この作品のレビュー
平均 3.3 (4件のレビュー)
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著者の歴史観は共感できないが満州の躍動感は面白い
「満州を侵略のシンボルとしてネガティブにみるか、無国籍の大地に日本人の英知を傾けて創った新興国家だったと、ポジティブにみるか」「満蒙は中国のものという中国人の主張は、じつは疑問だらけなのである。そもそ…も満州族と漢民族は別の民族なのだ」
歴史的には確かに中国は漢民族の王朝と北方民族の王朝がいずれも繰り返してできては消えている。満州が歴史的には漢民族の土地ではないというのはその通りだろう。清朝が倒れ孫文政府の影響力は満州には及ばず軍閥が各地を支配した満州をこの本では「無国籍」状態と書いているが「無政府状態」の方が適当だろう。
五族協和と言う理想があったとしてもおそらくはその前提として「日本人が主導する」があった。産業の基礎を日本が作ったにせよそれは基本的には日本のためであり、当時の常識では自国の生存圏を拡げるために他国に負担を押し付けるのはやられる側はたまらないがそういう時代だったと言うことだ。日本の立場を正当化するとしてもその程度のものだ。
さて、この満州で力をつけたのが本書の主人公、岸信介だ。長州出身の優秀な学生が陸士を目指すのは当然とされた時代に岸は東京帝大に入り、教授からは後を継ぐように要請されたのだが、岸が選んだのはこれまたエリート官庁の内務省でも大蔵省でもなく二流とされた農商務省だった。しかもこの時すでに政治家を志望しており、これからは実体経済だと言うのが岸の見立てだ。岸が目指したのは持てる国アメリカの大量生産ではなく、資源の無いドイツが選んだ「高い技術力と徹底した国家統制化」だ。その岸が乞われて赴任した満州で力を発揮し、敗戦前に帰国して東条内閣を総辞職に追い込んだことが評価され東京裁判でも極刑を免れた。岸、甘粕などが活躍する満州時代の話はやはり活力があり面白い。
一方で満州はとても理想の国家だったとは言い難い。国家予算の歳入の1/6はイギリス商人経由で入手したアヘンの販売だし、鉱物資源が豊富なのに石油が取れなかったとあるが岩瀬昇氏の本によればアメリカの最先端の物理探鉱会社を雇っていれば石油が発見できた可能性は充分あった。農業にしても大農場が適した土地なのにロシアに対抗するためにできるだけ多くの日本人を入植させるのが目的の石原莞爾の方針は農業は二の次だ。陸軍の満州派と関東軍が陸軍中央の慎重論を無視して大隊長や参謀クラスが好き勝手にやっていたのが満州のもう一つの姿だ。「何でもまかり通る満州」この中で岸は軍部を接待漬けなどでうまく懐柔し、経済活動の実権を握り続けた。
大半の国民が反対した日米安保改定を「国民は30年後にはわかる」と言って強行した岸のことを著者は「まさにぶれない政治家」と評価する。今やっている大統領予備選のようにあまりにポピュリズムに走るのもどうかと思うが、「信念を貫くぶれない政治家」が好き勝手にやる「何でもまかり通る日本」は孫の安倍総理が目指している姿に重なる。まあそれを許す野党がだらしないのだし、次の選挙に勝てば追認されることになる。
偶々この本を読みながら向かっていたのが出所後の岸が一時監査役を務めた日東化学工業から残された事業所だというのがなかなか感慨深いとこでした。続きを読む投稿日:2016.03.03
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岸信介リスペクトという目線で書いてあるため、やや偏りがあるように感じられる。満州国というものがどういった位置付けだったのか、無主地であったという主張には無理があるようにも思われるけれども、一定の理解が…深まった。産業統制とそれによる成果を目の当たりにしたら、日本でもそれをやろうと考えるのは不思議ではない。この男が戦前も戦後も内閣にいるということが、日本の歴史がいかに地続きであるかを表しているように感じる。
そして、戦後、現代を作ったといっても過言ではないように思える。続きを読む投稿日:2021.02.14
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