ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~
J・D・ヴァンス(著), 関根光宏(訳), 山田文(訳) / 光文社
作品情報
「私は白人にはちがいないが、自分がアメリカ北東部のいわゆる「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」に属する人間だと思ったことはない。そのかわりに、「スコッツ=アイリッシュ」の家系に属し、大学を卒業せずに、労働者階層の一員として働く白人アメリカ人の一人だと見なしている。」――トランプ支持者である白人労働者層の実態、アメリカ分断の深層を描いた、全米ベストセラー! 待望の邦訳!
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.3 (36件のレビュー)
-
・アメリカの白人貧困層の実情。貧困と絶望。そこから這い上がった著者だけが語れる格差。
・貧困層の白人がオバマを嫌う理由は肌の色ではなく、彼が裕福で聡明でスマートで、自分たちの得られないものを体現してい…るからだという。
・葬式で、列席者が一人ずつ、亡くなった人の思い出を語るという習慣は良いなぁ。
・海兵隊での教育に、健康や金銭管理も含まれているのが印象的。家庭でまともな生活教育をされていない人に対して、セーフティネットの役割を果たしているのが学校でなく軍であるという事実。
・考えてみれば日本に暮らす日本人の自分が接することのできるアメリカ人は、初等教育で教わるはずもない日本語や文化に興味を持つ、アメリカの中でも中流以上の層に限られているのだろう。続きを読む投稿日:2017.04.30
・驚嘆すべきは、さまざまな世論調査の結果、アメリカで最も厭世的傾向にある社会集団は、白人労働者階級だという点である。
・ヒルビリーの信念は教会を中心に形作られるが、そこでは感情に訴える言葉が重視され…、子どもたちが成功するために必要な、社会的サポートを軽んじる姿勢が見られる。
私たちの多くは、労働力という面から見ると落伍者であり、よりよい機会を求めて新天地を切り拓くのを諦めてしまっている。ヒルビリーの男達は「男らしさの危機」に直面し、その男らしさを重視する文化こそが、変わりゆく社会でヒルビリーの成功を妨げている。
・あまりにも多くの若者が、重労働から逃れようとしている。よい仕事であっても、長続きしない。支えるべき結婚相手がいたり、子供ができたり、働くべき理由がある若者であっても、条件のよい健康保険付きの仕事を簡単に捨ててしまう。
さらに問題なのは、そんな状況に自分を追い込みながらも、周囲の人が何とかしてくれるべきだと考えている点だ。つまり、自分の人生なのに、自分ではどうにもならないと考え、なんでも他人のせいにしようとする。
・本書で焦点をあてるのは、私がよく知っている人たち、すなわちアパラチアに縁のある白人労働者階級である。… 読者の皆さんには、本書を通じて、人種というレンズを通したゆがんだ見方をするのではなく、「貧しい人たちにとって、社会階層や家族がどのように影響を与えるか」を理解してほしい。
--------------------------
・アパラチアン州立大学で、編入生のサポートオフィスの責任者を務めるジェーン・レックス。私と同じく労働者階層の家庭で育った彼女は、一族の中で初めて、大学に入学した。結婚して40年近くになる彼女は、3人の優秀な子どもを育て上げている。
なぜ人生を変えることができたのかと彼女に尋ねれば、安定した家庭が、将来をコントロールできる自信とやる気を与えてくれたからだと応えるだろう。そして、広い世界を知ることは、将来の目標を見つける力になるとも教えてくれるはずだ。「身のまわりにお手本になる人が必要だと思う。私の場合には、仲のいい友達の父親が、銀行の頭取をしていたの。その人は、ほかの人とはちがっていた。彼を見て、世の中にはまったくちがう人生があるのを知った。おかげで、自分の将来に希望を持つことができたのよ」
・効果的な政策を打ち出すには、まずは、私の母校の教師たちが日々感じていること、つまり、多くの生徒にとって、本当の問題は家庭内で起こっている(あるいは起こっていない)ことにある、という事実を認識しなければならない。
ーーーーーーーーーーーーー
解説より
・タイトルになっている「ヒルビリー」とは、田舎者の蔑称だが、ここでは特に、アイルランドのアルスター地方から、おもにアパラチア山脈周辺のケンタッキー州やウェスト・ヴァージニア州に住み着いた「スコッツ=アイリッシュ(アメリカ独自の表現)」のことである。
ヴァンスは彼らのことをこう説明する。
「そうした人たちにとって、貧困は、代々伝わる伝統といえる。先祖は南部の奴隷経済時代に日雇い労働者として働き、その後はシェアクロッパー(物納小作人)、続いて炭鉱労働者になった。近年では、機械工や工場労働者として生計を立てている。アメリカ社会では、彼らは『ヒルビリー(田舎者)』『レッドネック(首すじが赤く日焼けした白人労働者)』『ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)』と呼ばれている。だが私にとって、彼らは隣人であり、友人であり、家族である」
つまり、彼らは「アメリカの繁栄から取り残された白人」なのだ。
・本書に出てくる、困難に直面したときのヒルビリーの典型的な対応は、怒る、大声で怒鳴る、他人のせいにする、困難から逃避する、というものだ。
・「将来に希望を抱くことができない」。それは人の生きるエネルギーを殺す。 周囲の大人が、「努力しても無駄」と思い込んでいる場所で育った子供が、希望を抱けるはずはないし、努力の仕方を学ぶこともできない。
ヴァンスのように幸運でなかった者は、「努力はしないが、ばかにはされたくない」という歪んだプライドを、無教養と貧困とともに親から受け継ぐ。
この問題を、どう解決すればいいのだろうか?
ヴァンスは、ヒルビリーの子どもたちに、安心して学べる環境や、自分のようなチャンスを与えるべきだと考える。そして、悪循環を断ち切るのだ。だが、その方法については「私にも答えはわからない」と言う。
「(だが)オバマやブッシュや企業を非難することをやめ、事態を改善するために自分たちに何ができるのか、自問自答することからすべてが始まる」続きを読む投稿日:2018.03.20
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能ですクーポンコード登録
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。