保守と大東亜戦争
中島岳志(著)
/集英社新書
作品情報
戦争賛美が、保守なのか? ――戦中派・保守論客たちの真意と体験。評論家・保阪正康氏推薦! 歴史の継承は、本質を浮かび上がらせる。そう痛感させる、刺激的な書である。【おもな内容】戦前の日本の立場に積極的な意義を見出そうとし、第二次世界大戦を東アジア解放のための「聖戦」だったとみなす「保守」派。しかし、戦争を賛美することが、いつから「保守」になったのか? じつは、戦前日本において保守論客は、軍国主義に抵抗し、批判の論陣を張っていた。あるいは、兵として軍の欺瞞を目の当たりにし、壮絶な暴力を経験したことで、軍国主義・超国家主義に強い嫌悪感を示していた。すでに鬼籍に入った、戦中派保守たちが残した言葉に向き合いながら、いま、最も注目を浴びる政治学者・中島岳志が、現代において真に闘うべきものはなにかを炙り出す。 【目次】まえがき/序章 保守こそ大東亜戦争に反対だった/第一章 戦争に導いたのは革新勢力である/第二章 戦争への抵抗/第三章 軍隊での経験/第四章 戦中派保守 最後の闘い/終章 保守の世代交代の果てに/あとがき
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商品情報
- シリーズ
- 保守と大東亜戦争
- 著者
- 中島岳志
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2018.07.18
- Reader Store発売日
- 2018.07.20
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (16件のレビュー)
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保守が目指すのは、秩序を維持するための「永遠の微調整」(なるほど)、根拠なき空気が支配し、「威勢のいい無謀な議論の方が勝」つ(そうかもしれない)など、仕事場でも起こり得ることなので良く考えて行動しない…と思いました。続きを読む
投稿日:2018.12.22
★一つは少々辛いとは思うが、著者の今後に期待して敢えて苦言を呈したい。ちなみに評者は骨の髄まで保守的な人間である。近代保守思想の祖バークに遡って理性の濫用を戒め設計主義への懐疑を説くのはいい。だがそう…した態度はあくまで保守の「心構え」である。それが「原理」となり「主義」となっては保守は「頽落」する。
保守は理性を過信せず歴史の風雪に耐えた知恵や慣習を重んじるが、決して改革自体を否定しない。それが復古との違いであり、バークは自らを漸進主義者と呼ぶ。だが漸進主義は保守の真髄であると同時に躓きの石でもある。漸進と急進を分ける基準など何処にもないからだ。バークの思想を最も洗練された形で理論化したハイエクもその基準を示せなかった。つまり伝統を大切にしつつも、最後は自分の頭と感性で判断するしかないのだ。だが「リベラル保守」とやらは何の屈託もなく取り敢えず中間を選ぶ。中庸と言えば聞こえはいいが要するに思考停止だ。それが「主義」に堕した保守というものだ。確かに多くの場合中間で事足りる。歴史が巡航速度で進行する平時にはそれで大過ない。だが歴史は時に過去が参照基準となり得ない地殻変動を伴う。そこではもはや漸進も急進もない。あらん限り目を見開き、知性と経験と直観をフルに動員して、現実との格闘の中で解を見出し行動するしかない。おそらく中島氏にはそんな経験はないと見える。
国体概念を弄び急進的な改革を叫んだかつての青年将校と、観念としての平和を奉じる戦後の進歩的文化人が同根だという中島氏の指摘に半分は同意する。だが先の戦争を観念論の虜になった青年将校の暴走だけに帰するとすれば、それ自体が空疎な観念論だ。国全体が一部の軍人の思想に染まることなどあり得ない。彼らの挫折の後にそれでもなお戦争にのめり込んでいったのではなかったか。それを聖戦とみるかどうかは保守や革新とは関係ない。いろんな見方があるというに過ぎない。確かなことは、勝てない戦さと知っていた指導者はもとより、軍人を嫌悪した知識人も大衆も結局は流されたのだ。それが山本七平の言う「空気」だ。山本が批判したのは観念論自体ではなく、本気で信じてもいない観念論に不作為の同意を与える付和雷同と責任感の欠如だ。国の危機に当たって寛容だの中庸だの何ら指針たり得ない御託を並べるのは、体を張って「空気」に抵抗することを回避した知識人の自己欺瞞に過ぎない。中島氏にそれと全く同じメンタリティを感じる。
最後にもう一点。世代論を持ち出すことに必ずしも反対はしない。身をもって戦争を体験した世代の意見に耳を傾けることは大切だ。だが歴史のただ中にいる人間には見えないこともある。当事者には歪んで見えることもあるだろう。軍人への嫌悪や自らが被った理不尽な仕打ちから、その罪悪を過大視してはいまいか。戦争を直接経験しない一歩引いた世代だからこそ見えることもある。それは忘れるべきでない。続きを読む投稿日:2023.12.30
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