アメリカの鏡・日本 完全版
ヘレン・ミアーズ(著者)
,伊藤延司(翻訳)
/角川ソフィア文庫
作品情報
GHQ労働諮問委員会の一員として来日したミアーズ。中立な立場で日本を研究してきた彼女にとって、「軍事大国日本」は西欧列強が自ら作り上げた誇張であった。ペリーによる開国を境に平和主義であった日本がどう変化し、戦争への道を突き進んだのか。日本を西欧文明の鏡と捉え、満州事変を軸に中国・韓国との関係を分析しながら、アメリカが変えんとするその未来に警笛を鳴らす。マッカーサーが邦訳を禁じた日本論の名著。
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商品情報
- シリーズ
- アメリカの鏡・日本 完全版
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川ソフィア文庫
- 書籍発売日
- 2015.12.25
- Reader Store発売日
- 2015.12.25
- ファイルサイズ
- 0.8MB
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この作品のレビュー
平均 4.5 (14件のレビュー)
-
GHQ労働局の諮問機関である11人委員会の一人である著者が、日本に対する占領政策について論じた一冊。
米国で出版されたのは1948年だけれど、当時はマッカーサーが邦訳を許さなかった。
「私たちは自分た…ちの行為なら犯罪と思わないことで日本を有罪にしている。これは正義ではない。明らかにリンチだ」とのように連合国を断罪しているためか。
著者はこの当時既に真珠湾攻撃は奇襲ではなく、当然の帰結であったとして見做している。
満州占領は日本にとって国家経営の先生であった英国が従来して来たことを、法に基づいて行ったに過ぎず、もし白人国家が同じことをしたならばリットン調査団の報告書は違ったものになっただろうという。
更に日本は満州における列強の不平等条約をなくそうとしたが、これは当該地に権益を持っていた連合国にはできない所業でもあった。またアジア解放の盟主になり得る日本は、植民地を失う国々にとり決して許せる存在ではなかった。
それ故に日本について、世界で最も軍国主義的であり世界征服を企てているとのレッテルを貼って究極の悪として位置付けた。そうした事情の上で日本を再教育する資格がGHQにあるかを問い掛けている。私はないと思う。
戦史研究が進んだ現在でもこういった言説がアメリカ側から出されたら驚くと思う。それなのに、この本が戦後すぐに書かれていたというのがもっとびっくり。
日本人はもちろん、アメリカをはじめとする連合国側の人たちに読んでもらいたい本。
抜粋の感想しか書けなかったけれど、内容はもっとすごいので。よくまあこれだけ言えるなぁ、と。近代戦争史の教科書にしてもいいくらい。
アメリカは日本を罰するけれど、鏡に映った自身の姿は日本と同じものなのではないか。
そういった意味が題名に込められていそう。続きを読む投稿日:2020.10.13
このレビューはネタバレを含みます
再読してみたヘレン・ミアーズの著作であるが、またしても読後に、言いようのないどんよりとした重たい気持ちになった。
レビューの続きを読む
ミアーズの主張は、ごくごく単純化して言えば、第二次世界大戦で暴走した日本は西欧列…強の姿そのままであるという事だと思う。それは題名である”Mirror for Americans : Japan”に最もよくあらわれている。
さて、全編を通じて語られるのは日本であり、中心は満州事変前後から第二次世界大戦終戦までの日本の国際政治における振る舞いと西欧列強の反応である。日本は厳しい先輩であった西欧列強のやり方を忠実に学んだ結果を展開した。端的に言えば法的擬制を駆使した後進国の植民地化ないしは搾取、である。ただし、この国際ゲームは暗黙のルールがもう一つある。それは欧米列強に歯向かわない限りというものだ。また支配的人種の存在が厳然としてあったことに日本は気づくべきであった。
日本は欧米列強に肩を並べたと勘違いし、彼らから日本がどう見えたかについては意識が薄かったのかもしれない。
また、日本を叩くにあたり展開された米国での情報操作についてもすさまじいものがある。曰く、日本とは1,000年以上に渡り内戦を繰り返した国であるとか、本性的に野蛮である等のプロパガンダにより世論を感情的に動かし、日本への戦争を正当化した。
[「東京レコード」の鳥シャス記者は、日本の歴史的拡張主義を立証するために、日本列島が神々に征服された「神話」と朝鮮を征服した「伝説」を歴史に書き入れている。つまり、架空の出来事を現実のモノにして、それを証拠と呼ぶのである。(位置2292)]
哀しいかな、これは一部の日本軍の悪行とも相俟って、すでに”事実”と化した感がある。今更何をしても変わらないかもしれない。嘘も方便ということわざは、恐ろしい事実を物語っている。
これ以外にも、本書ではとりわけ米国の自己矛盾をいちいち指摘しつつ、欧米列強が行ってきた国際政治や日本占領等々が公正であったかと筆者自身が米国へ問いかけるものである。具体的には、原爆投下の是非(ひいては一般市民殺戮の是非)、軍事裁判の是非、アジア諸国の気持ち、抑圧的懲罰的占領の是非、文化的独自性無視の是非等々である。
自己をも騙しつつかつ正当化しつつ自国に有利な方向への流れを作るもの、得てして政治とはそのようなものかもしれない。
・・・
改めて述べると、読むたびに気持ちが重たくなる。
日本はムラ社会だとか忖度が必要だとかいうが、実は国際社会こそがこうした注意が必要なのだと思う。ゆえに、本書を読んで、我が意を得たりとただ快哉をあげるだけでは足りない。国際政治の現実を理解するべきであろう。
本書は、日本および世界の歴史の理解を一段と深める良書であるとともに、国際政治や社会心理等についての洞察にもついても優れていると言いえると思う。続きを読む投稿日:2021.06.19
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