イメージで捉える感覚英文法―認知文法を参照した英語学習法
今井隆夫(著)
/開拓社 言語・文化選書
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ネイティブスピーカーが潜在意識として持っている文法感覚を、英語を日本語に訳すのではなく、イメージで捉えられるようになることを支援する。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
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認知言語学をもとに英文法を語る本はとても多いが、それらのダイジェスト版という感じの本。主に、前置詞や動詞の「コア」とか「スキーマ」の話、受動態や二重目的語構文などの意味、時制や相の捉え方について。「…これまでの英語学習ではすっきりしないとお感じている大学生や社会人、英語か教育法受講生などを読者対象としました」とカバーの袖に書いてある。
「訳すから分からなくなる」(p.1)というのは、本当にその通りで、特に今ちょうど完了形を教えているところだが、完了形は中学生がぶつかる山の中でも大きいものの1つだと思う。日本語と英語が一対一対応ではないことを理解するのは、世界の捉え方を変えてみるということをやってみないと分からない。その辺の「捉え方」、この本(そして類書の多くの本)における「感覚」とか「イメージ」について感覚について説明している。
面白いことがたくさん書かれているが、章の構成が分かりにくい。全体的なことの中に動詞や名詞の話があって、その後に比喩があって、また具体的な語の話の後にまた冠詞、名詞、構文、時制、でまた構文の話の中の動詞とか並置とか倒置の話、というように、似たような話があちこちで出てきて、まとまらないものか、と思ってしまう。もちろん反復によって学習効果が上がる、というのはあるかもしれないが、学習書として読んでいる訳ではないので、なんかゴチャゴチャしたまま終わっている。あとは参考文献を見ると、結構巷ですでに読まれてきた本が多く(大西先生とか田中先生とか遠山先生とか)、そうでなければLangckerという認知言語学者の本からの本、という訳で、そういったいろんな人の成果を自分なりにまとめ直してみました、自分の勉強(研究ではなく)の成果発表、という感じになってしまっている点が物足りない。
そういう意味で、読んでいても結構飽きてしまうのだけれど、それでもおれがこの本から勉強したことを以下にメモしておく。
まず「動的用法基盤モデル」の話で「初めからすべての事例をカバーできるような抽象度の高いスキーマ(文法ルール)を学ぶのではなく、自分がそれまでに出会った具体的な言語表現から帰納的に立ち上がったルールを学び、学習が進むのと同時に、文法ルールの抽象度も上げていけばよい」(p.70)というのはしっくり来る話だった。つまりコアとかイメージとか言って、先にそれを提示してから説明するというよりは、いくつか「そういうものだ」として使わせてから、実はこれはこういうイメージで、とやる方がまさに「腑に落ちる」を体感させることになって良いのではないかと思った。だから英語教師は知ってることをいかに初めから語らないのか、ということが肝になるんだと思う。次にラネカーの「過去分詞のスキーマ」の話で、「①行為を行う側から受ける側へ行為がおよぶという側面をハイライトすれば、行為を受ける側を表します。②また、行為に必要な時間の経過をハイライトすれば、行為というのは、始まり→途中の経過を経て→完了しますので、時間的な最終段階としては、完了した状態がフォーカスされます。したがって、過去分詞は、受動態(行為を受ける側にある)と完了形(行為が完了した状態)で使われる」(p.94)というのが、なるほど、と思った。何かの本で、受動態も完了形も「終わった後」というようなことが書いてあった気がしたが、うろ覚えでモヤモヤしていたが、ここですっきりした感じがする。この本の良いところは類例がたくさん載っているところだが、冠詞のaとtheの違いを示す例がたくさん載っているのも分かりやすい。I'll tell you a reason / some reasons / the reason / the reasons.の違い(p.118)とか、turn off the TVとwatch TV(p.119)とか、冠詞の話をするときには生徒に示す例としていいんじゃないかと思う。あとは "I don't like shelf - I'd rather eat table."(p.126) が成立する状況を考えさせる、とか面白いかもしれない。そして、可算・不可算の区別があるというよりは、「基本的にはどの名詞も可算にも不可算にも捉えることができる」(p.123)、「可算/不可算の区別は静的(static)なものでなく、ダイナミック(dynamic:動的)に変化するもの」(同)というのは、本当に面白い。世界の見方をさらに変えないといけない部分だ。そしてfishが不可算で、おれは「群れになるやつは昔食用で、群れ全体を狩っていたから1頭1頭(1匹1匹)は捉えないから不可算」みたいなことを教えていたが、こういうのは「事態をどの程度の精密度でとらえるかという認知能力(granularity)」(p.131)という視点から考えるらしい。granularityなんて言葉は初めて知った。そして、こういった「名詞に可算・不可算という区別があるのではなかったのと同様に、動詞にもperfectiveな動詞とimperfectiveな動詞という区別があるわけでなく、それぞれの状況で人間がその動詞によってあらわされる事態をどのように捉えるかの問題」(p.180)というのも、名詞の考え方が動詞にもあてはまるのが面白い。こういう考え方は、本書にはラネカーの引用として紹介されているので、いっそラネカーの原典を読もうかという気にさせられる。あと話は変わって、よく比較の話で出てくる "I couldn't agree more."はいつもとっさにどっちか分からなくて困るが、似た表現として"Couldn't be better.", "I couldn't care less.", "He couldn't be happier.", "You couldn't ask for better weather." (p.175)といった表現が一気に紹介されている。こういう表現をまとめて生徒に提示して、考え方を何度も練習させるのは有効だと思う。1つか2つ示すよりは使われる表現をまとめて紹介すべきだ。あと "I'll stand you lunch" (p.205)の意味は、いくら並置で[X HAVE Y]になると言われても、やっぱりその意味は推測しきれないなあ、と思った。(17/01/30)続きを読む投稿日:2017.01.30
英文法も理屈とうよりもイメージで捉えられるようになると意味の違いというのがわかりやすくなりますね。
難しい部分もありましたが文法のイメージの捉え方が丁寧に解説されているので大変勉強になりました。投稿日:2017.10.17
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