図書館の魔女 第三巻
高田大介(著)
/講談社文庫
作品情報
深刻な麦の不作に苦しむアルデシュは、背後に接するニザマに嗾けられ、今まさに一ノ谷に戦端を開こうとしていた。高い塔のマツリカは、アルデシュの穀倉を回復する奇策を見出し、戦争を回避せんとする。しかし、彼女の誤算は、雄弁に言葉を紡ぐ自身の利き腕、左手を狙った敵の罠を見過ごしていたことにあった。
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商品情報
- シリーズ
- 図書館の魔女 烏の伝言
- 著者
- 高田大介
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2016.05.13
- Reader Store発売日
- 2016.06.10
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 384ページ
- シリーズ情報
- 既刊4巻
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この作品のレビュー
平均 4.1 (64件のレビュー)
-
2022年2月x日、プーチンとウクライナ大統領と日本の◯◯は三者会談を行なっていた。今や世界の火薬庫と化したウクライナ危機を回避するためである。憲法9条を擁し、かつて世界中の平和の権威を持っていた日本…は、とんでもない提案をした。それは、ロシア、ウクライナ、西側諸国全てに利益が上がる、三方両得とも言える提案であった。
とまぁ、「図書館の魔女(3)」はこんな粗筋である。プーチンが「ニザマ帝」、ウクライナが「アルデイッシュ」であるのはわりとうまく嵌ったと我ながら思うが、流石に日本が「高い塔」のメンバーたちというのはあり得ない(←自国なのに、このように断言できることがちょっと悲しい)。でも、現実の戦争も小説内の戦争も、人・物の消失、物流の停滞からくる狂乱物価、そして将来への禍根しか残さない。なんとか避けてほしい。現代に「図書館の魔女」がありましからば。
ここまではおそらく起承転結の「転結」直前、だと思えるので、改めて作品世界の設定について感想を述べたい。
舞台は、産業革命も未だ起きていない、西洋と中東、中国を一緒にしたような「世界」。活版印刷は始まったばかりののようだから、図書館に集められる本は文字通り当時の知識の集積場である。その割には、医学や心理学等の知識は近代・現代に近づいている。条約が国の行動を縛る世界というのは、もはや現代国家の姿と言ってもいいかもしれない。キリスト教こそ出てこないが、ソロモン伝説や菩薩信仰、麒麟伝説などは存在する。「海峡地域」は、中心地たる「一ノ谷」を挟んで、現代グローバル世界のような一大貿易商圏をつくっている。その一ノ谷が、図書館の魔女たるマツリカの先代・タイキの代に、手紙(交渉)のみで「遂に起こらなかった第三次同盟市戦争」を実現させた。その権威が、軍事力よりも、産業価値よりも「一ノ谷」という国の存立基盤になっている、という奇跡のような「世界」である。図書館の魔女は、いわば電気やAIのない時代に、世界のシンクタンク兼国連事務総長を兼ねている。
いまのところ、作者はウクライナ危機に役立つように世界平和に資する物語を作ろうとしてはいないと思う。それよりも描きたいのはひとえに「図書館の可能性」だろう。
「図書館にいったい何ができるのか」ひいては「(ソロモンや文殊菩薩のような)知恵をどのように集めたら、世界をもっとよくしていけるのか」
もう、そのためだけの小説だろう。
反対に言えば、未来を作るためには、「いま・ここ」だけを見ていてはダメで、古今東西に通じなければいけないよ、というメッセージである。
それを10代の若者マツリカとキリヒト、そして20代の大人の女性ハルカゼとキリンに託したのである。続きを読む投稿日:2022.02.21
ニザマ帝との面会。根回しといくつかの切り札で満を持して外交に切り込む高い塔の面々、がぜん面白くなってきた。少数精鋭すぎる。
塩害を語り古歌の韻律を論じ政治に踏み込む、どこかの世界の文系科目の授業を受け…てる気分になってきた。マツリカ、表紙も挿絵もないから想像が膨らむ。幼く聡く不遜な少女。
文字に埋もれていた少女と張り詰めた武の道しか知らない少年の感情と関係の行方をおばちゃんはニヤニヤしながら読み進めるのです。続きを読む投稿日:2024.03.26
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