北氷洋―The North Water―(新潮文庫)
イアン・マグワイア(著)
,高見浩(著)
/新潮文庫
この作品のレビュー
平均 3.2 (11件のレビュー)
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かなり、エグいです。暴力と性描写と血みどろの狩猟が数回あり。サバイバル好きで、それらにあるていど免疫あるかたなら、じゅうぶん楽しめると思います。
おびに「現代の白鯨」と書いてあり、「白鯨」読んだこと…ないのですが、問題なくおもしろかった。読んだことあるかたなら、比べたりしてもっと楽しめるのかも。
読みどころは、主人公たちの状況がどんどん悪くなるあたり。そして圧倒的な自然にかこまれたなかでの動物との命がけの闘い。描写が迫真でゾクゾクした!
過酷なものがたりですが、後味はけっして悪くない。全体のトーンが暗くなく、力強い。骨太のエンタメ小説です。
星一つ減らしたのは、もうひとひねり、サプライズがあればなあというのと、主人公が読んでいる本〔ギリシア神話か?〕と主人公の文化的背景が、いまひとつピンとこなかったので。
続きを読む投稿日:2018.10.28
1859年、イングランド。船医のサムナーが乗り込んだ捕鯨船ヴォランティア号には、いわくつきのクルーが集まっていた。前の船を沈没させた船長、野心家の航海士、スウェーデンボリ崇拝者のドイツ人、そして得体の…知れない銛打ちの男。実はサムナー自身も、従軍したインドでの苦い過去を隠していた。そして遂に、北氷洋を目指す船上で殺人が起こる。捕鯨ビジネスの斜陽期を舞台にした骨太なサバイバル小説。
前半はまっすぐ『白鯨』にオマージュを捧げた海洋ハードボイルドだと思って読んだ。露悪的なまでに血と排泄物と硝煙の匂いまみれでザラついた文体が魅力的(ヘミングウェイ訳者に依頼したのが大正解だと思う)だが、殺人の真相は読者には最初から明らかだし、さほど引っ張りもしない。サムナーが戦争と捕鯨船の地獄ぶりを比較する辺りが面白く、このパートが終わってしばらく中弛みを感じた。
船が沈み、船員たちが流氷の上に取り残されてからは展開の予想がつかなくなり、俄然面白い。特にドラックスの悪運の強さにはつい惚れ惚れしてしまう。この小説、「この男を見よ」という一行目と共に最初に登場するのがドラックスなのもあり、正直サムナーよりドラックスが主人公のピカレスクロマンという性格が強い。
だがドラックスが犬橇で去ってしまうと、不思議なかたちでサムナーが主人公の座に舞い戻ってくる。白熊との奇妙な追走劇の末、サムナーは死骸の腹を裂いて内臓に手を差し入れ、温かな血を飲み、最後には着ぐるみのようにその体内に入っていく。なぜ彼がそんなことをするのかは一切説明されない。この熊狩りの場面は幻想的で、文章にも張り詰めた美しさがある。
その後は司祭も登場し、宗教小説っぽくなってくる(そういえば先に引いた冒頭の「この男を見よ」は聖書の「エッケ・ホモ」の引用だろうけど、なぜそれをドラックスの紹介に使ったんだろう)。けれど、司祭館でそこそこにハートフルな日々を過ごした"何者でもない"サムナーがもう一度イングランドに戻ったとき、ドラックスにも劣らない残酷な復讐鬼へと変貌を遂げるのである。
ここがこの小説の面白いところだ。サムナーは独白のなかで自己正当化をしないので、行動原理がはっきりしないところもある。繰り返し見た過去の夢や、パニーとの行為に対する罪悪感が彼をドラックスに近づけたように思える。普通、終盤に聖職者との心の交流を描いておいてこんなラストスパートかけないと思う(笑)。それだけに、深淵を覗いてしまった人の不可逆性がどうしようもなく寂しいラストだ。
そして本書が捕鯨船を描きながらも、鯨ではなく白熊をど真ん中に据えた小説だったということも最後にはっきりする。序盤から振り返ってみれば、薬屋との会話にでてくる白熊の剥製。北氷洋でドラックスたちが捕らえた白熊の親子。サムナーが血を飲み、皮を着た白熊。最後に動物園の白熊。しかも、サムナーが行き着いたベルリンは熊が語源という伝説があり、紋章にも熊を掲げている都市である。ということは、やはりサムナーは白熊の代理として、流氷の世界の均衡を壊してしまった西洋の資本主義に復讐したのだ、というエコロジー小説として読み解くこともできる作品なのかもしれない。続きを読む投稿日:2022.03.23
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