リュシス 恋がたき
プラトン(著)
,田中伸司(訳)
,三嶋輝夫(訳)
/講談社学術文庫
作品情報
美少年リュシスとその友人メネクセノスの二人を相手にして「友」とは何か、「友愛」とは何かを論じていく『リュシス』は、後世に幅広い影響を与えた名作として知られる。同じく二人の少年を相手にして「知を愛すること」としての「哲学(ピロソピア)」という主題を追求していく『恋がたき』をも併録した。「愛すること」という根本的な主題で貫かれた二つの対話篇、初の文庫版となる新訳が登場!
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この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
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プラトン著作の中から『リュシス』と『恋がたき』の2編を所収。(但し『恋がたき』は偽書の可能性があるとのこと)
『リュシス』は「友」とはどういう人か、さらに「愛する」とはどういうことかを問うた対話篇で、…『恋がたき』は「哲学」とは何か、さらにどんな「知」を愛することなのかを問うた対話篇である。
根本としてどちらも「愛すること」「愛するとは」をテーマとした対話篇であるが、非常に短い短編となっていて、プラトンの対話篇に親しむにはとっつきやすい作品であるといえる。
それぞれの対話の構造的解釈は本書の「解説」に詳しい。
『リュシス』では美少年2人を相手に(しかも、ソクラテスの知人が対話の一方である美少年リュシスに恋をしている!)、『恋がたき』では哲学オタクの文系少年と体育会系少年を相手に、例によってソクラテスは議論をふっかけているのであるが、議論のテーマや対話相手(美少年!)にも関わらず、期待に反して(?)艶やかな場面は一切ない。(笑)
むしろ、ソクラテスのいつもの議論主導にもかかわらず、『リュシス』では「友とは、友のために、敵のゆえに友の友である」とか「本当の友とは、何かある友のために友であるのではないことになる」とかのようにややこしい議論に発展していき(笑)、結局は似た者同士もお互いに足りないところを補う者同士も友ではないという結論になってしまい、「友」とは何かわからなかった・・・という結末を迎えることになってしまって、読んでいるこちらも頭がくらくらと混乱したままの放置プレイ状態であった。
大体、病人が医者が友で愛するというのと、父が息子を愛するというのと、同一比較できる対象でないし・・・。逐次、話の論点がすり替わっていくので、議論経過でも頭がくらくらとした・・・。(笑)
また、『恋がたき』では、哲学が好き!と言っていた文系少年は実は一通りの知識があり専門知識に精通していなくても世の名声は得られるよね!との考えの持ち主であることが判明、哲学魂に火が点いたソクラテスの「哲学ってえのはなあ」という質問攻撃でぼこぼこにして自称・哲学オタクの文系少年を恥じ入らせるという話で、最後はスカっ!とくるものの、いつもの我田引水的な議論の誘導にまたもや頭がくらくらしてしまった。(笑)
反対に、善い人間と悪い人間の区別がつかないような人間は自分自身も知らないということ、つまり節度がない人間であり正義を全うできない人間で、その「知」を得るのが哲学するということで知識を得るのに2等賞に甘んじてはダメ!というくだりは、自分自身にも身につまされる思いがして、哲学オタク少年とともに恥じ入りそうになってしまった・・・。
両篇ともに議論の結末としては中途半端さがあるものの、議論だけをみるならテーマがテーマなだけに割と真面目な議論だったのではなないかな。
いつもの通り議論の展開の仕方に疑問点は相当湧くものの(笑)、プラトンの思想のとっかかりとプラトンそのものに親しむには格好の短さで、そうした議論のわかりにくさの故か「解説」の方は充実しているので、これからプラトンを手にとりたい方にもぴったりの一書かもしれない。
但し、すぐに結論に飛びつきやすい人、求めやすい人には・・・!?(笑)続きを読む投稿日:2018.01.21
自分が哲学に詳しくないせいか、結論を見てもピンと来ませんでした。
友愛とは何か、哲学とは何かを前提知識を使わず検証していくのは面白かったです。投稿日:2021.05.16
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