーロン・マスク 未来を創る男』、『SMARTCUTS』、『ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える』(以上講談社)、『小売再生 ―リアル店舗はメディアになる』、『TIME TALENT ENERGY』(以上プレジデント社)、『フランク・ロイド・ライト最新建築ガイド』、『テレンス・コンラン MY LIFE INDESIGN』(以上エクスナレッジ)などがある。
【目次抜粋】
はしがき 思考の終焉
序 ヒューマン・ファクター
第一章 世界を理解する
第二章 シリコンバレーという心理状態
第三章 「個人」ではなく「文化」を
第四章 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
第五章 「動物園」ではなく「サバンナ」を
第六章 「生産」ではなく「創造性」を
第七章 「GPS」ではなく「北極星」を
第八章 人は何のために存在するのか
出典
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この作品のレビュー
平均 3.4 (35件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
このところ人文科学を見直す流れをよく見聞きするので気になり読んでみた。
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確かに1990年代以降、我々も身近にITを感じるようになり、自然科学万能感を感じている。イノベーションはシリコンバレーから生まれ、その土壌には自然科学がある。データが全てを物語り、すべての問題はITで解決できる。そんなイメージを持っている。
でも著者によるとそんなものは幻想で、本当に大切なものを見出すには自然科学の力だけでは不十分だという。そこで役に立つのがセンスメイキングという手法で、そのために人文科学が役に立つという話。
自分には小学生の子どもがいるため、こどもの将来を考えると昨今話題のSTEMをやるべきかなと思っていたけど、ちょっとここで考えを改めたほうが良いのかもしれない。
STEMは速効性があり、実用的なものかもしれないけど、自然科学だけではイノベーションは生まれない。人間にしかできないこと、そう考えると人文科学なのかもしれない。
こどもの今後、自分の今後を考えるうえで大変参考になった。
哲学的な文章が多く、私は読むのに時間がかかってしまったけど、著者が実際にコンサルに入った事例など面白く読めた。
特にフォードのリンカーンコンチネンタル再生の話や、ナパバレーのワインの話、生命保険会社がシニア層にフォーカスし始めたの話、食品スーパーに人々が求めているものの話、イラク戦争中の人質開放の話(クリス・ボス)、そしてオーデマピゲ博物館の話(ビャルケ・インゲルス)など。
中でもオーデマピゲの設計には感嘆した。オーデマピゲ社の歴史、技術、ブランドメッセージ、ブランドイメージ、博物館の周辺の景観など、何一つ犠牲にすることなく、全てを調和させてあの建築に昇華させている。しかも本当に必要な部分以外は削ぎ落とされ、極限まで抽象化されている。オーデマピゲを取り巻く文化へのリスペクトが感じられる。美しいだけでなく全てがパーフェクトにハマりすぎていて、神の存在を感じずにはいられない。
私の解釈では、たぶん、こういう神を感じるような仕事に必要なのがセンスメイキングなんだろうと思う。
それからもうひとつ興味深かったのがデザイン思考のくだり。個人的にはコンサルの方法として、センスメイキングとデザイン思考は近いと思っているのだけど、著者はこれにかなり否定的。かなりディスっている。
デザイン思考で問題を解決する際、着目するのはユーザーの挙動や行動で、センスメイキングではそれが思考や文脈という違いはある。だからといって、デザイン思考が思考や文脈、文化を無視しているわけではない。挙動や行動を十分に観察したあと、思考レベルや文化レベルまで掘り下げて考察されるものだと思う。
著者は相当嫌な思い出があるのか!?デザイン思考を敵視しているけど、十分相入れる考え方だと思し、自分はどちらも使っていきたいなと思っている。
以下、読書メモ
・理系のトレーニングを受ければ、基本的には新卒就業時に人並みの職に就き、よい収入を手にするが、突出した高収入者(経営者など)、ガラスの天井を突き破る力のある人々、世界を変えるような人々は、教養学部系の学位を持っている傾向が強い。
・真の天才とは、不確定で危険な、相矛盾する情報を評価する能力にある。
ウィンストン・チャーチル
・センスメイキングとは、人文科学に根ざした実践的な知の技法である。(アルゴリズム思考の正反対)
・センスメイキング5原則
1.「個人」ではなく「文化」を
2.単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
3.「動物園」ではなく「サバンナ」を
4.「生産」ではなく「創造性を」
5.「GPS」ではなく「北極星」を
・マルティン・ハイデガー
存在者が、了解される際の基準となるもの
(日常の暗黙の了解事項を「存在」と呼ぶ)
・厚いデータは、単なる事実の羅列ではなく、事実の「文脈」を捉えている(背景、理由)
・自己定量化(QS)ムーブメント、ビッグデータ教
・本物の世界は複雑で美しい
・アルゴリズムは客観、センスメイキングは主観
・万物の知識を身につけるのではなく、物事の意味を見出すことが大切
・何らかのメッセージが込められた全体的なデザイン→デザインランゲージ
・意味の連なりが大切(コーラを飲むのは爽やかさを味わいたいからで、それは仕事をもうひとふんばりするためで、それは成功したいからで、それは愛する家族を支えるため)
・フォードはメーカーからサービス企業へ
・レゾンデートル→存在理由
・ジョージ・ソロス
厚いデータ(人文科学)で市場を読む
・知識の種類
客観的知識
主観的知識
共有知識→文化、社会、ムード
五感で得られる知識
・知識とパターン認識の融合
・経験を踏まえた現実への主体的な関わり、他者の立場になって理解する力、状況に対する神経の細やかさ
・金融の教養
デフォー
バルザック
ディケンズ
・ゴールドマンサックスの稼ぎ頭 商品取引部門>外為部門
数学モデルを使わない
・現象学
・55歳 老いのターニングポイント
人生に新たな意味を見出すべきか
・共感力
他者の世界観や文化的視点を感情と知性の両面で理解するスキル
・表舞台でのパフォーマンスの成否は、裏舞台でのプライバシーと息抜きにかかっている(アーヴィング・ゴッフマン)
・ビクトリア時代の価値感(倹約、慎ましさ、社会的階級)
→余暇(大衆娯楽)と移動
・アイデアの出し方
まずは徹底的にその世界に没入する、そして一日間その世界から離れて人生を楽しむ、すると余分なものが削ぎ落とされて素晴らしいアイデアを授かる
・オープンな状態でいる(禅でいう無のようなもの)
・米国海軍兵学校は天測航法の課程を廃止し、GPSと衛生の技術を柱としたトレーニングに置き換えたがハッキングの脅威を懸念してその決定を覆した
・センスメイキングには関心が必要
関心がなければ、「正確さ」がすべてであって、「真実」はなくなってしまう。
・ワインに関して素敵だなと思うことはいろいろありますが、その一つは、ワインが時間と場所を物語っていて、しかも、時間と場所を物語りながら、前に進んでいるということなんです。(キャシー・コリソン)
・交渉は感情制御能力です。相手方の感情をうまく誘導できるかどうかで成否が決まります。(クリス・ボス)
・アクティブリスニングが必要
・人は何のために存在するのか?
人は、意味をつくり出し、意味を解釈するために存在するのだ
そのトレーニングに最適なのが人文科学
・スキル獲得の段階
初心者レベル(文脈に依存しない要素について判断する。情報処理。)
新人レベル(これまでの経験に基づいてパターンを認識し、その場の状況に応じた判断ができる。)
一人前レベル(目の前の状況に最もふさわしい要素を優先して検討できるように、階層構造の意思決定手順が必要。)
中堅レベル(迅速で流動的で複雑な行動が可能になる。過去の経験の蓄積から浮かび上がるパターンを認識できる段階)
達人レベル(あまりに複雑な処理で、頭で考える余地はほとんどなくなる。状況判断の際、分析のための要素の分解や組換などを意識的に行わない。)投稿日:2019.11.13
ビジネスなどにも哲学やアートが必要というのは賛同する。この本自体もセンスメイキングな(腹落ち感のある、と訳せばいいのか?)印象があった。STEMにはアートはないが、STEAMにはアートがあるからこの点…は一定程度クリアしてるのでは?と感じた。進んだアメリカの事例だから日本にどこまで当てはまるのかは一考の余地あり。あと、やや同じ表現が長いかな。
デザイン思考の批判は興味深く読んだ。顧客第一主義の落とし穴とでも言えばよいのかもしれない。なお、フォードのマーク・フィールズはあまり結果を出せずに退いたと理解しており、彼を称賛している箇所は説得力が弱いと感じた。続きを読む投稿日:2023.04.29
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