一〇〇年前の女の子
船曳由美(著)
/文春文庫
作品情報
「わたしにはおっ母さんがいなかった」明治四十二年、上州からっ風の吹く小さな村で生まれた母テイは、米寿を過ぎてから絞り出すように語り始めた――生後一か月で実母と引き離され、養女に出された辛い日々を。そして故郷をいろどった四季おりおりの行事や、懐かしい人びとを。新緑の茶摘み、赤いタスキの早乙女の田植え、家じゅうで取り組むおカイコ様。お盆様にお月見、栗の山分け、コウシン様のおよばれのご馳走。初風呂と鮒の甘露煮で迎えるお正月様。農閑期の冨山のクスリ売りと寒紅売り、哀愁のごぜ唄。春には雛祭りの哀しみがあり、遊郭での花見には華やかさがあった。語る母、聴き取る娘。母と娘が描きあげた、100年をけなげに生きた少女の物語は、色鮮やかな歳時記ともなった。2010年に刊行以後、さまざまな新聞・雑誌に書評が掲載され、NHK「ラジオ深夜便」での、著者の「母を語る」も評判となった。多くの感動と共感を読んだ物語の待望の文庫化。新たに、足利高等女学校の制服姿のテイや家族写真、また新渡戸稲造校長の女子経済専門学校での写真などを掲載。解説は中島京子。
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商品情報
- シリーズ
- 一〇〇年前の女の子
- 著者
- 船曳由美
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2016.07.10
- Reader Store発売日
- 2016.07.22
- ファイルサイズ
- 3MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (10件のレビュー)
-
大正から昭和にかけての1人の少女の田舎歳時記かつ半生の記。単行本は昨年のMy Best3ノンフィクションの一冊に入れさせてもらった。手元に置いておきたくて、買い求めた。
文庫発刊を機に、表紙を描いた…安野光雄と著者船曳由美との対談記事がある。それを読んで、新たに知ったことも多かった。
「一〇〇年前の女の子が見た日本(前編)安野光雅×船曳由美」
https://books.bunshun.jp/articles/-/3596
「(記録を始めたのは)母が語りだした日から十年たっていました。」
←私は民俗学のフィールドワークの経験があるからイメージできるけれども、あの事細かに豊かに記録されるお母さんの物語は、何度も何度も同じことを聴いて綴られた結果なんだと思う。お母さんの脅威的な記憶力と、娘の学者はだしの構成力・表現力・そして質問力があってのことだったはずだ(もちろん元「太陽」編集長だったからではある)。
「安野 「筑波村大字高松」と書いてあったので、筑波山を目指して行けばなんとかなるだろうと……。あのとき電話したら、あなたが必死になって「違います、筑波山は茨城県です」と止めてくれた。」
←安野光雄さんが表紙を描くために行った「女の子」の栃木県の実家は、はたと気がついたのですが、今年2月「あの」大規模な山火事があったところでした。すわ、危ないのか?とスマホで地図を見れば火事延焼の危険はないところでしたが、利根川近くの今でも田舎の感じがするところでした。安野光雄さんの表紙は悲しいことが多かった5歳の女の子を明るいイチョウの木の上に登らせて、銀杏取りの合間にバンザイをさせた絵でした。
「安野光雄 お盆に墓参りをして、ご先祖さまをおんぶするようにして帰るとは、はじめて知りました。
船曳由美 お墓の前でお線香を手向けたあと、墓石に背を向けてしゃがむ。すると、ご先祖さまが墓石の中からするするっと出てきて、めいめいの背中に乗られるんです。子どもたちは三歩も歩くと、背をのばし手を振って歩いてしまうんですが、ご先祖さまは自力でしっかりとしがみついているそうです。ヤスおばあさんは家に着くまで、決して手を後ろから離しませんでした。」
←もちろん、地方によって様々な風習はあるけれども、ムラの外れの墓地からおぶって来る「魂」は、この地方で二千年間ぐらいは続いていた風習のような気がする。それは、様々な不幸という「呪い(のろい)」を背負ってきたムラ人たちの、生きていく上で必要不可欠な「お呪い(おまじない)」なのだろう。こんな小さな「知恵」が、この本の中には満載であり、いつまでも大切にしたいと思っている。
上京後の生活は簡単に記しているが、新渡戸稲造校長の女子経済専門学校の講師陣を見ると、その豪華さにクラクラする。吉野作造、我妻栄、古在由重、市川房江‥‥。しかもテイは吉野作造の推薦でYMCAの事務局に就職するのである。ホントは、関東大震災後の東京を舞台に、この辺りを中心にして評伝を書いてもらいたいぐらいだ。もはや無理だけど。
テイさんは、単行本発刊の4ヶ月後、眠るように大往生したという。続きを読む投稿日:2021.03.29
ノンフィクションは納得できて好きだ。
100年前の筑波村高松の生活はとても魅力的だった。
主人公テイの幼少での立場は、必ずしも幸せとは言えないものの、制約あるなかで充実した日々を過ごせたのではないだろ…うか。
自分が羨ましいと感じたのは、お正月とかお花見とかコウシン様とかの行事だ。
昔の人達が当たり前におこなってきた行事がとてもキラキラ輝いてみえた。
人々との交流も濃厚で面倒くさそうでもあり、羨ましくもある。
電化製品がない(電灯すらない!)時代は不便でつまらなそうに感じるけど、心は想像力に富み、豊かだったかもしれない。
最近ふと思う。ひと昔の生活をすれば色々とうまくいくのではないかと。続きを読む投稿日:2022.05.16
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