ぼくらが漁師だったころ
チゴズィエ オビオマ(著)
,粟飯原 文子(訳)
/早川書房
作品情報
ロサンゼルス・タイムズ文学賞受賞。デビュー作にしてブッカー賞最終候補に選出された傑作長篇。ナイジェリアの小さい町に暮らす四人兄弟。厳しい父が不在の隙に兄弟は学校をさぼって魚を釣りに行く。しかし川のほとりで出会った狂人は、長男が兄弟の誰かによって殺されると予言した――九歳の少年の視点で生き生きと語られる、闇と笑いに満ちた悲劇の物語
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商品情報
- シリーズ
- ぼくらが漁師だったころ
- 著者
- チゴズィエ オビオマ, 粟飯原 文子
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- 早川書房
- 書籍発売日
- 2017.09.25
- Reader Store発売日
- 2017.09.30
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (9件のレビュー)
-
著者はナイジェリア生まれ。キプロスで学業を修め、その後、アメリカ・ミシガン大学大学院で創作課程を修了。現在はネブラスカで教鞭を取りつつ、創作活動を続けている。
本作は、1990年代のナイジェリアを舞…台に、ある一家を襲った壮絶な悲劇を描く。
物語は11歳の四男坊ベンジャミンの目を通して語られる。
一家の父は厳しく強い父である。たくさんの子供を持ち、子供たちがそれぞれ成功することを望んでいた。兄3人も、ベンジャミン自身も、弟・妹も、晴れがましい道を進むはずだった。
だがその強い父が仕事の関係で家を離れた隙に、一家に不幸が忍び寄る。
主人公一家を襲った悲劇の発端は、4兄弟が「漁師」になったことだった。父の不在をいいことに、学校をさぼって川で魚釣りに興じるようになった兄弟。何となく後ろ暗く、もう魚釣りはやめようと思い始めていた14歳の長兄イケンナに向かって、街の狂人が不吉な言葉を発する。その言葉はイケンナに呪いのようにまとわりついて離れない。
イケンナの躓きの背後にあるのは、思春期のクライシスのこじれのようにも見える。
頼もしい存在と見られているが、実際は繊細で複雑な内面を持つ子なのだ。周囲のすべてに苛立ち、それまでの価値観がぐらぐらと揺らぎだし、優しい言葉を掛けられても素直になれない。ふとしたきっかけでねじくれてしまった心を立て直すには、少しだけナイーブで不器用すぎたのだ。
1つずれた歯車は、自然にもとに直るどころか、齟齬が徐々に増幅されてゆく。
父権の強い一家の転落という点では、同じイボ族の大作家、アチェベの『崩れゆく絆』を思い出させる。
この物語はどこか、神話のようでもある。
イケンナの運命はもう決まっていたのだ。シェイクスピア悲劇のように。
狂人の禍々しい予言がそれを告げる。ギリシャ悲劇のように。
有史以来、人は数々の理不尽な運命に翻弄されてきた。それぞれの出来事に理由はない、のかもしれない。けれど、人は不条理な不幸に向かって叫ばずにはいられない。
どうして。
理屈と感情の狭間に、物語は生まれる。
「ぼくらは漁師だった」「父さんはワシだ」「イケンナはニシキヘビだ」「イナゴは前触れだ」「憎しみは蛙だ」
著者はアニミズム的に動物とヒト、出来事とモノを重ね、詩情豊かにストーリーを紡いでいく。
起こったことだけをなぞれば実に救いのない話だが、豊かな語りは大河のように満々と水をたたえる。
イボ語、ヨルバ語、英語、と散りばめた言葉の多様さが、ナイジェリアのリアリティを醸し出し、物語に複雑な味わいを加える。
終盤に向かい、一家を襲う悲劇は留まるところを知らず、語り手のベンジャミンも呑み込みながら破滅の一途をたどる。
だが、奈落の底に落ちていく一家のその中から、白鷺が舞い立つ。
そう、世に理不尽はある。けれどまた、救いもあるはずなのだ。続きを読む投稿日:2018.01.03
憎しみは蛭だ。人の皮膚にくっついて栄養を吸い上げ、精神から活力を奪う。
アブルに毒を飲ませても死ななかった時
無傷の親指を血溜まりに浸して血まみれにすることと、親指が切り傷の血で濡れることは全く違う…と理解したはずだ。
やはりアフリカ文学ってことで、考え方とかがまるで違うと感じた。そしてそれ故に読みにくい部分は確かにあった。ただ、あとがきの部分を読んで納得した。狂人であるアブルの登場は、ナイジェリアからみたイギリスであり、ここに対比が存在する。エンタメを楽しむには、それ相応の知識や経験が必要なのだと強く感じた。しかし、アフリカ文学も面白いということを発見できたのは大きな収穫。ジャンルや国に囚われずにこれからも本を読みたいな続きを読む投稿日:2024.03.26
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