働く女子の運命
濱口桂一郎(著)
/文春新書
作品情報
女性の「活用」が叫ばれて久しいのに、日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?
社会進出における男女格差を示す「ジェンダーギャップ指数2015」では、
日本は145カ国中101位という低い数字。その理由は雇用システムの違いにある。
ジョブ(職務)=スキル(技能)に対して賃金を払う〈ジョブ型社会〉の欧米諸国と違い、
日本社会では「社員」という名のメンバーを「入社」させ、定年退職までの長期間、
どんな異動にも耐え、遠方への転勤も喜んで受ける「能力」と、企業へ忠誠を尽くす
「態度」の積み重ねが査定基準になりがちだ。
このような〈メンバーシップ型社会〉のもとでは、仕事がいくら出来ようとも、
育児や出産の「リスク」を抱える女性は重要な業務から遠ざけられてきた。
なぜそんな雇用になったのか――その答えは日本型雇用の歴史にある。
本書では、豊富な史料をもとに、当時の企業側、働く女子たち双方の肉声を多数紹介。
歴史の中にこそ女子の働きづらさの本質があった! 老若男女必読の一冊。
本書の構成
序章 日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?
第1章 女子という身分
第2章 女房子供を養う賃金
第3章 日本型男女平等のねじれ
第4章 均等世代から育休世代へ
終章 日本型雇用と女子の運命
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商品情報
- シリーズ
- 働く女子の運命
- 著者
- 濱口桂一郎
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2015.12.20
- Reader Store発売日
- 2016.01.15
- ファイルサイズ
- 1.3MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (30件のレビュー)
-
戦前、工場監督官の女性が一人。日本でただ一人。今の感覚なら、すごい話だなと思うが、製造業を見回すと、工場で職場長をしている女性は、今だって珍しい。あまり、変わっていない。
この日本初の婦人工事監督官…補、谷野せつ。日本女子大学卒。一等国から女の役人がいないと指摘された際に、谷野さんを一枚看板にして体裁を繕っていたのだという。体裁のための女性。これも、今と意識があまり変わらない。
労働者の賃金は、生活するに十分なだけ、与えておけば良い。そこには妻と子供を養う分は含める。労働力は、使い捨て。成功した起業家のみが人間であるかのような価値観。今も変わらない。これを変えるには、起業するか、副業や転職により、雇用者側と対等にネゴができる環境が必要だ。転職に関し、少しずつ社会が変わり始めているが、これは女性の働きやすさにも繋がる。
生活に必要なだけの賃金という目線だから、総合職ダブルインカムに対し、妻が子育てしながら夫一人で稼ぐ家庭との格差意識が生まれている。転勤なしのダブルインカムの方が良い、となり、転勤制度もいずれ瓦解していく事だろう。
一族経営の創業家が地方政治家と結託し己を肥やすための制度は、代替可能な労働力という構図と共に終わりにしなければならない。女性に替える、移民に替える、AIに替える。労働者の発言権を削ぎ落としたい経営側のこれら企みに対し、誰の足が速く、誰が先にゴールするか。ゴールまでの時間の限りが、労働環境改善の猶予だ。
経営は人材確保に苦しみながら就労条件を改善するから、これら代替手段には頑張るなと内心思いながら、表面的には頑張るフリ。面従腹背、利益相反な社員が目に浮かぶ。資本主義の悲劇は緩やかに修正されるが、労働者の発言権と女性の就労改善が一面ではトレードオフ。経営者に有利なテーマ優先という問題は隠されたままである。続きを読む投稿日:2023.07.22
出版社(文芸春秋Books)ページ
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610624
内容・詳細目次・濱口桂一郎×上野千鶴子対談(前編・後編)投稿日:2024.01.24
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