僕は、そして僕たちはどう生きるか
梨木香歩(著)
/理論社
作品情報
やあ。よかったら、ここにおいでよ。気に入ったら、ここが君の席だよ。染織家の叔父ノボちゃんから「コペル」とあだ名された十四歳の「僕」。親の事情でひとり暮らしをしている。ある朝、土壌生物を調べに行った公園でばったり会ったノボちゃんを連れ、小学校以来疎遠になっていた友「ユージン」を訪ねることになる・・・・・・。そこから始まる長くかけがえのない一日を描く青春小説。現代の「コペル」は考え続ける。──モラルが失われたこの時代に、周りに流されず、友との信頼を築いて生きるには──?電子化にあたり、植物等について後注26項目(著者監修)を追補しました。*梨木香歩一九五九年生まれ。作品に『西の魔女が死んだ』『裏庭』『からくりからくさ』『家守奇譚』『村田エフェンディ滞土録』『沼地のある森を抜けて』『この庭に』『f植物園の巣穴』『ピスタチオ』『海うそ』『岸辺のヤービ』、絵本に『ペンキや』『蟹塚縁起』『マジョモリ』『ワニ』、エッセイ集に『春になったら苺を摘みに』『ぐるりのこと』『水辺にて』『秘密の花園ノート』『渡りの足跡』『不思議な羅針盤』、 翻訳書に『哲学と子ども』『ある小さなスズメの記録』などがある。
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この作品のレビュー
平均 4.2 (192件のレビュー)
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1930年代に、若い読者へ向けて書かれた本書は吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」の15歳のコペル少年と錯覚してしまう。本作は、主人公・コペルが染織家の叔父ノボちゃんと共に疎遠になっていた親友・ユー…ジンの庭によもぎを取りに行った一日のことが物語となっている。
そして、その一日を共有した人たちが、それぞれの心に秘めている想い、考えを通し、作者が私たちに生きていく上での環境、社会について問題定義をしている。
それは、弱いものを従わせる力。リーダーの存在意義。集団の中での無言の強制力などを戦争、性犯罪、環境保護などの社会問題を背景に、自分たちの立ち位置を常に考えるように、また考えて続けることの重要性に訴えかけている。
つまりは、人が生み出す力の方向性を常に個々人がしっかりとした信念を持ち、理解していなければ、環境は、社会は想定外の方向に進んでしまうということを認識すべきであるということである。
本作の中に主人公・コペルの友人であるユージンが小学生の時に、飼っていたニワトリを担任というリーダーの力、クラスという集団の力に屈して、自分の意とは異なる経験を強いられた回想のシーンがある。この時、経験が、ユージンの居場所を閉鎖してしまう。また、それを意識していなかったコペル自身も、この日、過去の自分を悔いることになり、自分居場所を考えることになる。
ユージンの従姉妹のショウコが参加していたボーイスカウトでの先輩が犯罪をうける。その先輩も、それから自分の居場所を、閉ざしてしまう。
それでも、人間は群れの中でないと生きていけない。時に群れから離れたいと感じこともある。が、いつでも受け入れてくる群れ、自分の存在を認めてくれる群れを作ることが大切なのである。
そのことを考える続けることが、大切なのである。
そして最後の言葉に繋がる「生きるために、群れは必要だ。強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな『いい加減』の群れ。…『群れの体温』みたいなものを必要としている人に、いざ、出会ったら、ときを逸せず、すぐさま迷わず、この言葉を言う力を自分につけるために、僕は、考え続けて、生きていく。
やあ。
よかったら、
ここにおいでよ。
気に入ったら、
ここが君の席だよ」
いつもとは異なる梨木香歩氏を感じる作品であった。
ここ以降は余談であるが、「ボーイスカウト」の起源には、びっくりした。「ボーイスカウト」は、野外での活動を通じ子供に自主性、協調性、社会性、貢献性、リーダーシップの育成を目的とした集団活動の重要性を掲げているイメージで、その起源が組織軍隊であるとは、考えても見なかった。
確かに、言われてみれば、カーキ色の制服や野外での活動、キャンプなど軍隊での生活に通じるものがある。では、なぜ、「スカウト」と言うのかと不思議に思い調べたところ、このスカウトという言葉も軍部本隊との連絡を取り合う偵察隊役を意味する軍隊用語のようで、スポーツの世界で使用される「スカウト」とは、かなり異にする起源があり、驚いた。続きを読む投稿日:2020.12.20
このレビューはネタバレを含みます
色々な現代にある問題が、
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コペルの周囲や、友だちなど身近な存在の問題として語られ、コペルがそれらについて考えていく。
中心としては、集団の考えに個が押し潰されてしまう状況下(集団の圧力)に耐えきれず、…そこから距離をおいてひとりでならざるをえなかったコペルの周囲の人たちの話。
徴兵制、性的搾取、学校での安易な屠殺教育、ジェンダー、環境汚染など身近な問題からコペルは考えていく。そのなかで、自分が向き合えなかった問題に向き合い、自分の弱さを知る。
最後はやっぱり人には人(群れ)が必要なのだと思うにいたり、群れの温かさを必要としている人を受け入れられる人でありたいという思いで締め括られている。
感想
コペルや友人のユージンは中学生のはずだが、しゃべり方や思考の仕方が高い次元すぎてびっくりする!もちろん物語の中なんだけど!
最近よくニュースでも聞く問題が多く、身近に感じられる内容も多かった。ニュースで聞いているだけだと、その問題の表面しかわからないが、この本では、その渦中にいる人がぞくぞくとでてくるので、もし自分だったらどうするか、周囲にそういう人がいたら自分はどういう行動がとれるのかという視点でも考えることができた。続きを読む投稿日:2023.10.16
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