失われた時を求めて 4~第二篇「花咲く乙女たちのかげにII」~
プルースト(著)
,高遠弘美(訳)
/光文社古典新訳文庫
この作品のレビュー
平均 4.5 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
語り手は祖母と避暑地バルベックで過ごす中でヴィルパリジ夫人、サン・ルーそして花咲く乙女たちの一人アルベルチーヌと出会う。
レビューの続きを読む
乙女たちに心惹かれる語り手がそりゃあもう思春期、青春真っただ中という感じでサン・ルーよりも乙女たちのそばにいたいという長々長々と言い訳めいた語りが続いたときには「男子ってやつは…」と微笑ましかった。
そんなに長い登場ではなかった悪友・ブロックの台詞がいちいち可笑しいので印象に残ってしまった。姉妹に「雌犬たちよ」(125/358)と呼びかける兄は嫌だ(笑投稿日:2023.06.15
「私」は、バルベックでアルベルチーヌと「花咲く乙女たち」に出会う。
この物語を読んでいると、走馬灯のように人生の様々な出来事が思い出される。
そして、読むほどに自分の姿が露わになってくる。
もちろん…、思い出すのは楽しい思い出ばかりではない、それどころか、むしろ「苦しきことのみ多かりき」なのだが、僕にとってはこの物語自体が紅茶に浸したマドレーヌの働きをしている様なのだ。/
加えて、言うまでもなくプルーストの見事なまでに精緻な恋愛心理の分析を辿っていくことには、無類の楽しさがある。
呆れるほど息の長い彼の文体にしても、一度慣れてしまえば心地良い旋律となって、ハンモックの様にそれに身を委ねることができるのではないだろうか。
いやむしろ、この物語を読み込むほどに僕が感じるのは、冬場に車を運転していて曇ってしまったフロントガラスに、デフロスター(霜取り装置)をかけた途端にみるみる視界が開けていくときの爽快感なのだ。/
《私が彼女のことをこれほど美しいと思うのは、彼女の姿をちらりと見たにすぎないからだろうか。恐らくそうであろう。まず第一に女の傍らで足を止めることができず、別の日にはもう会えないかもしれないとすれば、女は俄然魅力的になる。
ー中略ー
もし馬車から降りて娘に話しかけることができたとしても、きっと私は馬車からは気がつかなかった娘の肌の何らかの欠点を見つけて幻滅したことだろう(略)。
だが、一人の娘が私の目の前をまた通りかかった、
ー中略ー
私の思うに、このような出会いは世界をもっと美しく感じさせてくれるものであり、その世界ではあらゆる田舎道に、ほかとは異なっていながら同じでもある花々ーーその日だけで消えてゆくはかない宝であって散歩で出会う望外の贈り物というべき花々、(略)ーーが咲き誇り、人生に新たな魅力を与えているのである。》/
この部分を読んで、ある映画のセリフを思い出した。
《「あなたにとって、生き甲斐とは何でしょうか?」》
と聞かれた寅さんが答える。
《「そうさなあ、旅先でふるいつきたくなるような、いい女とめぐり合う事さ」》
(山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』より。)/
♫〜岬めぐりの〜バスは〜走る〜♫
そういえば、僕の出先めぐりの職業人生も、そんなものだったかも知れない。/
まず、シャルリュスの言葉を引こう。
《「(略)まあ、いずれにしても彼女は娘のそばに行きました。ラ・ブリュイエールはこれが一番大切なことだと言っていますね、『愛する人のそばにいること。何か話そうが話すまいが、それはどうでもよい』。その言葉は正しいでしょう。それがただひとつの幸福ですよ」。》/
《というのも、私たちが作品を作り出すのを可能にするのは有名になりたいという欲求ではなくて、たゆまず努力を続ける習慣であり、私たちが未来を守ろうとするとき助けとなるのは、現在の瞬間に味わう歓喜ではなく、過去に関する賢明な反省だからである。》/
《さらに、果たしてその日に彼女たちに会えるのか会えないのかという最初の不安に、この先いつか会えるのだろうかというもっと深刻な不安がつけ加わる。彼女たちがアメリカに出立するのかパリへ帰るのか、結局のところ私にはわからないからだ。彼女たちを愛し始めるにはそれだけで足りた。(略)しかし、恋愛の前段階となるあの悲しみや、取り返しがつかないという気持ちや苦悩を誘発するためには、不可能という危険がーーおそらくこの危険こそ相手の人間以上に、情熱が不安のなかで抱きしめようとする対象そのものなのだろうーー欠かせない。》続きを読む投稿日:2021.08.12
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。