ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る
NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班(著)
/NHK出版
作品情報
役所や学校、地域も見逃していた 虐待の衝撃的事実!
18歳まで自宅監禁されていた少女、車内に放置されミイラ化していた男の子─。虐待、貧困、保護者の精神疾患等によって監禁や路上・車上生活を余儀なくされ社会から「消えた」子どもたち。全国初の大規模アンケート調査で明らかになった千人超の実態を伝えると共に、当事者23人の証言から悲劇を防ぐ方途を探る。2014年12月に放送され大きな反響を呼んだ番組取材をもとに、大幅に加筆。
[内容]
はじめに──なぜ「消えた子どもたち」は放置されるのか
第一章 一八歳まで監禁されていた少女
第二章 「消えた子ども」一〇〇〇人超の衝撃
第三章 貧困のせいで子どもがホームレス、犯罪に
第四章 精神疾患の親を世話して
第五章 消えた子どもたちの「その後」
第六章 自ら命を絶った「元少女」
第七章 「消えた子ども」の親の告白
エピローグ もう一度、前を向いて
おわりに──「消えていた」子どもたちが問いかけたもの
虐待が疑われる事案の通報先
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この作品のレビュー
平均 4.0 (15件のレビュー)
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学校がある昼間に、公園で一人遊んでいる子どもを見かけた。
年齢は、小学生高学年だろうか。
もし、様子がおかしいようなら声をかけるかもしれない。
でも、たとえ痣があるように見えたとしても近くから怖い父…親が出てくるかもしれない、と思ったら声をかけることもできないかもしれない。
あなたは、声をかけられますか?
そこで踏み出す一歩が、もしかしたらその子の明暗をわけるかもしれないのです。
義務教育が完備されたこの日本で、教育を受けられない子どもがいる。
社会から孤立してしまった子どもがいる。
厚木児相の例のように、白骨化されて発見された子どものニュースは、どうやら氷山の一角のようです。
行政を、親を、教師をただ責めるのは簡単かもしれないけれど、そうではなく、同じことを繰り返さないために、どうしたらいいのか。それこそが今求められるものでしょう。
もちろん行政でも再発防止のための検討会は開かれたようだし、報告書も上がっている。
でも、そこには浮かび上がってこない悲痛な声を救い上げたのが本書です。協力した子どもたちもまた、同じ子どもがもう出ないように…との想いから協力をしてくれたとのこと。報道の持つ力の強さを感じました。
行政が児童を保護するような権限が必要なときもあれば、里親や養護施設の職員が寄り添うような優しさが必要なときもあるし、広く社会に現状を伝える報道の力だってきっと欠かせない一助なのでしょう。
読んで改めて感じたのは、早期発見の重要性。
子どもには、なにせ未来がある。
私たち大人はそれを、守らないといけないんだと思います。実際のところ、誰がどこまで何をするかというのは難しいところがある。
体調が悪くて学校に行けていない、と本人なり親が言えば、学校に行けていない現状を確認できたとしても引き下がるしかない。無理に立ち入って完全に拒否されてしまう方がリスクが高い。
マニュアルにはできないような、個別で非常にデリケートな問題だと思うのです。だからこそ、完全な解決策はないのかもしれない。
けれど、1つ言えることがあるとすれば、諦めないことが子どもを救う唯一の鍵になるんじゃないかということです。
日々の生活の中で他人を気に掛ける余裕はなかなかないかもしれないけれど、少なくとも、諦めないことで救える命があるんじゃないか、と信じたい気持ちになりました。
この本が世に出たことの意義は、非常に大きいものだと思っています。そしてこの内容が放映されたこともまた、ものすごいことです。
デリケートな問題である故にきっとたくさんの壁があったでしょうが、こうして形にしてくれたことで私の意識が変わったように、影響を受けた人は少なくないはずです。
プロジェクトチームの皆さま、本当にお疲れさまでした。忘れられない1冊となりました。続きを読む投稿日:2016.04.04
このレビューはネタバレを含みます
虐待や監禁によって心身ともに傷を負った子供達の話や、なぜ親が虐待に至ったかといった話。取材を元に書かれている。
レビューの続きを読む
こういう本を読むと残酷な現状を嘆くだけで何もできない自分の無力さに気づくが、まず今何が起…こっているのか「知る」ことはとても大事だと思う。
「消えた子どもたち」の背景にあるのは親だけでなく自治体、学校、施設などさまざまだ。根本的な原因や絶対的な悪は存在しないし、虐待してしまう親側にも親なりの理由があるのだろうとは思った。(例えば親自身が昔虐待されていた、とか経済的な問題とか精神疾患とか)ただ、彼ら自身の人間性が100%悪ではなかったとしても彼らがした行動は明らかに悪だ。被害者である子供たちからしたらどんな理由があろうとも傷つけられ、その後の人生のトラウマになり続けかねないことは否定できない事実なのだ。親から子への虐待に関する裁判ではなんらかの理由がつけられてかなり罪が軽くなることもあるが、子どもの人生を大きく変えてしまった以上、果たして適切な判決なのだろうかと感じることも多々ある。
そして、親、自治体、学校、施設が単独でいくら努力したからといって一連の悲劇を止めるのは不可能だと再認識した。国の制度や社会全体の向き合い方を変えていく必要があるが、とても難しい問題だ。まずは第一歩としてこうした現状を多くの人が「知る」ことが重要な気がする。続きを読む投稿日:2022.09.06
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