中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業
ふるまいよしこ(著)
/NHK出版
この作品のレビュー
平均 4.7 (4件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
”中国の嘘”に引き続き、中国メディア関連の本を読んだ。流れとしては先の本が2004年に出版されているので、その後・・とも言える。技術革新(とおそらく教育の普及)のおかげでより一般人が発言したり議論したりできるようになった一方、官からの統制は相変わらずといった内容だった。
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著者は一般市民の参加を一つの変化と捉えていると思うが、実際に教育を受けた中国人の中でも割合従順に政府の言い分を繰り返す人とも多数出会ったことがある身としては、少々懐疑的ではある。
せっかく出てきた”良心”も少しでも芽が出ると完膚無きまでに叩き潰すといったことを繰り返してきたおかげか、ただ触れないようにするか、官の発表通り発言するほうが賢明であると考える人も多いだろうから、なんとも言えないが。。
”中国の嘘”と同様、様々なケースが時系列を追って描かれている。これもそのタイミングで追っていないとわからなくなってしまうことだろう。それにしても2009年の6月3日から様々なサイトを無理やりメンテナンス中にして、そのおかげで若い人たちにも何が起きたか知らせてしまうというあたりは非常に興味深かった。。またウェイボの利用原則が示され、ガイドライン化し、仮に減点された場合、ポイントのリカバーに「他人の書き込んだデマ」を運営者に知らせる密告精度とか。。姿や形を変えてもやってることは同じなのか・・。
P.101
残念ながら中国では今にいたるも、この市民の権利意識の高まりに対する公的機関の理解はそれほど進んでいない。権利意識に目覚めた中産階級と旧態依然とした政府当局との衝突が、あちこちで続いている。個人の権利に対する意識の高まりに、民主的な社会を経験したことのない政府はそれをどう解釈すればよいのか、よくわからないようだ。
その複雑な構造の中には、「権利」と「権力」という言葉音もつ致命的な問題もある。中国語では、「権利」も「権力」も、「チュエンリー」とまったく同じ発音になっている。
そのため、両者の違いにきづきにくい。また日本語と違って学校教育などで「権利」について学ぶチャンスが与えられないこともあり、「権力」を持って初めて行使できるのが「権利」だと考える人も少なくない。(逆にそれが上昇志向を生む原動力になっているのも事実だ)
P.122(メディアとお金の関係について:農夫山泉のミネラルウォーターを「京華時報」が連続28日間批判記事を掲載、メーカー側も他のメディアを使って検査結果等を出し、罵り合いに発展した)
このバトルの引き金になったのは、「農夫山泉」側が「京華時報」編集部から要求されたお金を払わなかったーつまりポジティブな報道をえさに、メディアが企業側にゆすりをかけていたことだと明らかになる。
報道ではさらに、編集部では記者が持ち帰るご祝儀を内部で山分けするという習慣があったことも暴露された。金品と報道を天秤にかかえるメディアの取材態勢に対する批判が巻き怒ったが、「広告とどう違うのだ。実際にそれがなければ暮らしていけない」という声もあがり、業界では頭の痛い問題になっている。
長らくプロパガンダという「宣伝報道」を基礎にしてきた中国において、宣伝と広告、そして報道の意識に区別がそれほどない現場もまだあり、特にファッション誌やラグジュアリー雑誌の隆盛を見て、それに倣いたいと思う関係者も数多くいる。
P.131(コピペ文化の背景)
「中国人は貧しい。著作権を払うことができない」という説。これは一面、事実だろう。だが、市場経済下の中国社会では、貧しいからと言って仕入れた商品の代金を払わずにそれを転売して儲けることはできないという道理は、少なくとも理解されている。
問題は、中国が市場経済を取り入れているものの、その背景には長らく続いた社会主義国の習慣と考え方がまだ色濃く残っているということだ。
社会主義国家が信奉してきたのは「公有経済」だった。それは労働も、そしてそこから得た成果も公共に帰属し、均等に皆に分配されるという考え方だ。(中略)つまり、そのような社会で育ってきた人々にはコンテンツ利用に著作権が発生するなどまったくの想定外であり、コピーの手段が簡便になればなるほど、人々はそれに群がった。そして市場経済が導入されると、コピペを金儲けに使い始めたのだ。
P.144(「随手拍」という誘拐された子供を見つけようという運動に関し、普通の市民が物乞いの子供等を追いかけ回してを取るようになった)
中国ではそもそも物乞いが違法行為であるため、公安当局も黙っているわけにはいかなくなった。その後、「随手拍」は政府機関が便乗する形となり、当局主導の活動として「召し上げられ」、喧伝だれるようになった。それを機に、ウェイボユーザーたちの熱も冷めていく。この国では政府が旗を振りだすと何かが違っていくのが常だ。投稿日:2020.11.15
激変する中国の情報市場について、日本で良く言われる政府による情報統制というお決まりの視点ではなく、それを前提として勃興する中産階級がどう情報統制の中で必要な情報を得てきたか、新興メディアがどうそれに応…え、情報産業が発展してきたかという視点で描かれている。
メディアの姓は党という習近平政権の下で情報統制が強まっている一方、『もともと不自由な社会で生まれ育ってきた中国人は、不自由さにはそう簡単に屈服しない』という。微博の書き込みも政府に批判的であれば消されるのは当然として、それまでの間にどれだけ拡散できるかが重要という。また、廈門で地方政府の工場誘致をSNSから生まれたムーブメントで止めた(中央政府から地方政府に圧力がかかった)というような事例もある。政府の方でも、『手にした権力をカネに換える』という伝統的な価値観もあり、お金で現場レベルの規制緩和が買われているような事例も紹介されている。
最新の情報に対する需要の高まりと供給の質量の増大が規制ギリギリのレベルを探る形で、途方もないスピードで進化しているということなのだろう。
続きを読む投稿日:2020.05.30
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