密林の語り部
バルガス=リョサ(作)
,西村英一郎(訳)
/岩波文庫
この作品のレビュー
平均 4.0 (39件のレビュー)
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岩波文庫にバルガス=リョサの著作が入っているのを見て「おおっ」と思った。岩波といえばやっぱり古典中の古典というイメージなので比較的新しい雰囲気のするものが入っていると「岩波さん頑張ってるなあ」と思って…しまうのである。そんな岩波さん(いつの間にか「さん」づけ)に敬意を表し『密林の語り部』を手に取る。
『密林の語り部』は著者バルガス=リョサ自身を思わせる「私」と顔の半分に大きな痣を持つマスカリータと呼ばれる人物やその他研究者との会話、交流で構成される章と、アマゾンの部族の人たちの声や行動といったものを人称も時系列の感覚もなく、生きている人間と死んでいる人間の境も不明瞭な形で書き継がれていく章とが交互に出てくることで進んでいく。このうち後者であるアマゾンの部族の章は、声の主体を探そうとすると途方に暮れてしまい、あまり意味は追わずにどことなく雰囲気を味わいながら読むことになった。
アマゾン部族の章を読みながら「マジック・リアリズム」といった言葉もよぎったが、そういう言葉を使ってしまうとなんとなく自身消化不良を起しそうな気がしたので、自分なりに書ける範囲で思ったことを書きとめてみたいと思った。
アマゾンのとある部族の慣習についての記述を読み、ささいなこと(口論をしただけとか誰かに恨まれたりといったこと)がすぐに自殺に結びついてしまうことや、病気などになるとすぐに生きることをあきらめてしまう、という死生観、そして食人の文化など、全く想像しないわけではなかったが、こうして書かれているのを見ると純粋に驚いてしまう。そしてこのような人たちの世界観を表現するためにどのような言葉を費やすことが可能なのだろうか?と思ってしまう。われわれが日常使っているような言葉もしくは言葉の組み立て方では「それ(アマゾンの部族の世界観)」について書くことができないのではないのだろうかという思いがする。
「それ」を書くためにはどうしたらいいのだろう。私は2つあるのではないかと思っている。
1つは「それ」を語る人達の言葉に寄り添うこと。
2つ目は「それ」ではないもの(要するに自分たちがいる側の世界)の言葉に揺らぎを与えてあたかも「それ」であるかのように感じ取れるようにしてしまうこと。
1つ目が言語学者や民族学者の仕事で、2つ目が文学者の仕事なのではないだろうか、といったん定義してみたくなる。そうすると『密林の語り部』がとても巧みに構成されたもののように思われてくる。
2つの世界を対比させて書くのはどういう意図があるのだろうか。そこに何か普遍的なものを見い出そうとしているとも読めそうな気がしてくる。語り部による「語り」という行為。「人が人へ語るとはどういうことなのか」という事柄に光をあてているような気もする。私からするととてもほのかな光で、自分がそれを掬い取ることができるのかどうかもわからないのだけれど。
また、バルガス=リョサは大統領選に出馬するくらい現実世界に目を向けている人というイメージも一方であって、その現実を見る厳しいまなざしがアマゾン部族の章だけでなく、現実世界の言葉をもって小説を構成する要因になっているのかもしれないという思いも一方である。
いずれにしても一筋縄ではいかない小説だ。続きを読む投稿日:2011.12.12
密林では、引っ越すことで生活環境が健全なものとなる。語り部になってしまった知り合いを訪ねても、もう引っ越してるんだ。それにしてもあの彼が語り部になってるとはねぇ。
投稿日:2023.12.15
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