この作品のレビュー
平均 3.0 (5件のレビュー)
-
企業財務において、イリーガルな粉飾決算には至らない程度の"意図的な利益増加型の利益調整"を「会計操作」と定義して、学術的に掘り下げていく論文集のような本です。勝間和代氏の『決算書の暗号を解け!』(ラン…ダムハウス講談社)というとてもおもしろい本があるのですが、その本のあとがきにて、本書が強くプッシュされていたため購入した次第です。
海外(主にアメリカ)を含めた多くの先行研究のレビューに始まり、先行研究を応用して、多くの方が「たぶんそうなんだろうな」と思っていたこと、例えばイケてない会社が減価償却において定額法を選択する傾向にあるとか、微妙な監査法人を起用するとか、そういったことを、アカデミックな手続きによって検証していく。
多くの財務分析の本は、企業の収益性や安全性を評価する指標を次々に紹介して、「こういう会社はヤバい」という目のつけどころを教えてくれます。本書も結論だけ読むと、似たようなことを主張しているのですが、本書の白眉はその主張を導き出すまでのプロセスです。複雑で再現性に乏しい企業活動を分析するにあたり、可能な限り科学的なアプローチを採ろうという姿勢が強く伝わってきます。
数学や統計の知識(おそらく基本的なレベルなのでしょうが)が要求されるため、数式アレルギーのわたしにはちょっと手に余る本でした。あちこち飛ばして読みました。この分野について何か論文を書きたいと思われている学生さんや若手社会人の方におすすめの本です。わたしを含め一般のサラリーマンが読むにはちょっと非効率かと思われます。
(2014/8/10)続きを読む投稿日:2014.06.07
会計操作というのは、GAAP(一般に公正妥当と認められた会計の基準)の範囲内で行われる攻撃的な利益調整。つまり、GAAPを逸脱した”不正”な会計処理で利益を調整する粉飾決算ではなく、あくまで”正しい”…会計処理で財務諸表の利益を経営者の意図通りに調整すること。その会計操作は、経営者の裁量が可能な会計処理を利用して行われます。
本書は、そうした会計操作を公表された財務情報から統計的手法で抽出して、会計操作の実態を浮き彫りにした実証研究です。純粋な学術論文なのでかなり読みにくいのですが、その手法はとても厳密かつ大規模なもので、そうして導出された研究結果はかなり興味深いです。これだけの密度の濃い研究は日本では他にないかもしれません。
とくに最後の方で論じられる会計操作と株式市場についての調査がとてもおもしろい。会計操作が行われた企業と行われていない企業とで、決算発表後の株価の推移にはとくに有意な差は見られなかったということで、市場は会計操作を見抜いて株価に織り込んでしまうようです。つまり、会計操作をしたところで、株価の向上には寄与しないということが実証的に示されたということ。
しかし、その一方で、会計操作の過程では機関投資家がその会社への投資から撤退し、個人株主の割合が増大するという傾向がある。企業価値の毀損は、最終的に個人株主が負担する結果になるわけです。十分な情報をもった参加者が利益をすいとるという情報の格差が明確に存在することを、こういう形で明示されるととても興味深いものがあります。
こうした実証研究は、市場制度や会計基準のあり方を考えていく上でもとても重要な材料になるように思います。本書では会計操作の直接的な状況だけを研究するにとどまっていますが、こうした知識の蓄積がもっと進めば、市場制度や会計制度との関係といったところまで踏み込むことも可能かもしれません。そうなれば、現在の会計制度が会計操作をどれだけ抑止できているか、どれだけ効果的に市場参加者へ情報を提供できているか、現行制度の有効性を定量的に測定し、制度設計に活かせる可能性もあります。会計制度、市場制度の実証研究というのはかなり地味ですが、実はかなりおもしろい分野なのかもしれません。続きを読む投稿日:2010.09.10
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。