「文系学部廃止」の衝撃
吉見俊哉(著)
/集英社新書
作品情報
2015年6月に文科省が出した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」の通知を受け、各メディアは「国が文系学部を廃止しようとしている」と報じ、騒動となった。これは事の経緯を見誤った報道ではあったものの、大学教育における「理系」偏重と「文系」軽視の傾向は否定できない。本著では、大学論、メディア論、カルチュラル・スタディーズを牽引してきた著者が、錯綜する議論を整理しつつ、社会の歴史的変化に対応するためには、短期的な答えを出す「理系的な知」より、目的や価値の新たな軸を発見・創造する「文系的な知」こそが役に立つ論拠を提示。実行的な大学改革への道筋を提言する。【目次】第一章 「文系学部廃止」という衝撃/第二章 文系は、役に立つ/第三章 二一世紀の宮本武蔵/第四章 人生で三回、大学に入る/終章 普遍性・有用性・遊戯性/あとがき
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商品情報
- シリーズ
- 「文系学部廃止」の衝撃
- 著者
- 吉見俊哉
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2016.02.22
- Reader Store発売日
- 2016.04.22
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (26件のレビュー)
-
本書の内容を大きく分けると前半の文系学部廃止議論をトレースした第1・2章と、後半の文系以外の大学全般に対する考察をまとめた第3・4・終章がある。前半はあとがきにあるように、既に雑誌で公表済みのものでそ…の意味では新規性に欠ける。出版社からは、予約購入前にこの点について説明があるとよかった。この点についてはあとがきに控えめに言及があった。同著者の前作からの接続を考慮すれば、第3章から読み始めるとスムーズだろう。逆に言えば、第2章と第3章の連関が十分といえず、それらの間にもう1章あると読みやすいと感じた。新書なので許容範囲とは思うが。
前著でも力説していたように、本書でも「国民国家」と大学の関係で、その成り立ちと今日の存在意義を確かめている。グローバル化時代の今日の社会に在る大学を、種々の視点で表現し形作ろうとしている姿勢がこの本からもうかがえる。以下にいくつか引用したインパクトを与えるジャーナリスティックな記述は、読者を一種の急迫した気持ちにさせる。結果的に読み手に問題意識を植え付けることに成功している。
ただ、全ての提案に実現可能性があるのではない印象を持った。例えば、「学年の壁」を低くしたら、著者も引用している「学校基本調査」の各種調査ではどのように人数をカウントするかとか、カリキュラムの構造化は科目の履修順序性だけで担保できるか、といった素朴な疑問が湧いてくる。また「宮本武蔵を育成する現場」(p.169)としての授業を改革する処方箋では、教員数の減には触れず、科目数減を示している。「科目編成の少数精鋭」(同)という科目の統廃合は、教員の少数精鋭と表裏一体であり、私学はまだしも、はたして国立大学において、そうした文字どおり身を切るような痛みを味わうような施策を実施できるのだろうか。しかし、一たび国立大学がこうした改革を実行すれば、教育の質は向上し、私学と国立大学の教育内容の格差の拡大はさらに開くことも頭によぎった。
最後に、文系学部において”全て”の学生が、著者が述べる「論文を書くこと」と「ゼミ」に取り組むことができる大学は、日本でいくつあるのだろうかと思った。これらが「文系の学びの根幹」(p.222)だとすると、その根幹が存在しない大学や学部は決して少なくない。その理由は複数あるが、やりたくてもやれない私立大学もあるだろう。第3章以降、節々で一般的な大学論を展開しているように読めてしまったが、本書における「大学」の表記は、全体を通じて「国立大学」と読み替えたほうが理解しやすいだろう。そういえば、そもそも今般の通知は国立大学法人対象だったこともある。続きを読む投稿日:2016.02.27
2015年にメディアを騒がせた「文系学部廃止」の報道を受けて、その報道の誤りの背後にある、「文系は役に立たない」という常識そのものに対する問いなおしをおこなうとともに、これからの大学のありかたについて…の提言をおこなっている本です。
著者は大学史を簡単にたどり、「リベラル・アーツ」や「教養」、さらに現代の大学においてしばしば言及される「コンピテンス」などの概念が、どのような経緯によって生まれてきたのかということを明らかにするとともに、人類的な普遍性に奉仕し、普遍的な価値を追求することが大学のほんらいの使命であることが確認されています。そのうえで、目的合理性とは異なる、人類的な普遍性をもつ価値そのものを問う文系の学問は、むしろ「役に立つ」のだという主張が展開されています。
後半には、現在の大学改革の方向性を批判し、著者自身の考えるあるべき大学のかたちについての具体的な提言が示されています。こうした提言がどれほど実現可能性をもつものであるのかということはわかりませんが、日本の大学が進むべき道に悲観的な読者にとってもポジティヴな展望を示したいという著者の思いは伝わってくるように感じました。続きを読む投稿日:2023.01.23
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