地政学で読む世界覇権2030
ピーター・ゼイハン(著)
,木村高子(訳)
/東洋経済新報社
作品情報
中国、欧州、ロシアは次々に自滅。
世界は確かに破滅に向かっている。
しかし、アメリカだけがそれを免れる。
気鋭の地政学ストラテジストが、2030年以降の世界地図を読み解く。
ベストセラー『100年予測』著者のジョージ・フリードマンが1996年に設立した影のCIAとも呼ばれる情報機関「ストラトフォー」。
影のCIAとも呼ばれるその機関で、著者はバイス・プレジデントまで上り詰めた。
ウォール・ストリート・ジャーナル、ブルームバーグ、AP、フォーブスなど、多数のメディアが彼の分析に注目している。
『100年予測』やランダース『2052』、英エコノミスト編集部『2050年の世界』、カプラン『地政学の逆襲』、トマス・フリードマン『フラット化する世界』につづく未来予測の新機軸。
●2030年までに、いったんは米国中心主義が薄れる。
●しかしその後、ロシア、欧州、中国は次々に自滅し、アメリカは世界で圧倒的な超大国になる。
●世界各地で紛争が勃発し、アメリカのライバルたちは疲弊する。
●地理的に離れているため、世界で起きる紛争はアメリカに影響しない。
●地形のおかげでアメリカはすでに必要なものをすべて手に入れている。
●アメリカの人口構成が若返り、ふたたびキャッシュを生み出す。
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この作品のレビュー
平均 4.7 (3件のレビュー)
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数年ほど前に他界された船井総研の創始者である船井氏の本を読んでいると、世界は2020年から30年の間に生まれ変わる、という表現が何度も出てきましたが、それが具体的な形で書かれることは私の記憶する限りあ…りませんでした。
彼は著作の中には書けない事情があったのかもしれませんが、この地政学の本を読むことで私になりに、おぼろげながらにイメージすることができてきました。それが、自由貿易体制の終焉、世界的な人口減少、欧州と中国の没落を経た後に出てくる体制なのでしょう。
現在も最大の力を維持している米国は、新しい時代においても益々元気なようです。それも、地政学的に証明されているようですね。その中で日本の将来には非常に心配しました。
以下は気になったポイントです。
・勢力を拡大した過去の主要な集団が温帯で誕生したのはなぜか。単に、持続可能な資源に恵まれ、経済活動が妨げられず遠方まで達することができたからに過ぎない。まず地理条件から始めて、その結果何が可能かを探ること、イデオロギーありきでない(p9)
・ブレトンウッズ会議前、連合国軍は実質的にアメリカの奮闘で持ちこたえていた、アメリカ軍兵士の数は、連合国と枢軸国をあわせた他の全ての兵士の数の倍以上いた(p18)
・ブレトンウッズ会議で大きな2点を提案した、前半は自分達の市場を開放する、後半は、自国の海軍を用いてすべての海上貿易を、売り手書いてが誰であろうと守るとした(p22)
・当時、アメリカは世界の国内総生産の約4分の1、総船舶総トン数の半分近くを占めていて、2014年時点で変わりがない。(p25)
・地政学では、イデオロギー・感情・慣習は考慮しない、問題なのは地理条件に基づく3つの条件、1)交通の均衡(川、道路)、2)遠洋航海術、3)工業化。アメリカはこの技術のどれも発明していない(p29)
・アメリカにおいて、貨物自動車輸送と水上輸送にかかる費用の格差は、人口の多い平地では40対1、過疎の山間部では70対1。水上輸送(陸軍工兵隊が管理)が圧倒的に有利(p33)
・自然な限界(20.5平方キロ)を超えて都市を成長させようとした支配者は、飢餓とコレラの襲来によって町がたちまち、もとの大きさに縮むのを見守るしかなかった(p34)
・ナイル川には2つの役割がある、1)大量の食料生鮮を可能、2)移動がしやすかった、河川交通に適していた、この点が他の文明と比較して文明が栄えた理由(p40)
・エジプトの破滅は、家畜化されたラクダ・一度に大量の貨物を輸送できる帆船、によってもたらされた。その結果、ローマ帝国による征服以来、第二次世界大戦後まで独立が回復できなかった(p45)
・長期間存続した主要勢力のほとんどが、1)国内に航行可能な河川を持つ、富の蓄積が可能(フランス、ポーランド、ロシア、中国)、2)湾・内海のようにある程度閉鎖的で、心配のない海域沿いにある国(スウェーデン、デンマーク、フェニキア、日本)(p49)
・1588年にイングランド侵攻をもくろんだスペインは、無敵艦隊の大部分を嵐で失う事で、北海の厳しい気候条件に気づいた(p57)
・イングランド商人が世界に見たのは、香辛料や貴金属だけではなく、無限の市場を見出し、自国を中心とする世界的な貿易システムの構築を目指した(p59)
・多くの物の全区物質である、硫酸(1746)、炭酸ナトリウム(1791)の大量生産が可能になり、化学肥料等が生産できるようになった(p62)
・遠洋航海術も工業化も、いったん各国に広まってしまえば威力を失う、イギリスはイベリアよりうまく遠洋航海術を活用した、ドイツはイギリスよりうまく工業化した、その両方をよりうまく活用したのがアメリカ(p76)
・アメリカの世界支配をほとんど必然とした別世の要素は、水路ネットワーク(p77)
・アメリカは第二次世界大戦の初期に、武器貸与法(レンドリース法)により西太平洋にあるイギリス領の管理権を奪い取ることに成功、1941年から99年間(p95)
・アメリカには広々として利便性に優れた沿岸部、都市を維持する後背地、船の航行に適した深度を持つ海等の点において、優れている。防波島があるのも利点(p102)
・アメリカは、孤立性と規模において、それ以前の海洋大国とは異なっている(p116)
・ブレトンウッズ体制は、連合国にとってはもとより、ドイツや日本にとっては奇跡とも言えるほどの申し出であった。日本は、中国の労働力と市場、そして東南アジアの資源を求めた。ドイツは、ポーランドの農業生産、低地諸国の資本、中央ヨーロッパの石炭、フランスの市場を欲しがって戦争を始めた(p129)
・自由貿易の基盤であったブレトンウッズ体制は、終わりを告げるかもしれない。(p139)
・工業化された国では、行動の違いを決めるのは人種でも民族でも、地理条件でもなく、「年齢」である(p143)
・日本は地球上で最古の、かつ高齢化が最も速く進展している社会である。1.26億人の3分の1が60歳を超えている。1900年以降、平均寿命は44→83歳以上になった(p163)
・アメリカは世界市場の縮小に加えて、ジェネレーションY世代(ベビーブーム世代の子供)の台頭による人口回復が起きれば、2030年にはアメリカは豊富な資本を持ち、経済と消費市場が拡大する(p170)
・シェールは、1)水平掘削法、2)水圧破砕法の技術により生産が可能となった。ほとんどの地域では、20年の可採年数のうち最初の1、2年で埋蔵量の3分の1が採掘される(p175)
・アメリカの石油生産は、1985年から減少続けていたが、2005年に最低となって以来、回復。2012年頃に1985年レベルとなり、2015年には1200万バレル/日となった(p177)
・シェール関連技術に関する人々の不信感がなくなる理由として、1)フラッキングへの地表水の使用は減りつつある、2)飲用水の供給源の地下水源の大半は地表から60-180メートル程度、フラッキングの90%は地表から1600メートル以上の深さで行われている、3)フラッキング用の水は毒性を無くす方向へ向かっている(p181)
・シェール産業がアメリカ以外で行われにくい理由はアメリカのもつ条件が起因、1)豊かな資金力を持つ巨大な資本市場、2)熟練労働力、3)土地所有者の支持に対する見返りを約束する法整備、4)天然ガスの集積・輸送・分配に使用される既存インフラ設備(p187)
・シェール産業は生産段階で大量の水を使うが、精製や輸送の段階で使わないので、燃料サイクル全体でみれば、最も水を使わない。石炭や原子力の、5分の1、石油の6分の1(p190)
・3Dプリントは世界のほどんどで非主流の技術だが、その特徴を考えると、シェールと3Dプリントの融合はアメリカに素晴らしい結果をもたらすだろう(p199)
・世界経済は2020-2024年の間にピークを迎えるだろう、今から2019年の間に、日本に加えて、ポーランドもロシアも人口減少し、2020-2024年には、世界のトップ25の経済大国のうち13か国が不況に突入するだろう、カナダ・ドイツ・オランダ・韓国・スイス・イギリス、そしてアメリカ(p217)
・2020-30年の世界安定度マップは6つのカテゴリーに分類される、1)破綻国家群(シリア、ギリシア、リビア、トルクメニスタン、キルギス、イエメン)、2)分解国家群(ロシア、中国、ボリビア、ナイジェリア、カメルーン、スーダン、エチオピア)、3)弱体化国家群(ブラジル、インド、カナダ、ハンガリー、サウジアラビア、アルジェリア)、4)安定国家群(イギリス、フランス、デンマーク、スウェーデン、ペルー、フィリピン)、5)興隆国家群(アメリカ、オーストラリア、アルゼンチン、アンゴラ、トルコ、インドネシア、ウズベキスタン)、6)攻撃的国家群(ドイツ、日本、ウズベキスタン、サウジアラビア、ロシア、トルコ、アンゴラ(p239)
・南アメリカを統一体と考えてはならない、アンデス山脈とアマゾン熱帯地方が、この大陸を細かく分断しているから。コロンビアとベネズエラは実質的に南米でない(p246)
・1980年代後半にソ連が終末期に入ると、ロシアの技術教育への支援制度が崩壊した、2015年時点で完全な技術教育を受けた最も若い層は、51歳となっている、ロシア男性の平均寿命:59歳を考えると、数年後にはロシアは現状維持さえ出ないだろう(p266)
・日本の分別回収システムは世界で最も効率的で、一般・産業廃棄物の半分がリサイクルされているので、原材料の需要はさらに抑制される。(p296)
・ドイツは保護貿易に転じようとする全ての国を、アクセスが困難になった天然資源と最終市場をめぐる競争相手とみなすようになる。この不安が、ドイツが引き起こした過去6回の戦争の原因であった(p343)
・カナダは、ロッキー山脈・カナダ盾状地・水路という3つの障壁により、互いに孤立した5つの地域に分かれている(p357)
・イギリス軍は、ワシントン焼き討ちの後に、アメリカの心臓にとどめをさす代わりに、ナポレオン失脚後の欧州秩序の再構築に熱中して、カナダを愕然とさせた。カナダは大英帝国と距離を置くようになり、まず中立、ついで米国と友好関係、同盟関係を結ぶようになった(p361)
・メキシコがアメリカにとって重要な位置づけとなるのは、1)中国の人件費高騰、2)メキシコのエネルギーシステムへの米シェールの過剰供給、3)メキシコ人口構成による、大きな消費者市場と労働力、4)麻薬戦争(メキシコ通過する取引は600億ドル、GDPの4-5%(p398、406)
・黄河はいつしか普通の川であることを止め、河床が周囲の土地よりも高い水道橋のような天井川となった。堤防が決壊すると未曾有の大洪水となる(p415)
・中国の人口の半分は、内陸に住んでいる。北部・中部・南部の、低地地方と沿岸部には13.5億人の半分(p424)
・中国は8兆ドルの経済規模に対して、5兆ドルの資金注入を行った。オバマが2年で総額8000億ドルを29日ごとに注入しているのに等しい(p438)
2016年2月20日作成続きを読む投稿日:2016.02.20
本書の前段は、いかにアメリカが土地として、つまり地政学的に「俺TUEEE」なのかということを説いており、ちょっとトンデモ臭も。ただし「アメリカ人」ではなく「アメリカの地形」が、ということなので、そこは…混同しないように注意が必要。
だが、アメリカ最強伝説はともかく、本書で書かれているロシアについての言及は、今日のウクライナ侵攻をバッチリ予言している。
「ロシアに行動を起こす力があるのは、せいぜいあと8年が限界だ。」(P267)
本書は原書で2014年刊行なので、「せいぜいあと8年」の期限とは2022年なのだ。そして、ここで言及されている力とはロシア国内の人口動態に基づくもので、説得力がある。
「ロシアには国境にいくつものあいた口をすべて塞ぐ力はおそらくないだろう。従って優先順位を決めなければならない。この国が少しでも長く存在し続けるためには、次の順で行動するのが最も望ましいと思われる。ロシアにとって唯一かつ最大の不安要素、それはウクライナだ。」(P267)
「(ロシアは)ロシア系住民の多い東部と南部の『助けを求める声』に応じて『救援』活動を始めるに違いない。」(P272)
と続く。大した洞察だ。
ここで2点ほど疑問が生じる。
1. なぜ、本書がクローズアップされないのか?
少なくとも東洋経済新報社の編集担当者は、本書の価値をもっと喧伝してよいと思うのだが、なぜ、やらないのだろう?「8年前にロシアのウクライナ侵攻を的確に予言!」という感じの帯つけて、週刊東洋経済でもちょっとキャンペーン的な宣伝をやれば、かなり売れると思うし、それにより、今日のウクライナ問題に対して、ステレオタイプでない視点を獲得する人が増えると思う。
2. なぜ、本書のような議論・切り口がメディアでは見受けられない?
自分の勉強不足かも知れないが、本書のような視点でロシアの侵攻を説明しようとする議論をマスメディアで見たことがない。地政学的な視点のものがあるとすれば、せいぜいNATOの東方拡大にプーチンがキレたというものぐらいで、後はロシア帝国の復権を夢見ているだとか、単なる領土的野心を自己の権力保持のために乱心して実行したが、誰も諌める者が周囲にいないなど、見てきたような憶測ばかり。それほど本書の分析が唯一無二の珠玉ということなのだろうか。
【由来】
・東洋経済2018/03/26続きを読む投稿日:2018.10.28
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