情熱の階段 日本人闘牛士、たった一人の挑戦
濃野平(著)
/講談社
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カネもコネも語学力もない。夢を叶えるための武器は胸に秘めた情熱だけだった──。28歳の時に、著者は闘牛士になることを夢見て単身スペインへと渡る。そこで彼を待ち受けていたのは、想像を絶するような苦難の連続だった。何度も挫折しそうになりながらも、著者は一歩一歩階段を上り続ける。「諦めないということは、どこまでも自分を信じ続けるということだ」。世界唯一の日本人闘牛士による、胸揺さぶる感動の自伝!
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この作品のレビュー
平均 4.4 (19件のレビュー)
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そうだ闘牛士になろう
「かつて古き良き時代には、闘牛士になるのは将来も何もない餓えた若者たちであることが多かったのだが、現代において闘牛士となるのは有名な闘牛士の息子や牧場主のそれなど、経済的にも人脈的にも恵まれたものたち…がその圧倒的な主流となっている。一般にノビジェロ・シン・ピカドール(満2才牛の仕留め士)から始め、ノビジェロ・コン・ピカドール(満3才牛の仕留め士)を経て、最高位であるマタドール・デ・トロスへ(満4才牛の仕留め士)と到達するまでに、少なくとも日本円で三千万円以上の資金が必要とされるからだ。」
高校を出て10年間フリーターだった男がわずかな時間テレビで見たのをきっかけに闘牛士になりたいと聞くとどう思うだろうか。多くの人がなれるわけがないと思うだろう。濃野平は1997年に28でスペインに飛んだ。当時はまだ何でもググれる時代ではなく、どうやれば闘牛士になれるかどころか日本にいてどこで闘牛が開催されているかすらはわからない。少なくともスペインに行かなければ闘牛士になれないことは確かだ。
濃野がたどり着いたのは大西洋に面したスペインの西の港町ウエルバこの町の近くで闘牛があったからだ。スペイン語は全くしゃべれず、辞書と会話集を頼りに闘牛学校が有るか聞く濃野、セビリアに有ると聞き街を離れようとする濃野を「セビリアに行くなここに残れ」と止める若い男がいた。10才年下で闘牛士を目指すビクトルは濃野の親友となり目標ともなった。このころのビクトルはノビジェロ・シン・ピカドールの資格は持っていたがまだプロ闘牛士としてのデビューは果たしてなかった。
闘牛の練習を始めて4日目濃野はいきなり生きた牝牛相手に練習することになる。闘牛士が使う道具は両手で持つ大きなマントのようなカポテと右手で剣を持つ際に左手で持つムレタと言う布。闘牛は人間と牛との戦いではなくカポテやムレタで牛をコントロールし一体となって様式美を完成させる芸術のようなものだ、そして最後に牛の肩甲骨の間に剣を突き刺し牛を殺すことで芸術は完成する。しかし一度この布になれた牛はその後は人間を狙ってくる。牛が闘牛に使えるのは一度きりだ。殺された牡牛は肉になる。(食用と育てられたわけではないが)ごく並外れた働きを見せた牛だけは余生を種牛として暮らすことが出来る。
では練習はどうするかと言うと運が良ければ4日目の濃野のように牧場の雌牛を相手に出来る。練習で良い反応を見せた牝牛は繁殖用に残されそれ以外はやはり肉となる。初めての練習で2才未満とは言え100KGを超える牛に濃野は吹っ飛ばされるが逃げることはなく踏ん張った。
ビクトルと練習できる牧場を探す間にヒッチハイクのために濃野は道路脇で死んだ振りをする。この時からビクトルが濃野の見る目が変わった「お前って凄いぜ、人の出来ない馬鹿なことをやれるってのは才能だし、とてつもなく勇気が有るってことなんだよ」
濃野の草闘牛のデビューもビクトルと一緒だった。基本技を身につけていない濃野はポルタ・ガジョーラと言う大技一発にかける。門の前でカポテを大きく広げ両膝をついて牛を待ち、一瞬の判断でカポテを振って牛をやり過ごす技だ。あくまで優雅にゆったりとした動きで。最初にやるはずだったビクトルは躊躇する草闘牛でそこまでのリスクは取れないと。一方の濃野はそれでもやり成功させた。闘牛修行わずか4ヶ月目であった。
その後なんとか闘牛士免許を手に入れた濃野はデビュー戦を前に練習用の牡牛相手に負傷を負う。それでも出番が来た濃野はまた扉の前に向かう。ポルタ・ガジョーラだ。濃野は負傷した右手でやってのけた。技術的には褒められたものではなかったかもしれないがこの日一番観客を湧かしたと自負できるものであり、メディアからの賞賛も受けた。しかし、その後3年間濃野が試合に出ることはなかった。
闘牛士の世界は基本足の引っ張りあいだ。稼げる闘牛士はごく一部でほとんどのものは試合に出るために手配師に金を払う。見込みのないものは食い物にされ使い捨てにされる。資金繰りに行き詰まった濃野は一発にかけた。飛び入りだ。
今では日本人として初めてノビジェロ・コン・ピカドールの資格を持つ濃野だが闘牛士としての成功はまだまだ先だ。濃野の物語は闘志や度胸と言うよりこの本で何度も使われているドス・コホネス(ど根性)が似合う。夢は叶うと信じていると言うのでもない。くじけそうになり、あきらめかけそれでも何とか前進を続ける理性を超えた濃野の突き抜けっぷりがすごい。続きを読む投稿日:2017.03.12
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熱い。闘牛士になる夢を追いかける間、どれほど経済的に逼迫していたのかを何度も繰り返し述べていて読みながら胸が苦しくなる。お金さえあれば牝牛を購入して練習できるのに。お金さえあれば試合に出してもらえるの…に。牝牛を相手に鍛錬しないと技術が衰えてしまう。しかしその牝牛が手に入らない。何ヶ月、いや何年も生きた牝牛を相手にできないまま突然試合に出場することになったとしても、そんな状態で良い技が決まるはずがない。読みながら濃野氏の苦悩と闘牛への熱意が伝わってくる内容だった。もし時代が違えばクラウドファンディングなどで資金を募ったり、SNSで注目を集めることも可能だったかもしれない。そういったものがなかった時代に身一つで偉業を成し遂げられた濃野氏。同じ日本人として誇りに思う。続きを読む
投稿日:2023.04.14
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