この作品のレビュー
平均 4.5 (32件のレビュー)
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みなさんのレビューで気になった本。小説以外の本はあまり読まないのだが、興味深い内容で楽しめた。
『枕草子』というと『春はあけぼの』など、幾つかの文章を遠い昔に授業で覚えただけの薄っぺらい知識しかない…。イメージで気位の高い知識人のおばさま女房が宮中での日々を綴ったエッセイと思っていたが、この本を読んで変わった。
また作者・清少納言が仕えた中宮・定子についても後に入内する藤原道長の娘・彰子のライバルくらいの、これまた薄っぺらいイメージしかなかったのだが、この本を読むと何と波乱と悲劇の人生だったのかと驚く。
一条天皇に最初に嫁いだ后で父親は当時の権力者。帝との仲も睦まじく人生の絶頂期。しかし父親の急死により事態は一変。権力者は道長に取って代わり、后という立場は一気に揺らぐ。そこから更なる悲劇と変わらぬ帝の寵愛とに揺れ動く。
ざっくり書いただけでも映画やドラマになりそうなくらい波乱万丈だが、その定子に仕えた清少納言の立場もまた波乱続きだ。一時は出仕出来ないほど追い詰められ、その後も定子の境遇がどんどん侘しく辛いものになっていくのを目の当たりにするのだ。
『枕草子』は定子が辛い状況に陥った正にその頃に書かれ始め、定子亡き後も書かれ続けた。では『枕草子』は何のために書かれたのか。
『枕草子』では定子の辛い状況や道長への恨み言は殆ど書かれない。日々の徒然を面白おかしく、楽しいこと美しい瞬間、雅なエピソードで彩っている。『枕草子』の中での定子は嫁いだばかりの頃のように誰に憚ることなく帝と仲睦まじく過ごし、清少納言ら女房たちには優しくも時に知己や機転を鍛えさせてくれるよき主人であり、貴人と思えぬ積極性と茶目っ気を見せてくれる個性的で魅力的な女性だ。
紫式部の「絵空事ばっかり書いてるんじゃないわよ」という批判は当たっていたのだ。そこには切ないほど必死で健気な清少納言の思いがあった。
作者さんの解説を読むと、挿入される『枕草子』の数々の文章に清少納言の定子愛を感じる。それぞれのエピソードに清少納言の「こんな楽しいこと、面白いこと、幸せなことがありましたね」という定子への呼び掛けすら聞こえてきそうだ。
定子を楽しませるためなら清少納言は進んで道化の役もやるし恥ずかしいエピソードも披露する。定子の前では気位の高いオバサンではない。
こんな魅力的な定子という女性を描いた『枕草子』は、何故時の権力者・藤原道長に握りつぶされなかったのか。
その第二の問は言われるまで気付かなかった。まあ定子の境遇と『枕草子』が書かれた理由を知らなかったからなのだが。
だが言われてみれば確かにそうだ。長い歴史の中で、常に文書は後の権力者の都合に合わせて作られ、都合の悪いものは改竄され潰される。そこにも第一の問同様、清少納言の巧妙な「絵空事」戦術があった。
とは言え、娘の小馬命婦をちゃっかり彰子に仕えさせている辺り、親としての心情は別なのだなと思ったりする。
道長の世は当面続きそうだから彰子に仕えていれば娘は食いっぱぐれはなさそうだし、上手く行けば良い男を掴まえられるかも知れないし。なんて考えていそう。
凋落後は道長派からの露骨な嫌がらせを受け続け、周囲からも距離を置かれ不遇なままだった定子が、崩御後は手のひら返しで気の毒がられたり恐怖の対象になったりというのは、現代でも通じるところがあって興味深い。
そこにはこの時代ならではの、祟りや怨霊が本気で信じられていたという背景があったのかなと考えられる。だからこそ『枕草子』も守られたのではないかとも思う。
道長も晩年は多くの怨霊に悩まされていたと聞く。まぁ彼の場合、定子に限らず色んな恨み買っていそうだし。
これまた始めて知ったが『源氏物語』の桐壺の更衣は定子の境遇にそっくりとのこと。
紫式部が仕える彰子のライバル、定子をモデルにしたとしたならそこにはどんな思いがあったのだろう。立場を越えて、定子の境遇は紫式部の創作意欲を刺激するものだったのか。
それにしても作家さんは清少納言と定子が好きなのだな、と全編通じて感じた。まあどうしても悲劇的な方に肩入れしたくなるのは解る。続きを読む投稿日:2020.10.10
古典で見出しのみ習った程度の関わりだった枕草子が、本作読後は、定子が実際に平安の世を生き、人として存在した記録と色濃く思える。時政がわかり面白くはあるが、著者が後に出された、ひとり語りがあまりに読みや…すかったため、こちらは参考書感が否めない。続きを読む
投稿日:2024.02.10
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