この作品のレビュー
平均 3.7 (7件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
印象に残ったのは、次の5点である。
レビューの続きを読む
1.Holistic Admissionの現実:
一度も教科書を開いたことのない異才、市川海老蔵氏が入学できる可能性が高いのは、東大かハーバード大か?――アメリカのトップ大学は、高校時代の全ての科目(運動や芸術も含めて)の成績が卓越していなければ入学資格を得られない(だから、浪人生がほとんどいない)。一方東大は、高校時代の成績が悪くても、受験科目のみ突破できる力をつければ合格できる。だから、ユニークな学生が多くなる。
アメリカでもかつては学力試験のみで選抜していたが、1920年頃にHolistic Admission を導入した。人種差別との批判をかわしつつ、学力優秀なユダヤ人の受入れを抑えるためであった(pp.55-59)。つまり、多様な学生の受け入れを拒むための制度であったのだ。現在では、アジア人が増えすぎないように操作している可能性が指摘されている。またこの結果、学生の基礎学力にムラがあるのが米国トップ大学の特徴であるとする。
2.大学の会社化:
大学は、ノンテニュアの教員や非常勤講師を多く雇用することによって経費を削減し、組織的な抵抗が生じないようコントロールしている(p.137)。身分の不安定な労働者(任期付教員、非常勤講師)は、その不安定さゆえに互いに結束して過激な賃上げ要求を行ったり秩序を脅かすストライキに訴えたりしないから、経営者にとって都合がいい存在なのだ。
3.年功序列制度の功罪:
アメリカ式実力主義は、真似すべきシステムではないと著者は断言する。日本では、大学内でほぼ同じように遇されているからこそ、学問的に重要だと信じる研究に腰を据えて挑戦できる。日本の年功序列は、過度な競争意識を抑制し組織の和を優先する。「自分が大切に思われている」ことが実感できる制度である。アメリカに比べると、給与差は大した問題ではない。一方のアメリカ式実力主義では、組織のいざこざ(訴訟を含めて)が引き起こす時間・コストの浪費やストレスは甚大だということを忘れてはならない。
4.アメリカ人が大学での学びにこだわる理由:
専門職として就職することが多く、大学の学び(主専攻・副専攻)と就職との繋がりが強い。だから、多くの企業が大学時代のGPAで採用の足切りを行っている。新卒一括採用・終身雇用・企業内ジョブローテーションを軸として人材育成する日本企業が(特に文系学部の)学び(GPA)を重視しないことは、学生の学びのモチベーションを下げている。柳井正財団がアメリカトップ校への留学に「限定」して多額の奨学金を供与しているというのは、日本の企業と大学とのネガティブな関係を象徴しているようで残念だ。
5.教員が教育・研究に専念できる環境を:
アメリカの幹部職員の大部分は博士号取得者であり、他大学での実績が認められてリクルートされるケースが多い。大半が学士で、ジョブローテーションにより数年で異なる部門の仕事に移る可能性がある日本の幹部職員との立場・意思決定への関与の差は大きい。アメリカでは、かつて教員が行ってきた業務を専門の職員に委ねたり(弁護士・投資アドバイザー・心理カウンセラーなど)、外部委託を導入したりすることによって、教育研究環境を改善し、大学業務の高度化に対応してきた。しかし一方、これが高いコスト体質を生んでいることも事実である。
最後に、日本の大学改革は、教育や研究の質を上げるためというよりは、文部省に睨まれないように、そして目前の少額資金獲得のためである。多忙な教職員が「形作り」「アリバイ作り」に汲汲としている。財政も逼迫している。地に足が着いた実質的な改革がに繋がらない理由のひとつは、ここにある。
改革のモデルは常に欧米(特にアメリカ)である。そこには、文化・歴史の違いを考慮せず、背後で生じている諸問題に目を向けず、正しい情報がないままに欧米のやり方が正しいと妄信する日本人がいる。このような短絡的な姿勢に本書は一石を投じている。投稿日:2018.04.12
このレビューはネタバレを含みます
学力絶対の東大のほうが米国トップ校より多様な学生が集まっている、アメリカの大学はマイノリティを優遇するためとして入試の際に人種を問われ、人物全体を評価するが、人物を評価なんてできるのか?評価を気にしす…ぎる学生ばかり。アメリカの大学が入学しやすかったのは1970年代まで。今は極端に低い。ユニクロ柳井は米国トップ校を目指す学生に奨学金を寄付しているが、トップ校以外の大学は奨学金制度がて薄く、多くの学生が借金に苦しむ。日本の大学なら5倍の学生を助けられるのに。事務職員をもっと重用して、経営や寄付金集めに力を発揮させるべき。などなどとても勉強になる本だった!!続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2018.02.26
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。