この作品のレビュー
平均 4.2 (64件のレビュー)
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著者はNHKで「クローズアップ現代」のキャスターとして
23年間勤めた。
その現場での経験した生の声と、スタッフ達との番組製作に奮闘する
姿がカッコイイ。
アナウンサーとニュースキャスターの違いって…分かりにくい。
簡単に言うと、アナウンサーは原稿どおりに正確に読み伝えること。
一方、ニュースキャスターは話し言葉で送り手と受け手のパイプ役に
なり、その個性が発揮できる。
その反面、客観性の高いニュースを私見という目線が入ることで厄介なことも
起きる。
その厄介な事が色んな人に誤解を招いてクレームに繋がるらしい。
その際たるものが、「出家詐欺」ねつ造放送騒動だ。
寺院で「得度」という儀式を受けると戸籍の名義が変えられるのを悪用した
「出家詐欺」が広がっているという報道で、「やらせ」とか「過剰演出」があったと
クレームが付き、クローズアップ現代の汚点になってしまった。
現場での人材育成に最適なものがこの番組にはある。
それは、試写が二回あることだ。
若い担当者が作成したレポートを他のスタッフと議論してダメ出しをされて、
自分の視点との違いを知り、さらに深く突っ込んだ議論になる。
前日に一回目、そして当日の昼に二回目の試写を行い、生放送本番に向かう。
クローズアップ現代は試写が一番面白いと言う関係者もいる位に熱を帯びる。
その試写2回を得て本番という流れを23年間続けてきた
著者は改めて感じるという。
クローズアップ現代の役割は、物事を「わかりやすく」して伝えるだけでなく、
一見「わかりやすい」ことの裏側にある難しさ、課題の大きさを明らかにして
視聴者に提示することだと。続きを読む投稿日:2017.06.11
国谷裕子(1957年~)氏は、大阪府生まれ、聖心インターナショナルスクール、米ブラウン大学卒。父の勤務に伴い、幼稚園から中学校まで、ニューヨーク、サンフランシスコ、香港、日本を行き来しながら過ごした。…P&Gジャパンに就職するも1年で退職し、その後、知人の紹介でNHKに仕事を得、「NHKニュース」英語放送の通訳者、ニューヨーク総局のリサーチャー、「ワールドニュース」駐米キャスター、「NHKニュースTODAY」の国際コーナー担当等を経て、1993年4月から2016年3月まで23年間、「クローズアップ現代」のレギュラーキャスターを務めた。現在は、東京藝大理事、国連食糧農業機関(FAO)日本担当親善大使、等として幅広く活躍。菊池寛賞(国谷裕子と「クローズアップ現代」制作スタッフ/2002年)、日本記者クラブ賞(2011年)等を受賞。
私は、国谷さんの少し下の世代だが、若い頃から「クローズアップ現代」は好きで、その看板である、知的で凛々しい国谷さんのファンでもあったが、昨年末の「クローズアップ現代・放送30周年 年末拡大スペシャル」に、ゲストとして出演した国谷さんを久し振りに見て、本書のことを思い出し(本書のことを知ってはいたが、読んではいなかった)、早速入手し読んでみた。
本書は、基本的には、国谷さんがNHKに仕事を得てから、「クローズアップ現代」のキャスターを降板するまでの、キャスターとして成長していく過程、「クローズアップ現代」制作の舞台裏、印象に残る放映やインタビューの相手、更には、キャスターとはどうあるべきか等を、率直に綴ったものである。
その中で特に印象に残ったのは、テレビ報道の持つリスクと、それを踏まえてキャスターはどうあるべきかという部分である。
テレビ報道は、その映像の力により、当該事象を端的にわかり易く伝える強力なツールになり得るし、加えて、メッセージがシンプルな方が視聴率を稼げるともいう。しかし、世の中の事象の多くは、実際にはそんなシンプルなものではなく、安易にわかり易くすることは、当該事象の深さ、複雑さ、多面性をそぎ落としてしまうことになる。そして、更に危ういことは、視聴者がそのようなシンプルなメッセージに慣れてしまうことにより、わかり易いものにしか興味を持てなくなることである。そのようなテレビのデメリットを補うために、キャスターは、テレビに映し出された映像がいかなる意味を持ち、その背景に何があるのかを、言葉にして視聴者に伝える必要があり、それはときには、難しい問題を難しい問題として、視聴者に受け取ってもらうということでもあるのである。
翻って、昨今は(本書の出版から5年ほどしか経っていないのだが)、テレビすら見ることなく、インターネットやSNSで自分の知りたい情報・わかる情報にしかアクセスしない人が増えており(そもそも、閲覧履歴からそのような情報ばかりを提示するようにプログラムされている)、それが、社会の分断を煽る原因のひとつとなっていることは周知の通りである。
そう考えると、国谷さんが提示する、「テレビ報道とは、キャスターとは、どうあるべきか?」という問いは、我々の民主主義の将来につながる重要な問いでもあるのだ。
また、終章では、「ここ二、三年、自分が理解していたニュースや報道番組での公平公正のあり方に対して今までとは異なる風が吹いてきていることを感じた。その風を受けてNHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。」と書き、特定秘密保護法案や安全保障関連法案について(十分に)取り上げられなかったことを指摘しているのだが、それが何らかの巨大な意思によるもので、また、国谷さんの降板とも関係があるのだとすれば、由々しきことである。
ともあれ、本書は、テレビ報道とキャスターに焦点を当てて書かれているが、「クローズアップ現代」が扱ってきた様々なテーマについての国谷さんの思いも聞いてみたいと思う。
(2024年1月了)続きを読む投稿日:2024.01.16
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