カウントダウン・メルトダウン(上)
船橋洋一(著)
/文春文庫
作品情報
2011年3月11日、 14時46分。東北地方太平洋岸一帯をマグニチュード9.0の激震が襲った。この地震と、そのあとの巨大な津波により、福島第一原子力発電所は全交流電源喪失という非常事態に陥る。
戦後最大の危機にあって、政治家は、東京電力は、原発の現場は、自衛隊は、そして地域住民は、どういった危機に直面し、どのような行動をとったのか。事故後、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)を設立した国際的ジャーナリストが、危機に面した人々のストーリーに照準を合わせて、報告書の作成後も、さらなる取材を敢行。
リスクとは何か。リーダーシップとは何か。国家とは何か。福島第一原発の危機が問うた、日本の「国の形」、「戦後の形」を浮き彫りにするノンフィクションのマスターピース。第44回大宅賞受賞作。
上巻は事故の発生から、原発への放水作業までの軌跡を描き出す。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- カウントダウン・メルトダウン
- 著者
- 船橋洋一
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2016.01.10
- Reader Store発売日
- 2016.01.15
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 592ページ
- シリーズ情報
- 既刊4巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.5 (3件のレビュー)
-
東日本大震災による福島第一原発危機への対応を詳しくたどった本。国家の危機管理運営がどうなっているのか、想像を超える問題と責任を前にして人と組織がどう動くのか、そのためにどういった準備が必要であったのか…、手に余る問題の前で想像力が停止してしまうとはどういうことなのか、など様々なことを考えさせる。保安院上層部の面々や清水社長をはじめとする東電上層部の事態に対する反応は事の重大さを思うと目を覆うばかりだ。しかし、そのことを無遠慮に批判することができる人が果たしてどれだけいるだろうか。保安院の中村幸一郎を更迭したこと、菅首相が原発訪問したこと、SPEEDIのデータを出せなかったこと、など初期時点での後知恵でのミスも見られるが、そのことを単に批判することは誠実ではないだろう。
本書の内容は、時系列の通りに記述されているわけではなく、その点では非常に読みにくい。少なくとも事故にまつわる大きなトピック、水素爆発、注水対応、住民避難などについての全体像をある程度知っていることが前提になっている。複数のトピックをそれぞれ詳しく追うとなるとこの形式しかなかったのかもしれない。読む側としては、事前にタイムラインを押さえておくべきだろう。
最後に書かれた、管首相への評価、吉田所長への評価は読むべきものがある。あのとき民主党が政権を取り、菅直人が首相であったことは日本にとって不幸だったのか。必ずしも不幸ということではなかったというのが著者の見解だ。「イラ管」と言われ、「聞いたことだけに答えろ」という管に対して、報告が遅くなるのは当然の帰結であった。「怒られる」ということで報告や意に沿わない行動を取らなくなるものが出てくる状況は致命的だ。事故を統括する首相としての評価は、「個別の事故管理(アクシデントマネジメント)にのめり込み、全体の危機管理(クライシスマネジメント)に十分に注意を向けることがおろそかになったことは否めない」と民間事故調で報告された通りだろう。「国家的危機に際して、国民の胸に響く言葉を発することがついぞなかった」と言わしめるのは一国のリーダー、政権党首としては間違いなく失格であろう。ただ、東電に対して人命最優先ではなく撤退の選択肢がないことをわからしめたことは危機対応時の指揮官としては評価できるのではないのだろうか。言葉を選ばずに言うと、東電の作業員は死んでもいいと言ったのだ。そのときに彼自身も責任を取る覚悟もできていたのではないかと信じたい。民主党が政権にいたことが不幸であると言われたが、著者の言うように必ずしもそう言うこともできないだろう。危機対応をした官邸政治家は、あの危機の時、リーダーが管でよかった、と心底、信じているという。
また覚悟と言えば目立ったのは吉田所長以下の原発に残った東電社員および関連会社職員と自衛隊のことを避けることはできない。「総理。どう思うかと聞くのはやめてください。行け!と言ってください。命令されてやるのが自衛隊です。相談されても困るんです」という折木幕僚長の覚悟。関わった多くの人は、いずれ死ぬのだからという思いを持ったことだろう。
吉田所長については、事故初動対応に問題があったことも指摘されている。津波対策をはじめとする事故予防策に責任を持つ立場にあったが、十分な備えを取らなかったことも批判されるところである。それでも、吉田所長でなければ、あの事故の統率はほとんど不可能だったというのは衆目の一致したところだ。吉田所長は、体調を悪くし、事故の2年4ヵ月後の2013年7月に亡くなった。放射能の影響ではないとされたが、原発対応の心労が彼の健康に影響を与えることになったのは疑いようはないだろう。
一方、実際の危機管理の点では、福島第二の増田所長が「本当のヒーロー」だと米原子力規制委員会幹部であったカスト―氏は評価する。福島第二は単に運がよく深刻な事故にならなかったのではなく、その可能性は十分あったところを適切で大胆な処置によりその危機を免れたことを知って本当によかったのだと思う。
少なくとも政権交代がなったおかげで当時の様子がありのままに出てきているということもきっとあるだろう。歴史にたらればはないが、自民党が政権についていたとしても同じように問題になり、場合によってはよりひどいこととなった可能性もある。事故の経験と個々の失敗については、しっかりと認識をして改善につなげてほしい。それは単純な原発反対を言うことだけではない。
映画『シン・ゴジラ』と合わせて改めて読むとよいかもしれない。続きを読む投稿日:2016.12.19
福島第一原発事故の真相に深く斬り込んだノンフィクション。
福島第一原発事故に関連するノンフィクションは何冊か読んだが、これほど東電と政府の愚かさを客観的に描いた作品は無い。
結局のところ、原発はブ…レーキの無い自動車を制限速度超過で乗り回すようなものであり、危機管理能力やインテリジェンスを全く備えていなかった東電、政府が被害をより深刻化させたのだということが良く解る。
また、最近では福島第一原発事故は何処へ行ったのやらと思うことが多い。まだまだ深刻な事態が進行中だというのに、世論や政治は原発再稼働へと傾き、挙句、東京オリンピックに浮かれている。事故から5年目を迎え、健康被害の拡大も非常に心配なところ。果たして、この国に未来はあるのか…続きを読む投稿日:2016.01.10
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。