この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
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[墨田区図書館]
やや二人の知識や情報の紹介にとどまった感はあるが、現在の入試改革やPISA、論理力といった言葉を知らない方にはある種導入編ともいえる一冊。これを読んでも具体的にどうなるからどうした…らいいとか、紹介された用語について詳しくなれるわけではないが、ある二人の教育者が同意しあう形でこれまでとこれからの日本教育について説明し、憂える対話文からある程度の教育の流れを伺い知ることが出来る。
第1章「陰山英男が見てきた教育現場」では、陰山さんの減点である百マス計算が2000年に認められたこと、その機動力となったのは、1999年6月に出版された「分数ができない大学生」と、その年の3月に山口小学校で4年連続で担任した子ども達の大学入試の結果(50人中10人が国公立の大学、うち5人が医学部)が出たことであるというのが一番印象に残った。
第2章「出口汪が見てきた教育現場」では、引き抜き制だった塾講師の裏側を語ったり、代ゼミが全盛期⇒東進が伸びた背景として、少子化による"現役生"獲得を意識して地方塾とタイアップして、配信型の授業を 増やしたからとあって、そういうもんだったのか(?)と思った。ちょうどこの辺は関係ない下の代だし、もう当時の状況もわからなかったしな。
第3章「従来の教育が通用しない新時代の教育」では、基本は結局基礎であり、言語を身体化したあとに論理を身に着けていくことが肝心で、大学が乱立される一方で少子化の波を迎えて定員割れを起こす現状では、主体性がある優秀な今の子ども達の側が大学を選んでいく時代だ、とあった。その中で今の入試制度や小中学校という閉鎖空間しか意識しない教育体制が自由な教育が行き詰っているいくつかの具体例が挙げられていた。
第4章「日本の教育はどこで間違ったのか」では、小学校の国語教育での言語事項の少なさを皮切りに、「論理力」を鍛えることなしにただ行うクリティカルシンキング一辺倒への問題意識や、PISAやアクティブラーニングの説明を交えつつ、「あらゆる言語を翻訳することが可能であり、世界で最も学びやすい言語である」とされる日本語の、包容力や変容力ともいえる良さを再提示していた。
第5章「2020年、大学入試改革の行く末」では、大学入試改革の仕組みも多少説明しつつ、日本の大学の国際的な地位の低下に歯止めをかけられるのかという点において、東大とハーバードの違いなどを語っていた。両者の決定的な違いは、ハーバードでは世界をリードしている人から直接話(講義)を聞けるが東大ではそれが出来ないなどの人的ネットワークらしい。アメリカはいわば中間層が少なくトップと下位が多いのに対して、日本は中間層が厚くその代り下位は少ないがトップも少ない、という状況。これを生み出している高校までの「答えを詰め込む」、「自分で考えない」教育を正すのが肝心。また学問で身を立てたかったら奨学金制度もある東大(年収400万以下なら無料)や医学部を狙うべきで、実際東大は基礎ができている地方の若者を求めている、という話。
第6章「グローバル社会の中で親や教師はどうあるべきか」「貧乏でも安定しているほうがいい」という答えが多かった十年ぐらい前と逆で、近年は「混乱していても豊かなほうがいい」と言う人が増えてきた。特に女性に多く、幕末のような状況。今後は将来あるだろう職業や世界のあり方などを考えながら親も先生も変わっていかなければならない時代であり、幼児や小学生については、やはり「生活習慣も含めてしつけが大事」で、次いで「基礎学力」。そして次いで「読み書きそろばん=言語」。
第7章「国語教育を考える」では、やはり「論理的思考を身につける場がない」というはなしから、センター入試に小説が出ない(というわけでもないらしいが)という話や、その理由として、「解答に一意性のある問題」を求める過程で、文学面の研究家が「客観的把握」と「鑑賞評価」を間違えて一緒にしてしまっている話などがあり、最終的には、「客観的に文章を読んで、分析して、論理的に考えて、伝える」トレーニングが必要だという話。続きを読む投稿日:2016.11.16
なるほど、なるほど!学校の先生が考えることと、自分の考えていることの、スタート地点が違うことに気がついた。目指すべき教育については、素人なりの考えもプロの先生達も大きく違わなくても、前提とすることを確…認しないと、分かり合えた気がしないのだ。義務教育に子どもを在籍させている方にオススメする。続きを読む
投稿日:2019.09.08
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